更新日:2022-06-12 16:38
投稿日:2022-05-27 06:00

これまでのあらすじ

 25年ぶりの同窓会で地元・北海道に帰省したE子さん(43歳主婦/子供アリ)。

 白金台に住む彼女は楚々とした和風美人で、医師の夫、そして中学生の娘と幸せに暮らす、まさに「シロガネーゼ」だ。

 そんなE子さんに、高校の同窓会の連絡が入った。片思いをしていた同級生の彼・K君も出席とのことで、参加を決意した。

 同窓会当日、かつてのクラスメイトと談笑しながらも、E子さんの視線は、ずっと憧れていた彼・K君(43歳農業/妻子アリ)を追うばかり。

 生徒会長、図書委員を兼任していた彼は、サッカー青年の一面もあり、昔と変わらず爽やかな笑顔と筋肉質な体躯が目立つ大人の男に成長していた。

 仲間と談笑中「もしかしてE子さん?」と声をかけてきたのはK君からだ。彼はE子さんの垢抜けた容姿にたいそう驚き、そして喜びを隠しきれない様子だった。

 というのも、高校時代のE子さんはボブヘアにメガネっ子の、いわゆる「地味子」。図書委員だったK君に逢いたいがために、せっせと図書室に通い詰めた過去がある内気な少女だった。

 大人になった今、予想外に2人の会話は弾み、一次会の後でE子さんは思いがけない誘いを受ける。

「よかったら2人だけで、母校の校舎を見に行かないか?」

 憧れのK君からの言葉に、E子さんはーー。

 気になる続きの前に、第1話はコチラからお読みいただけます。

車という密室にこみ上げる罪悪感

ーー憧れのK君からのドライブのお誘いがあった。その後をお聞かせください。

「はい、天にも昇る気持ちでした。すでに21時を過ぎていましたので、実家には二次会に出るから帰宅は遅くなると告げ、東京の家族にも連絡をしました。

 2人で駐車場に行くと、K君は黒のボックスカーのドアを開けて、『どうぞ』とニッコリ。私はドギマギしながらも『ありがとう』と乗り込みました。

 彼も運転席に乗り、ドアが閉まるともう密室です。

 それを思うと、わずかな罪悪感がこみ上げてきました。もし彼の奥さんが、夫が見知らぬ女性を車に乗せていると知ったら気分を害するでしょう。私の主人だって同じです。たとえ同窓会とはいえ、自分の妻が他の男性の車でドライブだなんてーー。

 そう思っていた時、車が発進しました。

 何も言えずにいた私に、K君は優しく『E子さん、急に黙っちゃったけれど、大丈夫? 校舎を見ようなんて誘って悪かったかな』と申し訳なさそうな表情を向けてきたんです。

 昔と変わらない爽やかな切れ長の瞳、日焼けした健康的な肌に否応なく惹かれます。そして何よりも優しい気遣いが嬉しかった。

 私は『大丈夫、誘ってくれて嬉しい』と返してしまいました。

 夫を裏切るつもりはありません。

「女」を無理やり封印していた

 ただ……長女を出産してから夫婦の営みは無くて……ズバリ言うとセックスレスなんです。だからと言って、浮気や不倫の経験はありません。

 時々、女性向けの性愛小説を読んで、体を火照らせることはありますが、自分の中にある『女』を、無理やり封印していたふしがあります。

 小説を読んで、体が疼くたび、『私はもう40過ぎのオバサンなのよ』『夫も娘もいるのよ』と自分に言い聞かせ、良妻賢母を装っていたのかもしれません。

 ただ、今夜は違いました。

 憧れていたK君の昔と変わらぬ精悍さを目の当たりにし、そして、夫とは違う野性味ある匂いに鼻腔が刺激されて……同窓会の会場では気づかなかった『オス』を感じたんです。

 同時に、ハンドルを握るK君の左手薬指の結婚指輪が駐車場のライトに反射して……それを見ると、無性に恋しさが募って……」

蒼井凜花
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官能作家・コラムニスト
CA、モデル、六本木のクラブママの経歴を持つ異色の官能作家。近著に「CA、モデル、六本木の高級クラブママを経た女流官能作家が教える、いつまでも魅力ある女性の秘密」(WAVE出版)、「女唇の伝言」(講談社文庫)。
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