空白の20年。旧友たちが歩んできた人生
翌日。
突然の誘い、しかも、平日のお昼であったが、詩織と美鈴は赤羽駅にやってきてくれた。
「突然ゴメン。お茶でもする?」
百恵の誘いに、ふたりは不服そうな表情で答える。
「赤羽に来て、お茶はないでしょう」
「昼飲みしようよ」
百恵は快くそれを受け入れた。乳がん疑惑があるのに。そんな自分になぜか安心してしまう。
美鈴が電車の中で調べたという、昼飲みできる若者向けの居酒屋に入り、ビールが来たところで美鈴が口火を切った。
「友達と飲み屋に入るなんて久しぶり。離婚してよかった」
美鈴は、子どもの高校卒業を機に長年不倫とモラハラに苦しめられていた夫と離婚したという。慰謝料をたくさんもらって、今は悠々自適の生活だとか。なんと赤羽に最近越して来たらしい。
「久々のひとり暮らしだから、最初にひとり暮らしした街に来たみたいな」
美鈴の一通り近況を聞いた後、次は詩織が口を開いた。
「今さ、親を介護していて」
介護に病気…話しやすい空気を作ってくれた?
詩織は、5年まえに会社を辞め、現在は在宅でライターの仕事をしながら介護をしているという。しかも、意外と近くの十条に住んでいるのだそうだ。
「別に嫌々じゃないよ。親とは仲がいいし、私も鬱と乳がんが一気にやってきた頃だったからね、親を理由にして会社から逃げちゃった」
詩織の病気の話題が出たところで、百恵は自分のターンが来たことを確信する。ふたりは、百恵に何かあったことを察し、話しやすい空気を作ってくれていたのだろう。
その優しさに乗じ、すぐさま、健康診断結果の話をする。察しのいい詩織は、すぐに百恵が欲しかった答えを与えてくれた。
「乳がん検診は、1割は要精密検査の診断をされるっていうから、そこまで深刻にならなくてもいいよ。でも、心配だろうから、私の通っていた病院紹介するよ」
「え、いいの?」
「名医がいるのよ。私も紹介で見てもらったの」
すると美鈴も先日、腰を痛めたということで整形外科の名医に通っているということを話しだした。
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