DV被害相談が急増中
警視庁発表の「配偶者からの暴力事案の概況」(2019年)によると、女性からのDV相談が7,471件(82.6パーセント)で、男性からは1,571件(17.4パーセント)。被害相談のおよそ6人に1人もが男性であるという驚くべき現状がここにあるのです。しかもこの件数は年々増加傾向にあるのです。
平成26年には181件と全体のわずか4.4%だった男性からの相談件数が4年で約4倍にもに増えたことは注目すべきことだと思います。凶暴な女性が増えたのかと考える人もいるでしょうけれど、近年、DVは身体的暴力だけでなく「言葉の暴力」「経済的圧迫」「性的強要」も適用されるようになっています。なので必ずしも女性からの殴る蹴るがあったわけではないでしょう。
深刻な身体以外の暴力
肉体的な暴力は、誰の目にも命の危険があることが見て取れるものですが、他の暴力についてはわかりやすいものではなく、また、肉体的暴力とその他の暴力が複合して起きることも少なくないため、DVの事態は複雑化しているとも言えます。言葉の暴力は、相手がひどい言葉を何度も投げるなど、相手の体ではなく心を傷つけます。
経済的圧迫は、相手の給料を全額取り上げ、お小遣いとして少ししか与えないなどのことを言います。性的強要は、その気がない相手に対して、無理やり性交に及ぶなどのことです。こうした行為も度が過ぎると暴力として認められるのです。
暴力をふるう女性もいる
実際男性側から聞くのは「ダメ人間と言われる」などの言葉の暴力と「お金を取り上げられる」という経済的圧迫が多いのです。とはいえ「彼女に殴られた」という男性もいるので、肉体的暴力を振るう女性もいます。また、女性の側からも「彼から殴られたので自分も殴り返してしまった」という相談を受けたことがあります。総じて言えるのは、DVをふるうのは男性だけではないということです。
そして女性からのDV件数が増加しているのと同様に、性犯罪でも女性の加害者が報道されるのを目にするようになっています。女性に痴漢されたと言う男性も存在しますし、内閣府による「男女間における暴力に関する調査」(2018年)によると、無理矢理性交させられた体験を持つ女性が7.8%で、男性が1.5%。実は男性も性暴力の被害者である事実が浮き彫りになりつつあるのです。
男性の被害が目立つのは執拗なつきまとい行為(ストーカーなど)です。女性の10.9%に対し男性は4.5%が被害を受けたことがあり、半数近くにまで及んでいます。確かに報道でも女性ストーカーが逮捕される事例は時々見かけます。男性芸能人の自宅に押し入る事件が何度か報道されています。彼は自分の恋人だと勘違いする女性ファンの暴走に男性タレントが恐怖する時代になっていることも無視できません。
なぜ女性からの暴力が増えている?
なぜ女性からのDVなどが増えているのか、その理由はひとくちでは言えないでしょう。けれど、男女同権社会となり、女性も男性並みに働くようになったことで、仕事でのストレスも男性並みに背負うようになったことが一因ではないかと私は思っています。また、10代以下の異性に対し、性的行為を強要するという事件も、男性から女性に対しては以前より起きていたことでした。
DVについては依存性や共依存性などと関連している場合があり、「もう殴りません」と誓うだけではおさまらない場合もあるのです。日本にも加害者のための更生プログラムがありますが、カウンセリングなどが何ヶ月に及ぶ場合もあり、一朝一夕で解決できるようなことではなさそうです。
DVや性犯罪は決して男性から女性へのものではなくなってきています。犯罪の性差がなくなりつつあるという現象は、DVだけにとどまらないことであるため、今後も気に留めておきたいところです。
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