塩とダシだけでうま味を引き出す
素材を生かし余計な手を加えない――和食の基本中の基本ですが、そうは言ってもつい余計なアレンジを加えたくなるのが素人たるゆえん。もちろん比べるのもおこがましいですが、越後の城下町・新発田で名店と知られる「登喜和鮨」3代目の小林さんは、その基本中の基本をかたくなに守る料理人です。
「どうぞ」とだけ言ってカウンター越しに差し出されたこの煮ガキ。ひと口食べて驚きました。アン肝のような濃厚なうま味。カキ特有の生臭さは一切なく、後味はさっと引いて潔い。香り華やかでキレのある純米吟醸酒に合います。
作り方を聞くと「塩でもんで余分な水分をとり、後は昆布ダシでコトコト煮るだけですよ」と事もなげ。しかし、もんだ塩を洗ったり、昆布ダシで煮る前に霜降りにしたり、流水で冷ましたりと、こまごまとした手間がかかります。
「そうそう、昆布ダシの温度は58~60度をキープ。鍋を火から外したりしてなるべく一定に保って下さい」
それでおいしくなるならやるしかない!?
【材料】
・生食用カキ 500グラム
※なるべく大きな粒を
・ダシ用昆布 20グラム程度
・水 800ミリリットル
・塩 30グラム
【レシピ】
(1)鍋に昆布と水を入れ火にかける。60度になったら弱火にし、最低30分火にかける。
(2)カキを水でよく洗い、ザルで水をよく切る。
(3)ボウルに移したカキにまんべんなく塩をかけてもみ、そのまま20分置いて、流水で洗う。
(4)沸かした湯でカキを霜降りし、流水で急冷。
(5)58~60度に保った昆布入りの鍋に霜降りしたカキを入れて煮る。約20分後、耳たぶくらいの硬さになったら完成。
本日のダンツマ達人…小林宏輔さん
▽小林宏輔(こばやし・こうすけ)
1979年、新潟県新発田市生まれ。東京の魚問屋が営む鮨店「魚真」で板前修業を積み、2010年に帰郷。17年のリニューアルを機に「登喜和鮨」3代目を襲名。
▽登喜和鮨
新潟県北部に位置する新発田市に昭和29年創業。飯豊連峰の山の幸と日本海の海の幸、それぞれの素材を引き出すことにこだわる。近ごろは県外からも多数来客。地酒も数多く揃える。新潟県新発田市中央町3―7―8。
(日刊ゲンダイ2019年11月26日付記事を再編集)
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