「天命」を受け入れ死にゆく友人へ…最期にしてあげたいこと

斑目茂美 開運花師
更新日:2020-08-12 06:25
投稿日:2020-08-12 06:00

人を想う商売

 考えてみるとお花屋さんというお商売は、亡くなるご本人やそのご家族、あるいは、その知人との距離が微妙に近い不思議な職業でございます。

 人間や動物に限らず、生き物が「死ぬということ」。

 花屋は、毎日生き物が死ぬ前と後、そしてもっとさらにその先をこれから亡くなるご本人やその家族、知人との会話の中で、「死んで別れる」ということに自分の想像の強弱をつけながら、花に触るお仕事でございます。

 死にゆく者へ、そして死んだ者へ……。

 一歩下がったところで、寄り添うことの許されたお商売。それが花屋でございます。

 ワタクシたちの商売道具である、「花」にまつわるお話。アナタは花の持つ不思議なチカラを信じますか?

 ということで、今回の「笑う花には福来たる」は、「天命を受け入れる花」のお話でございます。

ガンに冒された女性が最期に残したもの

 ある日、遠くイギリスに住む女性からいただいたご注文でございます。

 その女性Hさんは、SNSがきっかけで知り合ったワタクシと同世代の素敵な女性。

 ガンに蝕まれたHさんのお母様のご友人が、いよいよ「さよなら」の時が近づいてきたとのこと。

 コロナ禍でもう会いに行くことはできないけれど、彼女がこの世で最期を過ごす時間が穏やかであって欲しいというご友人たちのお心で、その大切な時間のための花を作ってもらいたい、とのご依頼でございました。

この世の最期の時間に見る穏やかで美しい花

 おそらく気絶しそうなほどの痛みに耐えながら毎日を過ごしていらっしゃる方に、いったい慰めの花なんてあるのか……ハッキリ言ってワタクシ、責任重大でございます。

 一輪の花を際立てたスタイルにしようか。いや、「あの一輪の花が枯れる頃に私は死ぬ」って思われたら困るからやめた方がいい、とか。元気が出るようにヒマワリでもバーンといれようか。いや、「私が寝ている間にいつの間にか夏になってたの?」って思われると傷つけてしまうかもしれないからやめた方がいい、とか……。

 さんざん迷った揚げ句、横になったまま、たとえ細かいものが見えなくても彼女の目の前が穏やかな色で満たされる、たくさんのお花で構成された縦に長いスタイルのアレンジメントをお作りいたしました。

 どうか、ご友人たちの友を想う優しい気持ちが病で死の淵にいる彼女に届きますように……ワタクシの指先から一本一本の花に願いをこめてお作りさせていただいたのでございます。

 イギリスに住むHさんから、お母様のご友人がお亡くなりになられたとのご連絡をいただきましたのは、お花をお届けしてから一週間もしない、ある日の夕暮れでございました。

Hさん 「それがね、斑目さん。不思議なんですが、亡くなったお母さんのお友達から手紙が届いたらしいです。」

ワタクシ 「え!」

Hさん 「こんなご時世、お通夜もお葬式も人数制限があって行けなかったみたいで結局会うことは叶わなかったけど、手紙の最初と最後に花のことが書いてあったみたいです。

 お母さんのお友達は花を見ながら、最後の気力を振り絞って書いた手紙だったんでしょうね。『天命を受け入れる』って。悟ってるよね。花ってすごい。綺麗なお花を見ながら最期の数日を過ごすって、ホントに素敵」

「いただいたお花を毎日眺めながら気力を養っています」から始まる手紙。まもなく命の灯が消える彼女からの人生最期の手紙には、ある日突然元気だった自分に突きつけられた”命の期限”についての悩み、葛藤。そしてHさんのお母様へ、今まで友人であってくれたこと、気力を養う花への感謝の言葉が綴られていたようでございます。

「ガンであることを天命と思って受け入れ、闘う」

 そう最後に書かれた手紙がHさんのお母様のお手元に届いてすぐ、彼女はあの世へと旅立ったのでございます。

斑目茂美
記事一覧
開運花師
半導体エンジニアを経て花業界に転身。イベント・ホテルなどの装飾も手がける生花店を営む傍ら、コンテストで優勝・入賞を重ね、雑誌・新聞等に作品を発表する。神奈川各所にて花教室を開催。障害者支援も花で実践。悩ましくも素敵なお客様を「花」で幸せへと導く道先案内人。ブサかわ猫店長「さぶ」ともに奮闘中。Facebookやってます。

ライフスタイル 新着一覧


好きな作家と同じ時代を生きる心強さ 2023.8.2(水)
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
すいかばかのレシピ~'23年<4>すいかが死ぬほど好きな男の一日に密着
 すいか生産量全国47位、ごくごくレアな山梨県ですいか作りに情熱を注ぐ「寿風土(こどぶきふうど)ファーム」代表の小林栄一...
【45歳からの歯科矯正】4カ月、目に見えて効果が…! 2023.8.1(火)
 総費用160万円かけてワイヤー矯正(表側)に踏み切った“40代半ば婦人”のほぼほぼリアタイ体験談。ワイヤー装着から4カ...
飛機場はペチャパイって…中国語のスラングが直接的すぎて涙が出てくる!
 全世界で約14億人の人々が話すという中国語。日本人である私たちの言語も「漢字」を使用することから、英語などのアルファベ...
2024-02-26 19:03 ライフスタイル
都会の真ん中の運河、聞こえてきたのは… 2023.7.31(月)
 都会の真ん中の運河、力強い生命力を振りまく。 「つつましやかになんてな、こっちの世界じゃ通用しないんだよ」 ...
ガラステーブル買っちゃう?  “たまたま”の夏を満喫できるよ
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
落ち込んでる人への「ひと言」に悩んだら…心に染みたLINE3選を参考に
 目の前に落ち込んでる人がいると、どんな言葉をかけていいか迷ってしまう時がありますよね。もしも迷ったら、自分が過去にかけ...
「いま一番欲しいもの」を即答できる? 2023.7.30(日)
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
動物&飼い主のほっこり癒し漫画/第54回「真夏のシンジツ」
 ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、突然「コクハク」に登場! 生きものたち、その生きものたちをこよな...
「売れ残り」って心が折れた…思春期の甥&姪からの切ないLINE3選
 甥や姪が可愛くて仕方ない人は多いでしょう。兄弟姉妹の子供って、特別ですよね。小さい時から見ている人も多く、中にはかなり...
「偽善者か?」歌舞伎町の野良猫に2年間、毎日ご飯をあげ続けた男性の話
「かわいくないんですよ~(笑)。『なんだよ』って文句しか言っていない。好き嫌いは多いし、忙しいときに限って、ご飯を食べて...
小汚いサンダルをやめた女性の成功話!メイクや髪形より「キレイな靴」
 みなさんは“人の足元”って気にして見るほうですか? 私は靴が好きなのもあって、よく見ているほうだと思います。ただし、自...
真夏を彩る花 2023.7.28(金)
 こうも暑いとゲンナリするけど、むしろ過酷な状況を楽しむかのように咲く。  逆境でがんばる花のたくましさに驚く。 ...
皆が皆、社交的ではないよね…懇親会が苦手な人が“極力疲れない”対処法
 会社員だと避けて通れないものの一つが「懇親会」。参加人数が多かったり、他部署と交流をしないといけなかったりと、「正直疲...
対応ミスると悲惨! お盆の義実家トラブル5つの地雷&回避術
 お盆も間近! 義実家への帰省が憂うつという奥様は、あなただけではありません。気を使っているつもりでも、義両親を怒らせて...
華やか! チャトラ軍団のウキウキ上機嫌“たまたま”が大集合
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...