無理してることを察した? それでも…
――お2人の関係がさらに深まったのではないですか?
「そうですね。私は決してサディスティックではありませんが、Tクンの乱れっぷりや苦悶や羞恥に歪む美貌を見ているだけで、幸せです。もちろん、さんざんいたぶった後には、セックスのご褒美もありますから」
――セックスの際は、今もS女に徹しているのですか?
「実は最近、Tクンに『P子さんて、たまには普通のエッチもしたいんじゃない?』と聞かれて……私が無理して罵声を浴びせていることを察したのかもしれません。
でも普通のエッチをすると、単なる男女の不倫になって、彼に飽きられそうで……だから、当分は彼の欲望を満足させるだけのS女のポジションでありたいと思います。
Tクンに新しい彼女ができたとしても、彼がM男をさらせる場所は私だけでありたいなって……(笑)。
思春期に見た官能イラスト本がきっかけ
のちに分かったことですが、彼がM男になったきっかけは、両親の部屋の書棚で見つけた官能イラスト本だそうです。
ページをめくると、黒のボンテージを着た豊満な美熟女の尻に敷かれる痩せた男、首輪をハメられて四つん這いで女性たちの周りを散歩させられる男、目隠しされ裸の胸元に『ボクは変態です!』『クソマゾ』『包茎』などと殴り書きされた男、ピンヒールに踏みつけられる男――それらを見た思春期、大いに興奮したそうです。
両親にも友人にも言えず、上京してから少しずつ性癖をオープンにできるようになったようですね。で、肝心の食事会に連れてきてくれたホステス仲間と出会ったきっかけはまだ聞けずにいますが……たぶん、これからも訊ねることはありませんね」
欲張りな人生を!
――なるほど、続けてください。
「しばらくは可愛いM男クンのために、女王様に徹するのもアリかなと思って……。今は彼と非日常のエッチを味わえるだけで充分幸せです」
P子さんは頬を染めて笑った。秘かな恋をしている分、家族との時間も大事にしているという。もちろん、ホステス仲間にもTクンとの関係は内緒だ。
「墓場まで持っていく秘密があってもいいですよね。誰も傷つけず、彼と逢う時間は思いっきり楽しんで、再び家庭に戻っていく。欲張りな人生で行こうと思います」
◇ ◇ ◇
欲張りな人生――かつての日本女性は、必要以上に「慎ましく、控えめに」「欲に溺れることなく」を強いられてきたのかもしれない。
でも、一度きりの人生。「欲張り」であっていいのだと、彼女の取材を通して深く感じた筆者だった。
(了)
エロコク 新着一覧