「毒親育ちの会」の彼、ほろ酔いの抱擁から全てが始まった#1

蒼井凜花 官能作家・コラムニスト
更新日:2022-03-03 22:37
投稿日:2022-01-21 06:00

毒親に「放任」されてきた男性との出会い

大御所の助手になるもパワハラと暴力の日々(写真:iStock)
大御所の助手になるもパワハラと暴力の日々 (写真:iStock)

――おつらかったですね。

「はい……常に親の目、他人の目を気にして生きていました。ただ、社会人になって独り暮らしをするようになると、『親から離れるってこんなに自由なんだ』と、幸せになりましたよ。家事などの大変さも多かったですが、親の監視がないと、呼吸さえも楽になるというか……」

――そこで、今の彼と出会ったんですね。

「はい、会では参加者同士の自由歓談の時間を設けているのですが、最初に会った時から『背が高くて、ちょっと長めの髪がアーティストっぽくて素敵』と思っていたんです。さりげなく、近づくと、彼のほうから『よかったら、お話しします?』と声をかけてくれたんです。

 話をするとカメラマンの助手をするGさん(34歳・独身)でした。

 彼の場合は私の両親とは真逆でした。二歳上のお兄さんの成績がバツグンに良く、幼いころから常に比較されて育ったそうです。お兄さんが中高一貫の難関私立に合格した際は、両親は手放しで喜び、親戚中に自慢していたそうですよ。そんな優秀な兄ばかり可愛がり、両親はほとんどGさんと会話をしなかったそうです。

 たまに口をきくと、父は『まったくお前は誰の血を引いたんだか』と罵られたそうです。

 あまりにも実家の居心地が悪く、友人宅に泊まり歩くようになっても、両親は電話一本かけてこなかったそうで、放任ですね……。「毒親」と言っても、様々なタイプがあると感じました。

 そんなGさんは、有名医大を卒業して医師となった兄に反抗するように、アート系の専門学校に進み、カメラマンを目指したそうです。今はとある大御所カメラマンの助手をしているそうですが、パワハラや暴力は当たり前だそうで……。

 彼も私と同じように、人生や人間関係がうまくいかないのは親のせいだと感じて、参加したようです。

別れ際の突然の抱擁に…

「とても癒されたよ」(写真:iStock)
「とても癒されたよ」 (写真:iStock)

――続けてください。

「会が終わると、Gさんは私に『せっかくだから、このあと呑みにいこうか』と誘われて……近くのカウンターバーに行きました。

 会ではネガティブな話ばかりでしたが、バーではお気に入りの映画や音楽、旅行などの話に花が咲きましたね。彼は仕事柄、海外に行くことも多く、モルディブの海やイタリアのベネチアは最高に美しいとか、目を細めていましたね。

 Gさんは彫りの深い端正な顔立ちなのに、笑うと少年のような無防備さがあって、指が長くて綺麗で……かなりときめいちゃいました(笑)。 

「毒親の会」に行って良かったと、予想外のご縁に感謝しましたよ。

 3時間ほど話し込んだでしょうか、そろそろ帰ろうと会計をして店の外に出た時、Gさんは私の真正面に立って『今日はありがとう。C子ちゃんに会えてとても癒されたよ』とぎゅっと抱きしめてきたんです。

 えっと驚きましたが、彼の思いのほか逞しい胸板に顔を押しつけていましたね。

『また会える?』という問いかけに『うん……私も会いたい』と、彼の背中に両手を回していました。

 ドクドクと高鳴る鼓動が同化していくようで……すごく幸せだったんです。

 続きは次回

蒼井凜花
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官能作家・コラムニスト
CA、モデル、六本木のクラブママの経歴を持つ異色の官能作家。近著に「CA、モデル、六本木の高級クラブママを経た女流官能作家が教える、いつまでも魅力ある女性の秘密」(WAVE出版)、「女唇の伝言」(講談社文庫)。
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