弁護士もお手上げ!嘘に酔う虚言癖男…加奈子さんのケース#3

神田つばき 作家・コラムニスト
更新日:2020-10-30 06:00
投稿日:2020-10-30 06:00

大仕掛けなホラ話にみずからも感激

 私もそれが最大の疑問でした。でも、加奈子さんは則夫がなぜ嘘をつきまくったか、少しわかってきたと言っています。

「内縁の妻も、施設の子も全部ウソだと思います。則夫は頭が良くて、仕事の成績もよかったんです。ドラマチックな刺激を求めていたんじゃないでしょうか。私が施設のことに入れ込むのを見て、則夫なりに感激していたのは本当だと思います。その感激を求めていろんな嘘を作ってしまう、彼はそういう病気だったんじゃないですかね。私が寄付すると言ったとき、涙を浮かべていたんですよ……」

 加奈子さんの分析を聞いて、私もそういう人物を何人か見たことがあることに気づきました。普通の人が架空の話だとわかっていても芝居や映画に感動するように、自分で仕掛けたドラマチックな嘘に感動する人間がまれにいるのです。

虚言癖男にえぐられた心の傷痕を治すために

 訴訟はあきらめるとしても、加奈子さんの気持ちはどうなのでしょうか。則夫にきちんと謝罪してほしいという思いがあるのではないでしょうか。そこを聞いてみました。

「正直なところ、お金の被害だけが実害ではないですよね。眠れない夜など、付き合っていた間のことをふと思い出します。楽しかったことや感謝したこと全部、嘘の設定の上に成り立っていたんだと思うと、信じこんでいた自分はすごくばかな人間なのではないかと、つらくて叫びそうになるんです」

 よく、自己評価が低い人はだまされやすい、というネット記事を目にしますが、逆にだまされたことで自己評価が低くなることもありそうです。自分は心をこめて真剣に話していたのに、相手は作り話で返していたのかと思うと、深く傷ついてしまうからです。

嘘を聞かされる機会を絶対に避けること

「また会ったり、メールや手紙で嘘で粉飾した謝罪をされたら、私はもう立ち直れなくなってしまう。とにかく二度と接触しないのが、自分の心を守る方法だと思ったんです。兄がおせっかいを焼いてくれなかったら、私は今も則夫との結婚を夢見て施設に寄付を続けていたかも知れません。結婚詐欺のようにお金が目的ではないので、だまされていると気づくのに時間がかかりました。こういう男もいるということ、女性はぜひ知っていてください」

 と、加奈子さんは語っています。

 私たちの常識では推しはかれない行動を取る虚言癖男に、皆さんもくれぐれも気をつけてください。

神田つばき
記事一覧
作家・コラムニスト
離婚と子宮ガンをきっかけに“目がさめて”、女性に生まれたことの愉しみを探そうと緊縛写真のモデルとライターに。私小説「ゲスママ」、女性の悩みや疑問を解き明かすコラム「性に纏わるあれこれ」
イベント「東京女子エロ画祭」「親であること、毒になること」などの企画も。X

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


隣に誰かがいるのに「人恋しい」と思ってしまうこと、ない?
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
40女、無印良品でクリスマススワッグづくりに人生初挑戦!
 クリスマスシーズン到来。40半ば、人生初のクリスマススワッグづくりに挑戦してきました。おいおい自分、丁寧な暮らしをして...
独身友人が“メンタル落ち”に…結婚しないなら孤独を避けよ!
 セックスレスや婚外恋愛、セルフプレジャーをテーマにブログやコラムを執筆しているまめです。  現代は、結婚する・し...
つーかなんであの子が? 同僚への嫉妬心の抑え方と嫉妬された時の対処法
 同期入社の同僚でも、時が経つと仕事ができる人、できない人、差が出てきますよね。中には、同僚に嫉妬してしまう、もしくは嫉...
猫島の美しい光景…探検ごっこで美少年“たまたま”が見張り番
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
ストレスで声が出ない…急遽ソロ参戦した夫の「親子遠足」で学んだこと
 ステップファミリー6年目になる占い師ライターtumugiです。私は10代でデキ婚→子ども2人連れて離婚→シングルマザー...
いじめてる? 抱きしめてる? 君たちにはどう見えるか?
 どちらにみえるかは、そのときの自分の心の持ちようで見え方が変わりそう。  きっと、それって狛犬だけの話じゃなくて...
「嬲ると嫐る」“本家”はどっち?
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
ほっこり読み切り漫画/第62回「おとこまえ ダンシ会」
【連載第62回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、突然「コクハク」に登場! 「しっぽ...
流鉄・幸谷駅で発見!「猫のコーヒー」自販機で出合った癒しの紙コップ
 千葉県の松戸市と流山市を結ぶ、6駅しかない小さなローカル線、流鉄流山線。常磐線と武蔵野線につながるJR新松戸駅への乗り...
彼の浮気タレコミにも“無”、冷たっ!合理的な人から届くLINE3つの特徴
「合理的」とは、明確な目標があり無駄がない様子をいいます。  特に仕事では、合理的な人がとても高く評価されますよね...
肩こり・腰痛 マッサージに行けない時のホームケアグッズ3選
 パソコンなどの座り仕事の方は肩こり、腰痛、眼精疲労などに悩まされている人が多いのではないでしょうか。  私もこの...
男性同士は褒め合わない?男女で全く違う「褒め文化」の話
 先日、友だちが彼氏とケンカして家出し、我が家にやってきました。とにかく怒ってたので話を聞くと、「私は彼氏を褒めるけれど...
寿司か、シミ取りレーザーか。
 ストリッパーの仕事は10日単位である。会社員時代は7日単位で、そのうちの2日は休む習慣だった。だから10日なら3日くら...
見事!家事育児丸投げ上司を黙らせた ナイフ張りにキレッキレなLINE3選
 思ったことをはっきりと発言する人は、「きつい人」と誤解されやすい傾向にありますよね。  でも、嫌味を感じないほど...
少し冷たくなった空気 気候の変化と人間の進化の夢と現実
 天気はよくても空と運河の青が寒々しい。向こうに見える高層ビルに入ったオフィスは、きっとガンガンに暖房を効かせているんだ...