二人きりの世界に閉じこめる悪魔のテク 美沙さんのケース#2

神田つばき 作家・コラムニスト
更新日:2020-01-11 07:08
投稿日:2019-04-21 06:00

本心を見失わせ、自尊心をなくさせる

何を書いたらいいのかわからない…何も書けない…(写真:iStock)
何を書いたらいいのかわからない…何も書けない… (写真:iStock)

早く楽になりたくて男が喜ぶ嘘を書くように

 翌朝、起きてきた健斗に美沙さんはあやまりました。職場の飲み会はくだらない話ばかりだった、もう二度と参加しない、と。

 本心ではなかったけれど、健斗の言うことを認めてしまうと楽になりました。

「怒鳴るとか、暴力とかはないんです。ただ、朝から晩まで私を否定して、徹底的に見くだすだけ。私が逆らわなければ平和でした」

 健斗の顔色を見ることが日々の目的になってしまっていることの異常さに、美沙さんは気づいていませんでした。

「会社の人たちとは仕事でつながっている。でも健斗とは心でつながっている。だから健斗との関係のほうを大切にするのは当然だ、と思いました」

 その後も何かにつけて、寝ないで始末書や反省文を書くことを求められます。

「もともと悪いことをしたわけではないので、何を書いたらいいかわからないんです。それがつらくて……。眠っている健斗の脇で、パソコンを前に座っているけど、何も書けない。眠気に負けて、『健斗さんにかまってもらいたくて、わざと怒らせました』と嘘を書くようになりました」

 次回、「一本ずつ断ち切られた“人間関係の枝” 美沙さんのケース#3」に続きます。


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神田つばき
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作家・コラムニスト
離婚と子宮ガンをきっかけに“目がさめて”、女性に生まれたことの愉しみを探そうと緊縛写真のモデルとライターに。私小説「ゲスママ」、女性の悩みや疑問を解き明かすコラム「性に纏わるあれこれ」
イベント「東京女子エロ画祭」「親であること、毒になること」などの企画も。X

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