検索や共有としてのハッシュタグ
そもそもハッシュタグとは何でしょうか。それは検索するためのキーワードのようなものです。共通のハッシュタグを投稿すれば、それに関する投稿を最新順に見ることができます。たとえば #オリンピック というタグがあり、そこをクリックすると、オリンピックに関する投稿の一覧が表示されるのです。
また、情報の共有のためにも使われてきました。何かのイベントやサークルでの投稿なども、合言葉のように共通のハッシュタグを付けて投稿すれば、投稿した人からのイベントでの画像や現状などを一気に読むことができます。ハッシュタグが付いていると、画像や情報を共有しやすくなるので、便利なのです。
フリマサイトやひとりごとでも
フリマサイトでもハッシュタグを使えるサイトがあります。ブランド名をタグ付けしておけば、そのブランド好きの人が検索し、目に留めてくれて、売れやすくなるのです。フリマサイトでタグ慣れした人は、SNS上でもハッシュタグ検索を自然とするようになりました。たとえば好きなアイドルの名前でタグ検索すれば、最新情報を得やすいので助かるのです。
また、数年前あたりから、ハッシュタグを連続して投稿し、ひとりごとのように使う人たちが現れました。たとえば#来週卒業式 #徹夜明けで激ねむ #ステーキ食べたい などというようにです。自分の心情などをハッシュタグにしても、検索の役には立ちません。それでもなぜこのようなことをすると、前に#が付く言葉が新鮮でオシャレに感じたかららしいのです。「そのほうが言葉がふんわりした印象になり、可愛く見える」と言う人もいました。
#METOOが大きなムーブメントに
このハッシュタグの使いかたを大きく変えたのは、2017年に作られたセクハラを告発するタグ #METOO でした。これはアメリカの女優であるアリッサ・ミラノさんが呼びかけたもので、これに賛同する人たちが「私も性的被害に遭った」という意味で #METOO を付けて告発し始めたのです。これは世界的な動きになり、1週間で85カ国から170万ものツイートが集まったそうです。日本からもこのタグを使う人が大勢出ました。
この #METOO は、単なる検索用のタグに留まりませんでした。大きなムーブメントとなるほどの強いメッセージ性があったのです。いわば性的告発をする時のキャッチフレーズのようなものになったのです。乳がん撲滅のために人々が一斉にピンク色のリボンを付けるピンクリボン運動と似たようなイメージかもしれません。セクハラ被害を告発する女性は、このタグを付けることで「被害に遭っているのは自分ひとりではない」と励まされたのだと思います。
承認欲求のその先へ
その後も訴えをハッシュタグ化することが相次いでいます。たとえば最近の日本ですと、パンプスでの出勤強要に異を唱える #KuToo(苦痛)や、子どもを日々守っている保育士さんに対しての #保育士さんありがとう などが話題になりました。広めたいことをハッシュタグという形で呼びかけ、賛同者がそのタグを付けて投稿する。この動きは、デジタルの世界でのリボン運動となりつつあるのかもしれません。
今まで、SNSでは「いいね」を多く集める投稿が話題になってきました。けれど今後はハッシュタグにどれだけの賛同を集めたかが話題になるかもしれません。ただ「いいね」するだけではなかなか広がらないことも、タグを皆が共有することで拡散しやすくなり、社会を動かすパワーにまでなるのだから、今後も注目したいところです。
小さな投稿が集まり大きなうねりを生む最近のハッシュタグは、承認欲求を超えた新しいSNS活用です。人々は自分の投稿にだけいいねを得るだけでは満足しなくなり、今の社会で疑問に思っているところを変えたい、と考えるようになりつつあるのかもしれません。ハッシュタグのムーブメントは、今後もしばらく続くのではないでしょうか。
ライフスタイル 新着一覧