姿なき闖入者が破壊した新婚家庭…志穂さんのケース#4

神田つばき 作家・コラムニスト
更新日:2019-08-14 17:23
投稿日:2019-08-14 06:01
 解決したはずの夫の不倫疑惑。幸せな家庭を壊したくなくて、感情を押し殺してきた志穂さんも、嫌がらせ行為がエスカレートすると忍耐の限界を迎えました……

卑怯な無言の示威行為に立ち向かう術も気力もなく

もう限界…(写真:iStock)
もう限界… (写真:iStock)

生活圏に入りこんできた不倫相手の影

 ある日、郵便物を取り出そうと集合ポストの扉を開けると、水びたしの布がたくさん詰め込まれています。赤に紫にピンクに黒……おそるおそる指でつまんで取り出してみると、どぎついカラーのセクシーランジェリーでした。悪趣味な下着はすべて水びたしで、志穂さんの足元にも水がかかりました。「いったい誰がこんなことを……!?」、考えられるのは勇太さんの不倫相手しかいません。

 おぞましさに震えが背筋を駆け上がり、忍耐が限界を超えました。触れるのもおぞましいそれらをポストに入っていたチラシの類いで包み、家に持ち帰ると、下駄箱の上に置いて勇太さんの帰りを待ちました。

初めて夫の前に苦しみを突き付けた夜

 帰宅した勇太さんはすべてを察し、リビングに入るなり静かな口調で切り出しました。

「あれ、どうしたの?」

「わかんない。ポストに入ってたんだけど?」

「……たぶん俺のせいだと思う。ごめん」

「無言電話もだよね? これ、全部同じ人だよね?勇太さんにLINE送ってきてた人だよね!?」

「そうだと思う……志穂ちゃんを傷つけて、ごめん。こんなことになるんて、本当にごめんなさい」

 ――初めて夫を責め、初めて夫の口から詫びる言葉を聞いた夜でした。

夫に謝罪されて飛び出した、心の奥底に隠されていた本音

「離婚してほしい」と口にした途端…(写真:iStock)
「離婚してほしい」と口にした途端… (写真:iStock)

「それまで私は心のどこかで、本当は不倫なんかなかったんだと思いたかったんですね。私が騒がないで、ほんの少しだけイヤな思いを我慢していれば、何もなかったように終わるんだ……と信じたかったんです」

 と、志穂さん。しかし、証拠の品と勇太さんの謝罪を前にすると、心の底から嫌悪感が湧いてきて、目の前が真っ暗になりました。

「志穂ちゃんの気持ちを聞かせてくれ。俺は何でもするから」

 と言われた瞬間、志穂さんの口から思いもかけなかった言葉が飛び出していました。

「離婚……離婚してほしい!!」

 初めて離婚という言葉を口にしてみると、夫が不倫をしているかも知れないとわかってからも、離婚を避けるために自分は我慢したり努力したりしてきたんだ、とわかりました。小さなほころびを日々直しながら、黙々と続けてきた編み物が、一気に解けていくような感覚……。ずっと努力を続けてきても、一度離婚という言葉を口にしてしまうと、もう元には戻れないと感じる人は多く、志穂さんがまさにそうでした。

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