「ハッピーフロッグ」の謎…カエルはなぜ縁起がいいの?

高山ビッキ 100年カエル館副館長
更新日:2020-05-10 07:39
投稿日:2020-05-10 06:00

よみがえる日までがんばる

 日本ではいまも歌舞伎の舞台で大ガマが登場する演目が掛かり、そのひとつに「滝夜叉姫」があります。この滝夜叉姫というヒロインのモデルとなったのが、平安時代の関東の豪族で、乱を起こして命を落としその首は京都に晒されるも三日後関東に飛んで来たという伝説のある平将門、その三女の如蔵尼です。

 如蔵尼は父の死後、会津の慧日寺(えにちじ)のかたわらに庵を結びますが、父の罪により一度は地獄に落とされます。しかし、地蔵菩薩の慈悲により蘇り、その後長生きしたと伝えられています。

 この姫が、江戸期に入り戯作者(げさくしゃ)の山東京伝(さんとうきょうでん)の物語の中で、弟である平良門が筑波山での修行で身につけたガマの妖術により復讐の鬼、滝夜叉姫になります。悲劇的な史実をもとにしながらもここでガマと「よみがえる」がつながり、人はどん底の状態に落とされても必ず復活できると思えてきます。

 関東に飛んで来た将門の首が落ちたところは、現在の東京・大手町とする説から、神田明神創建の場所に今もその首塚が祀られています。その板石塔婆のまわりには奉納されたカエルの置物がたくさん見られます。

プラス思考で福かえる 

 お守りに謳われていることも多いカエルの語呂合わせに「福かえる」があります。幸福になれますようにという願いですが、「福」に「かえる」がプラスされることで災厄にあっても再び幸福がやって来ますようにといった、まさに蛙の行動につながる「一陽来復(いちようらいふく)」(冬が終わって春が来ること)の意味合いも感じられます。

 この言葉にふさわしい女性に三代将軍徳川家光の乳母だった春日局(かすがのつぼね)がいます。戦国時代から江戸初期に生き、江戸城の「大奥」の基礎をつくるなど能力を発揮した女性ですが、その人生、公私ともに心の休まる時はなかったのではないでしょうか。

 この春日局が群馬県にある一之宮貫前神社(いちのみやぬきさきじんじゃ)に奉納した「白銅月宮鑑」という鏡があり、そこには前述した中国神話の女性嫦娥と、ウサギとヒキガエルが浮き彫りされています。嫦娥に自身の生きざまを重ねることがあったのかもしれません。その思いはわかりませんが、春日局の本名は斎藤福です。すべてポジティブに捉えると「福かえる」とはまさに春日局、どんなことがあっても強く生きる女性のひとりです。

高山ビッキ
記事一覧
100年カエル館副館長
大学卒業後、西武百貨店などを経てフリーのライターに。2004年、祖父の代から集めたモノのカエルをもとに福島県喜多方市に100年カエル館を創設。2008年に学芸員資格取得。現在、同館及び同館の友の会「カエ~ル大学」を運営し、カエルの文化的側面を中心に研究、情報発信などを行う。日本両生類研究会会員。著書に『カエラーたちのつぶやき』(共著・グスコー出版)、『かえるる カエルLOVE111』(山と溪谷社)、『ときめくカエル図鑑』(共著・山と溪谷社)など。ブログはこちら→「コトバデフリカエル

ライフスタイル 新着一覧


また!snsのアイコンコロコロ変えるの何で?4つの心理&注意したいこと
 あなたはsnsのアイコンをどのくらいの頻度で変えますか? snsを始めてから一度も変えたことがない人もいれば、月に一度...
義母「唐揚げは?」嫁「そうですね」義母「明日は鍋」献立確認もやもや!
 義母から送られてきたLINEでもやもやした経験はありませんか? 嫁いびりをするような義母であれば、不快なLINEに何度...
信頼の証じゃない 身内に“八つ当たりする”人の心理と対処方
 今回はお悩み相談回です。職場に好きな人がいる男性の方なのですが、よく想い人の女性から八つ当たりされるのだとか。 「信...
派手な集団に遭遇 ざわついた飲み屋で包まれる昭和の空気
 とある飲み屋で派手な集団に遭遇。チンドン屋さんのお出ましだ。  年末にしんみりしても仕方がないから、ここは景気よ...
ぎゃああ! 暖かいところで越冬するカメムシ(涙)、安全な捕まえ方は?
 家の中に出る虫で、ゴキブリを怖がる人はたくさんいますよね。でも、実はゴキブリと同じくらい不快度が高い虫がいます。  ...
口づけしたくなっちゃう♡ 真っ白な“たまたま”にロックオン
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
なぜお正月の飾りに竹?めでてぇ年賀の最強アイテムはSDGs的にも超優秀
 猫店長「さぶ」率いる我がお花屋にも、まもなくお正月がやってきます。  今年の暮れも嵐が過ぎ去った後のように荒れ放題に...
知人「やさしいたい焼き屋のおじさん」私「あれ母親」地雷踏んだLINE
 人にはそれぞれ絶対に踏んではいけない「地雷」があります。でも、それが何かはわからないケースがほとんど。今回は、LINE...
クリスマスを「自分へのご褒美」の口実にしてもいいかしら?
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
ギャラ飲みとラウンジで荒稼ぎも…まともな恋愛ができない29歳港区女子
 経営者や著名人、人気のインフルエンサーも利用する「ギャラ飲み」なるサービスって知っていますか? 東京都内のみならず、全...
再婚しても元夫・家族に子どもを会わせる?本音は「面白くない」だけど…
 ステップファミリー6年目になる占い師ライターtumugiです。私は10代でデキ婚→子ども2人連れて離婚→シングルマザー...
「こっちに付いてきて」広島で“たまたま”が秘密基地にご案内
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
枕元にプレゼントがなくても…満天の星空に心奪われる特別な夜
 出雲の国の満天の星空を眺めていた。  日付が変わった頃、天の川を切り裂くように飛行機が音もなく飛んでいった。 ...
ほっこり読み切り漫画/第64回「みんな揃って、メリークリスマス」
【連載第64回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、突然「コクハク」に登場! 「しっぽ...
「不倫」と「浮気」の違い、知ったかぶりしてませんか?
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
愉快な酔っ払い友達「どこ?寝室に辿り着けない」 私「あんたんち、1R」
 お酒の飲み方は人それぞれです。楽しく飲める人もいれば、酔っ払って記憶を無くす人も…。今回は酔っ払い状態の友達から届いた...