ワケあり内縁妻の存在が発覚した彼氏…加奈子さんのケース#1

神田つばき 作家・コラムニスト
更新日:2020-10-12 06:00
投稿日:2020-10-12 06:00
 うまくいっていた男性から突然別れを告げられた。大きな喧嘩もなく、急に嫌われるような原因もないのに、もう会えないと言われてしまった。そんなつらい経験はありませんか?なんだか腑に落ちない突然のサヨナラ通告、実は相手が虚言癖男だったという場合があるのです。加奈子さんが異業種交流会で知り合った、輸入自動車の営業マン・則夫がそうでした。

エリート営業マンが語った自宅に彼女を呼べない理由

衝撃の「嫁がいる」発言(写真:iStock)
衝撃の「嫁がいる」発言 (写真:iStock)

 デザイン事務所に入ったばかりの加奈子さん(仮名・23歳)は則夫(仮名・28歳)と意気投合し、週末ごとにデートするようになりました。則夫は営業成績優秀でセンスもよく、加奈子さんを車に乗せて「仕事の参考になるように」と海外輸入のインテリアショップに連れて行ったり、京都や奈良へ仏教建築を見に行ったりしてくれます。付き合って3カ月目には、「愛してる」「ずっと一緒にいたい」と言い合う仲になっていました。

 しかし則夫は一度も自分の家に加奈子さんを招こうとしないのです。不安になった加奈子さんが「あなたの部屋で過ごしたいな」と言ってみると、しばらく黙りこんだのちに則夫は驚くようなことを白状しました。

「それはだめなんだ。内縁だけど嫁がいる……黙っていてごめん」

傷つけたくないから別れようという提案

別れを提案されて…(写真:iStock)
別れを提案されて… (写真:iStock)

 則夫が妻帯者と知っていたら、もちろん付き合いませんでした。それを知らずに不倫の相手をさせられていたなんて、と加奈子さんは激しく動揺しました。

「そんな……ひどいよ。どうしてもっと早く言わなかったの?」

「毎回、今日こそ言おう、言わないと加奈ちゃんを傷つける、と悩んでた。でも会うと楽しくて、加奈ちゃんの顔を見るとどうしても言えなかったんだ」

「そんなのずるいよ。私と会いたいなら、奥さんと別れてよ。私は日陰でコソコソするような交際はいやなの!」

 ところが則夫の返事は加奈子さんにさらにショックを与えるものでした。

「ごめん、どうしても嫁から離れられない理由があるんだ。これ以上、加奈ちゃんを傷つけないためには、加奈ちゃんと別れるしかない…」

 愛し合っていると思っていた則夫から、別れという言葉が出てくるなんて信じられませんでした。どうしても別れられない理由とは何なのか、問いつめる加奈子さんに則夫は、ある場所に一緒に来てほしいと言ったのです。

内縁の妻が抱える複雑で悲痛な事情とは

少女は内縁の嫁の連れ子だという…(写真:iStock)
少女は内縁の嫁の連れ子だという… (写真:iStock)

 次の休日、則夫が加奈子さんを連れて行ったのは、とある児童養護施設でした。保護者がいない子供、親からの虐待に遭った子供たちが生活している、東京都下の施設です。庭のかたすみで、遊びの輪に加わらずに本を読んでいる10歳ぐらいの女の子を指して、則夫は言いました。

「あの子、嫁の連れ子なんだ。嫁が統合失調症で入院しているから、ずっと施設にいる。家で面倒を見てあげたいんだけど、俺が嫁と入籍してないと手続きがむずかしい。でも、嫁は、入院中に俺があの子に手を出すんじゃないかと反対してるんだ。俺がそんなことするはずないのに、被害妄想がひどくて……」

 則夫は肩を落としました。戸籍も血も繋がっていない則夫は、その子を家に連れ帰ることができないのです。少しでもその子の助けになればと、施設あてに毎月寄付をしていると言うのです。

孤独な子供の姿にかき立てられた同情心

寄付を申し出ても拒否されてしまう(写真:iStock)
寄付を申し出ても拒否されてしまう (写真:iStock)

 お母さんに会えないその子供の気持ち。

 病気のために子供に会えないお母さんの気持ち。

 寄付以外に何もできない則夫の気持ち。

 それぞれ想像するだけで胸が痛みました。別れるしかないと言った理由は、この女の子の将来を案じてのことだったのか……。同情した加奈子さんは、その後も則夫といっしょに施設の様子を見に出かけました。女の子は一人でいることが多く、加奈子さんは胸が締めつけられる思いで、園の外からその子を見守っていました。

 やがて加奈子さんは、「私も寄付がしたい」と則夫にお金を差し出しました。少しでも、あの淋しそうな女の子の助けになれば、と思ったのです。しかし則夫は、「俺の事情に加奈子を巻き込むわけにはいかない。それだけはだめだ」とお金を預かろうとしませんでした。

 次回に続きます。

神田つばき
記事一覧
作家・コラムニスト
離婚と子宮ガンをきっかけに“目がさめて”、女性に生まれたことの愉しみを探そうと緊縛写真のモデルとライターに。私小説「ゲスママ」、女性の悩みや疑問を解き明かすコラム「性に纏わるあれこれ」
イベント「東京女子エロ画祭」「親であること、毒になること」などの企画も。X

ラブ 新着一覧


堕ちる前に知っておきたい 既婚男性が結婚指輪をしない“多角的”な理由
 気になる彼が既婚者かどうかは、結婚指輪をチェックするのがド定番。  ただ、意図的に指輪を外す男性もいるため、指輪の有...
恋バナ調査隊 2024-02-13 06:00 ラブ
共働きの育児にモヤっ 妻と夫では家事と子育ての見え方がなぜ違う
 セックスレスやセルフプレジャー、夫婦の在り方などをテーマにブログやコラムを執筆しているまめです。  家事や子育て...
まめ 2024-02-13 06:00 ラブ
男性は母親に似てる女性を好きになる? 脈あり判断方法とは
 恋愛においてよく言われるのが「男性は、母親に似てる人を好きになる」という説です。実際にはどうなのでしょうか?  ま...
恋バナ調査隊 2024-02-12 06:00 ラブ
カトちゃん夫婦は特例? 10歳以上の歳の差恋愛がうまくいく人の特徴6つ
 もし好きになった人が、あなたよりも10歳以上も歳の差のある人だったらどうしますか?  芸能人では、45歳差で結婚し...
恋バナ調査隊 2024-02-12 06:00 ラブ
夫の浮気疑惑助けて…!ラブホのライターは修羅場案件でも言い訳に納得
 夫が浮気をしているかもしれないけど決定的証拠や確信がない、そんな状況が続いたらつい誰かに助けを求めたくなりますよね。 ...
2024-02-11 06:00 ラブ
友達の彼氏と禁断のキス…今だから言える私のワンナイト物語
 一夜限りの体の関係を持つ“ワンナイト”。あなたには経験があるでしょうか? 「今だから言える」と、ワンナイトの経緯...
恋バナ調査隊 2024-02-10 06:00 ラブ
仕事で失敗した41歳独男 ホストにもなれず、元カノに金をせびる大転落。
「冷酷と激情のあいだvol.181〜女性編〜」では、半年ほど親密だけど曖昧な関係にあった男性・シンイチさん(41歳・仮名...
並木まき 2024-02-10 06:00 ラブ
42歳バツ1独女、昔の男が連絡してきた。セフレでもいないよりマシかも?
 男女の関係では、交際相手や配偶者の態度に悩む人も少なくありません。愛し合っている男女間でも、価値観や物事の判断には個人...
並木まき 2024-02-10 06:00 ラブ
男「そういうとこ好きよ」はLOVEだったのか!遠まわし告白の悲劇よ…
 好意を持っている男性から告白されたら嬉しいに決まっていますよね。 返事は当然OK一択!  でも、彼の告白が遠まわ...
恋バナ調査隊 2024-02-10 06:00 ラブ
イクメンは世間を欺く仮の顔?家族命と見せかけて不倫する男に3つの特徴
 夫がイクメンだと本当に助かりますよね。自分の時間もできるし、「いい人と結婚してよかった!」とママ友に自慢し、羨ましがら...
恋バナ調査隊 2024-02-09 06:00 ラブ
東京⇔鹿児島の遠距離恋愛 彼の旅費を全額負担するアラフォー女性の本音
 オンラインでの出会いが増えたこともあり、遠距離恋愛に陥る人が大勢います。  気になるのは、彼氏が会いにきてくれる時の...
内藤みか 2024-02-08 06:00 ラブ
上納システム報道で我振り返る…2度と行きたくない!合コン恐怖体験4選
「どんな男性と出会えるんだろう♡」とドキドキして行った合コンで、トラウマ級の恐怖体験をした女性に話を聞きました。 ...
恋バナ調査隊 2024-02-08 06:00 ラブ
彼氏できない問題…決まった恋人がいない人のための恋愛術
「全然彼氏ができない…」  出会いはあるけれど、本命にならず都合のいい関係で終わってしまうケースはありませんか。 ...
若林杏樹 2024-02-07 06:00 ラブ
「ときめかないけれどいい人」は逃すな! 結婚をおすすめする理由5つ
 恋愛というと、心がときめく甘い恋愛をイメージする人が多いですよね。でも、心がときめくからといって、幸せな結婚ができると...
恋バナ調査隊 2024-02-07 06:00 ラブ
セルフプレジャーを早く知りたかった 男女比では大きな差が
 セックスレスや婚外恋愛、セルフプレジャーをテーマにブログやコラムを執筆しているまめです。  私が個人で運営してい...
まめ 2024-02-06 06:00 ラブ
あなたの恋力&魅力を引き出す香りは? 1分で得するフェロモンジャッジ
 今回は、バレンタインに向けた【フェロモンを引き出すメンズ香り術】です。  素敵な男性が近くにいるとフェロモンが爆...
太田奈月 2024-02-06 06:00 ラブ