パートナーに裏切られたオンナの“逆襲”は止められない
聡子がしていることは確実に犯罪ですが、ここで一旦、犯罪要素を取り除いてご自身に置き換えてみてください。ゴージャスな(あるいは安定した)生活を提供してくれている、公私をともにするパートナーに浮気をされたら、みなさんはどんな行動を起こすでしょうか。今までの生活を奪われるかもしれない不安に怯え、「好きな男性から、いつまでも“オンナ”として見られていたい願望」が打ち砕かれるのです。そう、聡子は犯罪の共謀者であり恋人でもある平澤に、浮気されてしまうのです。
平澤の浮気を疑った聡子は、証拠をつかむために平澤と支援者である人妻の密会を尾行。2人がホテルから出た直後に平澤へ「今ひとり?」と電話をして、疑念を現実として受け止めます。
愛する男の浮気を疑ったオンナの顛末は…
この聡子の行動を、女性のみなさんは否定できるでしょうか。既婚女性が夫の浮気を疑ったら。今はネットで簡単に情報を集められますから、自分が有利になる証拠集めをする人もいるかもしれません。聡子は自分が尾行するという危険を冒しましたが、探偵社に依頼する人もいると思います。恋人同士であれば、別れを選ぶ人もいるでしょう(浮気を知ってもなお、別れられない女性もいますが)。
筆者は日頃から夫に、「もし浮気をしたら、責めることはしない。黙って家を出て行って離婚だからね!」と言っていますが、自分の言葉に自信が持てなくなりました。相手の女性を社会的に抹殺するかもしれません。夫を一生、頭の上がらない状態に追い込んで、結婚生活を続けるかもしれません(←この2つを言って男性にかなり引かれた経験があります)。聡子はオンナに巣食っている黒い本性を、むき出しにするのです。夫と鑑賞しましたが、「お願いだから、オンナの汚い一面をつまびらかに描かないで! 自分が丸裸にされているみたいだから!」と、恐ろしくなりました。
バブリーな衣装やシャネルのバックは自前
ですが、聡子は苦境に負けません。みずから平澤との関係を断ち、タイへと旅立ちます。2000万円を持ち逃げしたことはさておき、「オンナは強い」とあらためて実感させてくれる立ち直りぶりです。ところが、以降は痛いオンナフルスロットル。現地で出会ったおそらく20代と思われる、ポルシェと名乗る男性を囲うのです。自分をエリカと名乗り、38歳と20歳以上もサバを読んで。
浅田さんは痛いオンナぶりを表現するために、バブル期を彷彿とさせるカラダにフィットした衣装やシャネルのバッグ等の小物は、ほぼ自前。昔の購入品を身に着けて挑んだそうです。「恥ずかしいから、若作りはやめましょうよぅ……」と唸ってしまいそうな姿はぜひ劇場で。
樹木希林さんの存在感
聡子の母・渡部薫を演じた樹木さんの存在感は、筆者が特筆しなくても予想できるはずです。樹木さんは本作を観ることなく旅立たれて、生涯現役を貫きました。最後に遺された作品を観て、「いつまで自分は頭の回転がよく軽やかに、現役を続けられるだろうか」と、自身の仕事人生を鑑みる人もいるかもしれません。悪女の“業”と“本性”をあぶり出すことで、価値観を揺さぶられる作品です。
Blu-ray/DVDはよしもとミュージックより5月13日から発売&レンタル開始。
出演:浅田美代子、平岳大、窪塚俊介、山崎一、山崎静代、小籔千豊、WORAPHOP KLAISANG、菜葉菜、鈴木美羽、佐伯日菜子、真瀬樹里、中村有志、黒田アーサー、岡本富士太、小松政夫、古谷一行(特別出演)、木内みどり、樹木希林 製作総指揮:奥山和由 監督・脚本:日比遊一 企画:樹木希林
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