ハッシュタグは“いいね”を超える? 承認欲求の先にあるもの

内藤みか 作家
更新日:2019-05-20 06:17
投稿日:2019-05-20 06:05
 SNSで昨年あたりから、ハッシュタグの新しい使いかたに脚光が集まりつつあります。ハッシュタグとは冒頭に「#」をつけた言葉。今までは単なる検索キーとしての使われかたをされることが多かったのですが、次第にハッシュタグそのものがムーブメントとしてのパワーを持ち始めているのです。

検索や共有としてのハッシュタグ

 そもそもハッシュタグとは何でしょうか。それは検索するためのキーワードのようなものです。共通のハッシュタグを投稿すれば、それに関する投稿を最新順に見ることができます。たとえば #オリンピック というタグがあり、そこをクリックすると、オリンピックに関する投稿の一覧が表示されるのです。

 また、情報の共有のためにも使われてきました。何かのイベントやサークルでの投稿なども、合言葉のように共通のハッシュタグを付けて投稿すれば、投稿した人からのイベントでの画像や現状などを一気に読むことができます。ハッシュタグが付いていると、画像や情報を共有しやすくなるので、便利なのです。

フリマサイトやひとりごとでも

 フリマサイトでもハッシュタグを使えるサイトがあります。ブランド名をタグ付けしておけば、そのブランド好きの人が検索し、目に留めてくれて、売れやすくなるのです。フリマサイトでタグ慣れした人は、SNS上でもハッシュタグ検索を自然とするようになりました。たとえば好きなアイドルの名前でタグ検索すれば、最新情報を得やすいので助かるのです。

 また、数年前あたりから、ハッシュタグを連続して投稿し、ひとりごとのように使う人たちが現れました。たとえば#来週卒業式 #徹夜明けで激ねむ #ステーキ食べたい などというようにです。自分の心情などをハッシュタグにしても、検索の役には立ちません。それでもなぜこのようなことをすると、前に#が付く言葉が新鮮でオシャレに感じたかららしいのです。「そのほうが言葉がふんわりした印象になり、可愛く見える」と言う人もいました。

#METOOが大きなムーブメントに

 このハッシュタグの使いかたを大きく変えたのは、2017年に作られたセクハラを告発するタグ #METOO でした。これはアメリカの女優であるアリッサ・ミラノさんが呼びかけたもので、これに賛同する人たちが「私も性的被害に遭った」という意味で #METOO を付けて告発し始めたのです。これは世界的な動きになり、1週間で85カ国から170万ものツイートが集まったそうです。日本からもこのタグを使う人が大勢出ました。

 この #METOO は、単なる検索用のタグに留まりませんでした。大きなムーブメントとなるほどの強いメッセージ性があったのです。いわば性的告発をする時のキャッチフレーズのようなものになったのです。乳がん撲滅のために人々が一斉にピンク色のリボンを付けるピンクリボン運動と似たようなイメージかもしれません。セクハラ被害を告発する女性は、このタグを付けることで「被害に遭っているのは自分ひとりではない」と励まされたのだと思います。

承認欲求のその先へ

 その後も訴えをハッシュタグ化することが相次いでいます。たとえば最近の日本ですと、パンプスでの出勤強要に異を唱える #KuToo(苦痛)や、子どもを日々守っている保育士さんに対しての #保育士さんありがとう などが話題になりました。広めたいことをハッシュタグという形で呼びかけ、賛同者がそのタグを付けて投稿する。この動きは、デジタルの世界でのリボン運動となりつつあるのかもしれません。

 今まで、SNSでは「いいね」を多く集める投稿が話題になってきました。けれど今後はハッシュタグにどれだけの賛同を集めたかが話題になるかもしれません。ただ「いいね」するだけではなかなか広がらないことも、タグを皆が共有することで拡散しやすくなり、社会を動かすパワーにまでなるのだから、今後も注目したいところです。

 小さな投稿が集まり大きなうねりを生む最近のハッシュタグは、承認欲求を超えた新しいSNS活用です。人々は自分の投稿にだけいいねを得るだけでは満足しなくなり、今の社会で疑問に思っているところを変えたい、と考えるようになりつつあるのかもしれません。ハッシュタグのムーブメントは、今後もしばらく続くのではないでしょうか。

内藤みか
記事一覧
作家
著書80冊以上。大学時代に作家デビューし、一貫して年下男性との恋愛小説を書き綴る。ケータイ小説でも話題に。近年は電子媒体を中心に活動。著書に「あなたに抱かれたいだけなのに」など。イケメン評論家として、ホストや出張ホストなどにも詳しい。
XInstagram

ライフスタイル 新着一覧


500mlペットボトルは花器になる!マム(菊)をもっと身近に楽しむ方法
 我が花屋がございます神奈川。昼間は半袖、朝晩には上着を着る寒暖差が激しい陽気が長く一方で、野辺に咲く菊の花の美しい季節...
上昇志向ママ友「揚げ、汁、ポテサラ。あと3品頑張る!」止められねぇ
 上昇志向の人を見ていると、そのバイタリティーに感心してしまいますよね!  自分の成長や出世、より良くするために...
30代40代でも実践で変われます! なぜか好かれる人に共通する特徴9つ
 あなたの周りに、なぜか好かれる人はいますか? いつも周りに人が集まってきて、みんなに愛される……、できればそんな30代...
スッピンよりも「メイクした顔」を褒められたほうがうれしい
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
コクハク専属ライバー「コクハクリーダーズ第1期生」が決まりました!!
 世知辛い現代社会を生きる女性のためのwebマガジン「コクハク」。このたびは「コクハク」のメディア制作に協力してくださる...
タイムスリップしてきた? 驚くほど時代錯誤な上司の特徴5つと対処法
 職場に嫌な上司がいると、仕事がやりにくいですよね。理不尽なことを言う時代錯誤な上司にストレスを抱えている人も多いのでは...
夫婦インフルで「詰んだ…」それでも子供2人は感染回避!何が決め手に?
 インフルエンザが猛威をふるっています。我が家では先月、夫が会社でもらってきたインフルに私も感染して“夫婦でインフル”に...
「撫でてから通るにゃ」坂道の“たまたま”とありがたいお導き
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
自分の足音を聴きながら歩く帰り道 初めての海外旅行を懐う
 日が落ちるのがすっかり早くなって、自分の足音を聴きながら歩く帰り道。  初めて海外に行ったとき、周りの会話がまっ...
台風の名前、日本でも女性の名が採用されていたら「和子」?
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
誤配送やんけ! Uber Eatsを頼んだら、赤の他人のモスバーガーが届いた
 みなさんはウーバーイーツをどのぐらい使っていますか? 筆者はウーバーのヘビーユーザーなのですが、誤配送を初めて体験しま...
「婚活始めたら?」ハイ、余計なお世話! 心の中でウザ認定したLINE3選
 相手は親切心でしてくれているかもしれないけれど、「余計なお世話だな」と感じることってありますよね。いいや、親切どころか...
ありがとうはNG? 年長者との会話では注意すべき2つの言葉
 誰しもエレベーターの開ボタンを押して待つ瞬間って、ありますよね。みなさんなら、乗ってきた人に「ありがとう」と「すみませ...
やっぱり落ち着かない? 空を覆う壁に息苦しさを感じた瞬間
 ふと違和感を感じて見上げると、高い建物に覆われて空が見えなかった。  人間も生き物だからか、空がない空間は息苦し...
【キャンドゥ】110円の可能性ってやつは!驚きの多機能キッチン用品3選
 口に入るものだからとキッチン用品はなるべく評判の高いブランドものを購入して、長く愛用したいとこだわりを持って選んできま...
私の仕事量、見えてます?上司の「無茶ぶり」から身を守る5つの対策
 上司からの突然の無茶ぶり、あなたは我慢して引き受けますか? 「この状況で、どうしてそんなことが言えるの〜?」とストレス...