「無頼」で魅せる!EXILE感ゼロの松本利夫と“極妻”柳ゆり菜

内埜さくら 恋愛コラムニスト
更新日:2020-12-18 06:00
投稿日:2020-12-18 06:00
 甘美な欲望に貪欲かつ忠実なオトナ女子に、オススメの作品を紹介するコクハク発のエンタメ情報です。今回は、映画「無頼」です!

井筒監督8年ぶりの新作は「昭和のヤクザ」

 映画「パッチギ!」(2005)や「黄金を抱いて翔べ」(2012)など、一貫してアウトサイダーを描き続けてきた、井筒和幸監督が8年ぶりにメガホンを執った本作。作品を鑑賞して最初に驚かされるのは、物語の中心人物となる井藤正治を演じている初代EXILEのパフォーマー、松本利夫さん。おそらく公開を楽しみに待つ人が予想する以上に“EXILE感ゼロ”で、昭和のヤクザを振り切って演じています。

 貧しい少年時代を送った正治が一家を構え、似たような境遇のはみ出し者を束ねて裏社会を駆け上っていくという、男くさい重々しささえ感じさせる物語の中で一服の清涼剤的役割を担っているのが、柳ゆり菜さん。正治の妻・佳奈役を演じていて、女性キャストが少ない中で名演技を魅せてくれているのです。

 正治は車内から見た佳奈に、「お尻が大きい」と一目惚れ。正治が猛アタックの末に恋人同士になりますが、このときの佳奈はまだ、ホステスをしている“お姉ちゃん”。ですが、正治が幾度も刑務所に収監されるたび(何回、入ったら気がすむの? と思うぐらい繰り返します・笑)、一家の“姐さん”として成長し、君臨していくのです。

“姐さん”といえば、「鬼龍院花子の生涯」の故・夏目雅子さんや、「極道の妻たち」シリーズの岩下志麻さんが代表格かもしれませんが、柳さんが演じた佳奈は、これらの作品とはやや別物。次第に顔つきには風格が出てきますが、ホステス時代のまろやかさやなまめかしさは失われないのです。舎弟が悪いクスリを持っていると知ったときも、再犯しないようクスリを捨てさせて、威厳を持ってこってりと絞るのみ。ナイフや拳銃は扱いません。独自の“姐さん像”を確立したといっても過言ではないでしょう。

 井筒監督は写真と動画をひと目見て柳さんのキャスティングを決めたそうですが、YouTubeでは柳さんの演技力も絶賛。動画で語っていますが、井筒監督が太鼓判を押す柳さんの演技力は、幼少期の体験が影響しているそうです。

柳ゆり菜はプロダンサーになるのが夢だった

 柳さんは2013年のデビュー以前、9歳から18歳まではプロダンサーになることが目標だったそう。ですが、「ダンスで生活はできない。仕事にしたらダンスを嫌いになってしまう」と悟ると同時に、「自分にはダンスで鍛えた表現力しかない」と自覚。生活する道を模索している最中で、幼い頃の家庭を思い出したそうです。

 お父様は大阪のミナミでバーを経営し、お母様も働く共働き一家の唯一の休日は、日曜日。この日だけは家族一緒に映画を鑑賞することが習慣になっていたらしく、身につけた表現力を活かすため、女優を目指して芸能界入りしたそうです。「原体験を振り返ることで大切な価値観に気づき、夢が見つかる」という説の、典型例のような人生かもしれません。

女性も釘付けになる!無頼たちの生き様

 女性キャストが少なく、佳奈が登場すると画面が華やぎます。理由は男性目線で描かれているからで、第一印象は男性向け? と思われるかもしれませんが、怒涛の展開で女性も目が釘づけになります。コロナ禍でティッシュペーパーやトイレットペーパーが売り切れ続出となりましたが、本作では1970年代に二度あった、「オイルショックと呼ばれるトイレットペーパーの買い占め騒動も描かれているため、「昭和時代は自分とは無関係」と考える人も共感できる点も魅力です。

 昭和に実在した(かもしれない)、荒々しくも男らしい無頼たちの生き様を、迫力満点の大きなスクリーンで鑑賞してみてください。

12月より全国順次公開予定(R15+指定)。配給:チッチオフィルム 
出演:松本利夫、柳ゆり菜、中村達也、ラサール石井、小木茂光、木下ほうか、升毅ほか。監督&脚本:井筒和幸

内埜さくら
記事一覧
恋愛コラムニスト
これまでのインタビュー人数は3500人以上。無料の恋愛相談は年間200人以上の男女が利用、リピーターも多い(現在休止中。準備中のため近日中にブログにて開始を告知予定)。恋愛コメンテーターとして「ZIP!」(日本テレビ系)、「スッキリ」(同)、「バラいろダンディ」(MX-TV)、「5時に夢中!」(同)などのテレビやラジオ、雑誌に多数出演。

URL: https://ameblo.jp/sakura-ment

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


「ばけばけ」“闇落ち”三之丞(板垣李光人)が切ない…トキ(髙石あかり)の言葉は優しいウソなのか
 トキ(髙石あかり)の献身もあり、傳(堤真一)の体調に回復の兆しが。トキは代理社長の三之丞(板垣李光人)に回復の報告をす...
桧山珠美 2025-10-18 11:38 エンタメ
「ばけばけ」トキ(髙石あかり)と“もうひとつの親子”の姿にうるっ…。三之丞(板垣李光人)の行動が意味深?
 トキ(髙石あかり)が傳(堤真一)の看病をはじめて3週間。傳の具合は回復しない。工場では傳が戻るまでに経営状況を回復させ...
桧山珠美 2025-10-16 16:58 エンタメ
「ばけばけ」岡部たかしの“芸達者ぶり”に感心…。そして北川景子の夫・DAIGOの登場に期待したいわけ
 病に倒れた雨清水傳(堤真一)。トキ(髙石あかり)は日頃、お世話を焼いてくれる傳への恩返しのため、看病を買って出る。日中...
桧山珠美 2025-10-15 16:30 エンタメ
Snow Manが“客寄せパンダ”と物議も…無視できない多大なメリット。異様に高い“再生数”で海外の注目を集めるか
 韓国の人気音楽番組「ミュージックバンク」(KBS)が主催する12月の「2025 MUSIC BANK GLOBAL F...
こじらぶ 2025-10-14 11:45 エンタメ
【芸能クイズ】再始動のダウンタウンに期待の声。では「笑ってはいけない」第1回の“ペナルティー”は何だった?
 テレビやネットでふと耳にした、あのひとこと。記憶の片隅に残る発言の背景には、ちょっとした物語があるのかも?  ネ...
“超豊作”の秋ドラマがアツい! 大泉洋×野木亜紀子に期待爆発、三谷幸喜の“クセ強ドラマ”はジワ伸びの予感?
 夏の暑さが落ち着き、心地よい夜風が吹くこの季節。ドラマの秋がやってきました!  2025年の秋ドラマは、まさに「...
「ばけばけ」お見合い相手は“べらぼう”の29歳俳優じゃないか!過去“朝ドラ”女優も登場で今後が楽しみ
 両家の親同士も良好な雰囲気で、トキ(髙石あかり)と銀二郎(寛一郎)のお見合いはうまくいきそうな空気に。このままいけば結...
桧山珠美 2025-10-11 12:30 エンタメ
フワちゃんを許すことが“大人”なのか? 非常識な人にブチギレるのは当たり前ではないのか
 Xで芸人・やす子に対して、《おまえは偉くないので、死んでくださーい 予選敗退でーす》と揶揄する投稿をしたことをきっかけ...
堺屋大地 2025-10-10 13:06 エンタメ
永野芽郁、「お兄ちゃん」呼びの“癖”を暴露されて可哀想。“妹アピ”に騙される単純な男が多すぎる件
 今年4月、田中圭との不倫疑惑スキャンダルで世間を騒がせた永野芽郁が、3年ほど前の交際相手・坂口健太郎から二股をかけられ...
堺屋大地 2025-10-09 11:45 エンタメ
「ばけばけ」トキ(髙石あかり)の妄想に一瞬、脳がフリーズ。ほんわかテイストに賛否が分かれそう?
 ついに貧乏脱出のチャンス! はじめてのお見合いに挑む、トキ(髙石あかり)。  司之介(岡部たかし)やフミ(池脇千...
桧山珠美 2025-10-08 14:34 エンタメ
藤井風、92歳の黒柳徹子を“乙女”に変えるフェロモン。ついにシニア世代まで色気がバレたか
 最近、藤井風のことが気になって仕方がありません。9月5日に3rdアルバム『Prema』が発売。それに伴い、9月はメディ...
笑顔がこわい!「ばけばけ」トキ(髙石あかり)の“顔芸”が完璧だった。見どころの一つだと確信した回
 貧乏脱出のため結婚を目指す、トキ(髙石あかり)。しかし、チヨ(倉沢杏菜)とせん(安達木乃)と行った恋占いの結果は一人だ...
桧山珠美 2025-10-06 17:13 エンタメ
平野紫耀らの「脱退発表」から約3年…Number_iとKing&Prince、それぞれの現在地と課題。“二大天然ボケ”不在の影響はあるか?
 2022年11月、King & Prince(以下、キンプリ)から2023年5月をもって平野紫耀(28)、神宮寺勇太(...
こじらぶ 2025-10-05 11:45 エンタメ
「ばけばけ」は“聖地巡礼”したくなる朝ドラの予感。実際にある島根県・八重垣神社の“恋占い”してみたい!
 明治19年。トキ(髙石あかり)は、借金を返すために親戚の雨清水傳(堤真一)が経営する機織り工場で働いていた。しかし、膨...
桧山珠美 2025-10-04 10:42 エンタメ
「あんぱん」アンパンマンは粒あんか、こしあんか…“お遊び”が楽しかった特別編。蘭子の“その後”はモヤモヤだけど
「あんぱん」が終了したと思ったら、早くも翌週の9月29日(月)~10月2日(木)の四夜連続で、スピンオフが放送されました...
桧山珠美 2025-10-04 08:00 エンタメ
「ばけばけ」しめこ汁に“朝から残酷”の声もあるけど…ピーターラビットの話を思い出す
 突如、トキ(福地美晴)やフミ(池脇千鶴)、勘右衛門(小日向文世)の前から姿を消した司之介(岡部たかし)。何日経っても家...
桧山珠美 2025-10-02 15:48 エンタメ