西島秀俊“無双”の挑戦…同性愛者からピカ声までモノにする男

ボルドー太田 イケメンソムリエ
更新日:2022-03-27 11:21
投稿日:2022-03-27 06:00

BL役の“金字塔”!「あすなろ白書」で爪痕を残した男

「あすなろ白書」(フジテレビ)をご存知でしょうか? 1993年10月期の連ドラなので、かれこれ29年も前の作品ということになります。まだ生まれていなかったという人も多いかと……。

 柴門ふみの人気コミックが原作。平均視聴率27.0%、最高視聴率31.9%と令和の今から考えられないほどの高視聴率ドラマでした。藤井フミヤの「TRUE LOVE」が主題歌。いまでもイントロを聴いただけで、せつなくなってしまうほど入れ込んだドラマです。「東京ラブストーリー」といい、この頃のフジテレビ月9はやっぱり凄かったのですよ。なんというかキラキラ眩しかったです。

 石田ひかり(奇跡の50代・石田ゆり子の妹です)演じる女子大生なるみを中心に男女5人の友情と恋愛を描いたもので、その5人はというと、石田のほか、鈴木杏樹(あれ以来すっかり、見かけませんね)、筒井道隆(「ミステリと言う勿れ」の青砥巡査部長!)、木村拓哉(ご存知キムタク)、そして、もうひとり、西島秀俊というなんとも豪華なキャスティングでした。

 黒ブチメガネをかけた木村拓哉が石田ひかりを後ろから抱き締め、「俺じゃダメか?」と告白するシーンは、「あすなろ抱き」と言われ、街中に真似するカップルが激増。「壁ドン」「顎クイ」「頭ポンポン」……と女子の憧れシチュエーションのはしりといえるでしょう。

 なるみは掛居(筒井道隆)が好きで、取手(木村拓哉)はそんななるみを想い続けて……と片想いの矢があちこちに飛ぶせつなさ満開ドラマで、当時22歳の西島の役どころは、ポルシェを乗り回す女性たちにモテモテの御曹司・松岡です。

ドロドロ不倫から松田聖子の相手役まで

 ただのモテモテ役ではありません。そんなモテ男なのに、松岡は密かに掛居への想いを秘める同性愛者という設定。まだLGBTや性的マイノリティーも認知されていない時代に、腐女子が喜ぶBLドラマもどきを演じ、私たちにその尊さを教えてくれたのが西島なのです。

 のちに「きのう何食べた?」(テレビ東京)のシロさんになり、ケンジ(内野聖陽)と幸せそうに暮らす姿を見て、ようやく松岡が両想いになってよかった、と安堵したものです。

 このほか1993年は4本もの連ドラに出演しており、話題作「悪魔のKISS」(フジ)では深津絵里が働く出版社の同僚で、夫婦ともども新興宗教にハマっていて、深津を宗教に勧誘し、やがてドロドロ不倫になる不気味な役を演じていたかと思えば、ほかにも高橋由美子主演「お願いダーリン!」(フジ)や、松田聖子主演「わたしってブスだったの?」といったいわゆるアイドルドラマにも出演。人気も知名度も上がっていたのに、ある時、まったくテレビで見なくなったのでした。

「ドライブ・マイ・カー」で“世界のニシジマ”に…!

 そこからしばらくブランクがあり、映画に活躍の場を移した印象でしたが、「大奥 第一章」(フジ)の徳川家光役や、「アンフェア」(フジ)の瀬崎一郎役、「チーム・バチスタ」シリーズ(関テレ/フジ)のぶっきらぼうな医師・速水晃一役、「ストロベリーナイト」(フジ)の菊田和男役など、演じる役はみんな印象深くしかも、クセが強い。

「ダブルフェイス」「MOZU」(TBS/WOWOW)の刑事役で激しいアクションを見せたかと思えば、「流星ワゴン」(TBS)や朝ドラ「とと姉ちゃん」(NHK)のような人情ドラマでは泣かせる。綾瀬はるか演じる八重の兄・山本覚馬を演じた大河ドラマ「八重の桜」(NHK)では、鍛え抜かれた肉体美を披露。優しい顔の下に、あんな筋肉が隠されていたのかと女性ファンをざわつかせました。

「きのう何食べた?」や「シェフは名探偵」(テレ東)での料理をする姿にも見とれてしまいます。料理男子が増えたのも西島の影響か、と。

 かと思えば、昨年は実写ドラマ「サザエさん」のマスオ役や、映画「名探偵ピカチュウ」のピカチュウ役も。デビューから30年あまり。すでにベテラン俳優の域に入りつつも、未だ新しいことにチャレンジし続ける西島。しかも演じる役すべてをモノにしてしまうのが、西島の凄いところ。映画「ドライブ・マイ・カー」では世界が注目する俳優となりました。挑み続けるイケメン、それが西島秀俊です。

【西島秀俊(にしじま・ひでとし)】
☆1971年3月29日生まれ。チャレンジ精神旺盛なA型牡羊座
☆横浜国立大学中退、天から二物を与えられた男
☆直近の注目出演作は映画「シン・ウルトラマン」(5月13日公開予定)

ボルドー太田
記事一覧
イケメンソムリエ
毎クールすべてのテレビドラマをチェックする最強のドラマウォッチャー。が、その目的がイケメンにあることは誰も知らない。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


「虎に翼」語りは尾野真千子 NHKアナと俳優のナレーションの違いは?
 寅子(伊藤沙莉)がお見合いに苦戦する中、親友の花江(森田望智)は寅子の兄・直道(上川周作)との結婚準備を順調に進めてい...
桧山珠美 2024-04-05 15:14 エンタメ
「虎に翼」シン・朝ドラの予感!わずか1話、たった15分で心つかんだ描写
 昭和6年・東京。女学校に通う猪爪寅子(伊藤沙莉)は父・直言(岡部たかし)、母・はる(石田ゆり子)から次々とお見合いを勧...
桧山珠美 2024-04-01 22:28 エンタメ
僥倖!世界に挑む赤西仁ほど「サムライマック」のCM向きな俳優はいない
 マクドナルドのCMにイケメンあり!  そんな声をちらほら耳にするようになりました。たとえば4月2日から全国放送さ...
平野らTOBEがドーム公演大成功の一方、暗雲立ち込める旧ジャニの逆転は
 3月14日から17日にかけて、滝沢秀明氏創設のTOBE所属アーティストによる東京ドーム公演「to HEROes ~TO...
こじらぶ 2024-03-30 06:00 エンタメ
ブギウギ最終回、水を差すようでスンマセン! 残念すぎる4つの演出と描写
 スズ子(趣里)のさよならコンサートが始まる。客席には懐かしい多くの面々がかけつけている。茨田りつ子(菊地凛子)、愛子(...
桧山珠美 2024-03-30 11:41 エンタメ
スズ子引退会見、“天敵の文屋”鮫島の「シャッポを脱ぐ」演出を読む
 歌手・福来スズ子(趣里)の引退会見の当日。スズ子は結局、羽鳥善一(草彅剛)とは話ができないまま会見に臨むことになってし...
桧山珠美 2024-03-27 14:30 エンタメ
超鈍感力! 羽鳥の絶縁宣言を屁とも思わないスズ子とタケシは似た者同士
 歌手引退――。スズ子(趣里)はその決断を、愛子(このか)や大野(木野花)に伝えた。  羽鳥善一(草彅剛)に絶縁す...
桧山珠美 2024-03-26 15:40 エンタメ
「GTOリバイバル」注目の新人イケメンは?松嶋菜々子は本当に出るのか
 反町隆史主演「GTO」が26年ぶりに帰ってきます。反町演じる元ヤン教師・鬼塚英吉がさまざまな問題を解決する学園モノで、...
ドヤ顔のアユミとヘイヘイブギー歌唱シーン温存の理由がわかる回だった
 昭和31年、大みそか。第7回オールスター男女歌合戦当日。スズ子(趣里)は、楽しみに会場へと向かう。スズ子が楽屋で支度を...
桧山珠美 2024-03-22 14:30 エンタメ
最終回秒読み…スズ子はブレずにお人よし、NHKと沼袋勉の手腕いかに!?
 愛子(このか)は、翌日の体育の時間に足の早い転校生と競争することになっていた。しかし、勝てる見込みがなく、愛子は学校を...
桧山珠美 2024-03-21 16:07 エンタメ
和田勉が転生したら中村倫也に!? 強烈インパクトで霞んだ礼子娘の初登場
 東京ブギウギのヒットから9年、ブギブームも下火になってきつつある中、スズ子(趣里)や羽鳥善一(草彅剛)のブギは古いとい...
桧山珠美 2024-03-18 14:30 エンタメ
「光る君へ」主人公バージン喪失!大石静氏が描く平安エロ&バイオレンス
 NHK大河ドラマ「光る君へ」は、平安中期の貴族社会を舞台に、吉高由里子演じる主人公のまひろ(紫式部)の生涯を描くもので...
沢尻エリカ不死鳥の如く女優復帰!大衆は真似できぬ人生転落リアルショー
 2月25日、沢尻エリカの女優復帰作となった主演舞台『欲望という名の電車』が千秋楽を迎えました。  「『残念プロフ...
堺屋大地 2024-03-16 06:00 エンタメ
NHK大阪が誘拐未遂事件をぶち込んだのなぁぜなぁぜ? かつ丼コント?
 誘拐犯が捕まってから、愛子(このか)は3日間も学校を休んでいた。スズ子(趣里)は、学校に行くようにと言うが、愛子は友達...
桧山珠美 2024-03-15 14:30 エンタメ
“テレ朝ドラマ”常連・ホンモノの刑事よりも刑事な内藤剛志、降臨!
 大野(木野花)が受けた電話は、3万円払わなければ、愛子(このか)を誘拐するという脅しの電話だった。そして、警察には伝え...
桧山珠美 2024-03-13 14:30 エンタメ
りつ子スパークのラインダンス必見!ワクワクズキズキと笑顔が溢れる回
 羽鳥善一(草彅剛)作曲二千曲記念ビッグパーティーの日が近づいてくる。羽鳥はスズ子(趣里)たちに、パーティーで余興をして...
桧山珠美 2024-03-11 15:30 エンタメ