エッグドナー(卵子提供者)に興味を示すアラサー女子2人
エッグドナーとは、子どもがいない夫婦に卵子を提供する、卵子提供者。不妊治療の方法の1つで、代理出産とは異なり、卵子提供を受けた女性自身が妊娠・出産することを目的としています。妊娠できない女性自身が出産するため、戸籍には「実子」として登録されるそう。
第三者の女性として出産する代理出産ではなく、作中でエッグドナーを選択したのは、寺坂光恵さん演じる近藤純子と、川合空さん演じる矢野葵。純子は、将来結婚する気も子どもを産むつもりもない、もうすぐ30歳を迎える独身主義者。葵は25歳のレズビアン。同棲していた彼女と別れて、家を失ったばかり。従姉妹の2人は偶然、エッグドナー登録説明会で再会します。エッグドナーに登録したことを、純子の母親には内緒にする代わりに居候させてほしいという、葵の申し出を純子は断れずに、2人は純子の住むマンションで共同生活をスタートさせます。
見逃せない共感ポイントの数々
独身主義者とレズビアン。境遇に感情移入しづらい人がいるかもしれませんが、作品では監督と脚本を務めた川崎僚さんの手腕が光っていて、同性であれば「あるかも!?」や「わかる!」と思えるシーンが盛りだくさん。
たとえばレズビアン、葵の場合。葵は純子の家に転がり込んでからも、元カノからの電話が鳴りやみません。表情から察するに葵は、元カノへの思いを断ち切ろうとしていると同時に、復縁を迫られることを避けようとしています。
ところがいざ、再会してみると。元カノは家に置き忘れた葵の荷物を返したかっただけ。新たなパートナーもいたのです。元パートナーから連絡が来ると、「もしかして、まだ私のことが好き?」と思ってしまう感情は、「あるかも!?」ではないでしょうか。
結婚、孫の話を親がしなくなった…
あと3カ月で30歳になる純子は、独身主義者であることを親には秘密にしています。ある日、4人でのプチ同窓会に参加したときのこと。結婚願望はあり、婚活中の独身の江里佳に打ち明けるのです。
「親に、『結婚は?』『彼氏は?』『孫の顔はいつ見せてくれるの?』とすら言われなくなった」と。
厚生労働省の調査によると、令和元年(2019年)の平均初婚年齢は、男性が31.2歳。女性は29.6歳。女性は30歳前に結婚しているという結果ですが、これはあくまでも平均値。もうすぐ30歳を迎える女性や、30歳を迎えるときに独身だった女性は「わかる!」と感じていただけると思います。
「遺伝子上の母になりたい」
「エッグドナー」に話を戻しますと。純子と葵は、「結婚や出産をしなくても遺伝子上の母になりたい」と願い、登録します。作中では登録できるのは20~30歳でしたが、筆者が調べてみたところ、「提供する女性の年齢は28歳まで」「両親との血液型が一致」「容姿が重要視される」「IQテストも提供を受ける側の選択する要素」など、厳しい選択基準がずらりと並んでいました。卵子提供を希望する純子と葵のみならず、卵子提供を望むカップルも、学びの第一ステップとなる作品かもしれません。
純子と葵のどちらが「エッグドナー」に選ばれるかは、劇場で見届けてください。
出演:寺坂光恵/川合空/三坂知絵子/新津ちせ/湯舟すぴか/みやべほの/見里瑞穂/斉藤結女/荒木めぐみ/鈴木達也/生江美香穂/高木悠衣/森累珠/加藤桃子/すズきさだお/松井香保里/監督&脚本:川崎僚
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