よみがえる日までがんばる
日本ではいまも歌舞伎の舞台で大ガマが登場する演目が掛かり、そのひとつに「滝夜叉姫」があります。この滝夜叉姫というヒロインのモデルとなったのが、平安時代の関東の豪族で、乱を起こして命を落としその首は京都に晒されるも三日後関東に飛んで来たという伝説のある平将門、その三女の如蔵尼です。
如蔵尼は父の死後、会津の慧日寺(えにちじ)のかたわらに庵を結びますが、父の罪により一度は地獄に落とされます。しかし、地蔵菩薩の慈悲により蘇り、その後長生きしたと伝えられています。
この姫が、江戸期に入り戯作者(げさくしゃ)の山東京伝(さんとうきょうでん)の物語の中で、弟である平良門が筑波山での修行で身につけたガマの妖術により復讐の鬼、滝夜叉姫になります。悲劇的な史実をもとにしながらもここでガマと「よみがえる」がつながり、人はどん底の状態に落とされても必ず復活できると思えてきます。
関東に飛んで来た将門の首が落ちたところは、現在の東京・大手町とする説から、神田明神創建の場所に今もその首塚が祀られています。その板石塔婆のまわりには奉納されたカエルの置物がたくさん見られます。
プラス思考で福かえる
お守りに謳われていることも多いカエルの語呂合わせに「福かえる」があります。幸福になれますようにという願いですが、「福」に「かえる」がプラスされることで災厄にあっても再び幸福がやって来ますようにといった、まさに蛙の行動につながる「一陽来復(いちようらいふく)」(冬が終わって春が来ること)の意味合いも感じられます。
この言葉にふさわしい女性に三代将軍徳川家光の乳母だった春日局(かすがのつぼね)がいます。戦国時代から江戸初期に生き、江戸城の「大奥」の基礎をつくるなど能力を発揮した女性ですが、その人生、公私ともに心の休まる時はなかったのではないでしょうか。
この春日局が群馬県にある一之宮貫前神社(いちのみやぬきさきじんじゃ)に奉納した「白銅月宮鑑」という鏡があり、そこには前述した中国神話の女性嫦娥と、ウサギとヒキガエルが浮き彫りされています。嫦娥に自身の生きざまを重ねることがあったのかもしれません。その思いはわかりませんが、春日局の本名は斎藤福です。すべてポジティブに捉えると「福かえる」とはまさに春日局、どんなことがあっても強く生きる女性のひとりです。
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