彼に新しい女? 自宅に突撃してわかったこと
これまでの話を聞いたCさんは言いました。
「B男さんのメール、お金のことばかりだね」
「えっ、そうかなあ……?」
「ワンゲル部、マルチだって噂あるの知ってる?彼、ネットワークビジネスのリーダーなんじゃない?」
「それはないよ。私、そんなのに誘われてないし。ほかに彼女ができたんだと思う……」
心の中にたまっていた不安を吐き出すと、ほんの少しだけ気持ちが楽になりました。
「私は女じゃないと思う。確かめてみたら?」
「でも……訴訟とかモデルやるとか、私が行動起こすまで会わないって言うの」
「じゃあ、彼の家に行ってみようよ。女がいるかどうかも、はっきりするかも」
B男の住むマンションの名前は知っていましたが、優紀さんは一度も行ったことはありません。いきなり家に行ったらB男は怒るかも……気が進みませんでしたが、Cさんに引っ張られるようにして隣町のマンションに行きました。学生が住むにしては立派なファミリータイプのマンションでした。
見ず知らずの男から胸を凝視されて
郵便受けで部屋番号をたしかめ、B男の部屋の前までくると、急にドアが開きました。思わず足がすくんだ優紀さんの目の前に現れたのは、B男でもなければ女性でもない、きちんとした服装の20歳ぐらいの男性でした。
「B男さん、いますか?」
Cさんがたずねると、男性は何かを思い出したような顔になり、
「ああ! えっと…もしかして優紀さんですか?」
「いいえ、こちらが優紀ですけど……私は友人です」
「彼、今日はセミナーでいないんです。B男さんから聞いていますよ、グラビアモデルされてるんですよね?」
言葉は丁寧ですが、優紀さんのバストのあたりをジロジロ見ています。いったいB男さんは私のことをどんなふうに伝えているんだろう? グラビアをやるなんて決めていないのに……と困惑していると、
「いいえ。人違いですね。別の優紀さんだと思います」
Cさんはきっぱりと言い放ち、優紀さんの腕を引っ張るようにしてその場を離れました。
恋愛に擬装してモラハラやマルチを仕掛けてくる男
コンビニバイトだけにしてはB男はいつもお金を持っていたこと、セミナーということはB男はあのマンションでほかの学生を使ってネットワークビジネスをやっていたのか、と優紀さんも腑に落ちました。
「でも、私の写真が裏サイトに流れているんじゃないか、と怒っていたのに、なんでグラビアモデルだなんて言ったんだろう?」
「だから言ったじゃない、B男さんのメールってお金の話ばかりだねって」
「えっ……」
「ああいう男はね、彼女や友だちや、親戚からだってお金を吸い上げるの。
A先生を訴えて示談金もらっても、グラビアモデルになっても、優紀の手元にお金が入るでしょう? それからマルチに誘うつもりだったんだよ」
にわかには信じられない話でしたが、自分のこともカモにするつもりで、会いたいのにじらされていたのかも知れない――。いくら会ってくれなくてもB男を好きな気持ちは変わらなかったのに、急に力が抜けていくようでした。優紀さんはこのときの心境の変化をこう語っています。
「怒りでも悲しみでもなくて、夢から覚めたみたいな感じでした。A先生とのことを私は正直に話したのに、彼はマルチのことを私に隠していた。そんなの付き合ってるとは言えない、とやっと気がついたんです」
モラハラ男は弱みや傷に付け入ってくる
その夜、「今日、うちに来たんだって? もしかしてA氏を告訴した?」と、B男からメールが来ましたが、「私、B男さんのビジネスには興味ないので、もうメールしないでください」とだけ返事をすると、それきり何も言ってこなくなりました。
「心の底では、そんなの誤解だ、会って話をしようって言ってくれるかも……と、まだ思っていました。でも、それで終わりでした。たまたま学生課が学内のマルチ活動について警告を出したので、彼もあっさりあきらめたんだと思います」
優紀さんの心の底には、あまり人に言えない高額バイトをしてしまった後ろめたさと、A氏に遊ばれてしまった心の傷がありました。モラハラ男は他人の心の弱みを察知するのが得意です。B男は「行動しろ」「自分を確立しろ」と励ますように見せかけて、優紀さんを利用しようと画策していたのでしょう。
絶対に自分一人で解決しようとしないで
キャンパス、バイト先、マッチングサイトなどでマルチビジネスに引きずり込まれる例が増えています。特に若い女性の場合、「君はそんな生き方でいいの?」とモラハラ的に圧をかけられると、断りたいのに断れない……ということがあります。
Cさんは「優紀が高額バイトをしたのって、私の言葉がキッカケじゃん? ちょっと責任感じたんだよね」と言ってくれたそうです。
もしかしたらモラハラ? もしかしたらマルチ? と思ったら、誰かに力を貸してもらいましょう。
モラハラ男は「そんなことも自分で決められないの?」と言ってくるかもしれませんが、それも周囲からあなたを分断するための常套手段です。友だちや家族、先生、上司など、誰かに話して、決して周囲から孤立しないように気をつけてください。
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