がん専門病院への転院 “ダム”決壊で真っ先に浮かんだ顔は…

コクリコ 編集者
更新日:2019-09-10 09:53
投稿日:2019-05-28 06:00

「お好きなところをご自身で調べてください」

「今朝の病院の処置がよかったみたいで、とりあえず大丈夫だと思いますけど、いつまた出血するか分からないですね。もし心配なら今すぐに本院へ入院していただけますが?」

 本院。それはいま私が住んでいるところから電車で2時間以上かかるところ。

「手術は本院でするにしても、たとえば、抗がん剤とか放射線はこちらのサテライト院でできないんですか?」

 そうと聞くと、「すべて本院なんです」との回答。

 なんということでしょう。抗がん剤治療を行うのかはこの時点では不明でしたが、もし行う場合、体調のすぐれない中で2時間以上もかけて通えるの? 到底、ムリ。

「その場合、たとえば抗がん剤だけ別の病院でできないんですか?」

「できません」

「じゃあどうしたらいいですか?」


「そうなると病院を代わっていただくことになりますね。お好きなところをご自身で調べて行ってください」

 ご自身で? 今朝大量出血して救急車に乗った私に、ご自身で……。

 突き放されたような気がして、私はもう死んじゃうのかもしれない、と涙があふれ出ます。“ダム”は決壊しました。

「自分でって、今自分のがんがどんな状態かも分からないのに。どうしたらいいんですか!」

 ずっと冷静にやりとりをしてましたが、もうダメです。

 むせび泣きながら先生に訴えます。

 先生はなにも言いません。

 ただ嗚咽する私を静かに見つめていたのではないでしょうか。

「S病院、A病院、C病院。この中で通えない病院はありますか?」

 ふと先生が言いました。どれもがん治療で有名な病院です。

「ないです、みんな近いです」

「今から受け入れができるか、電話で確認します。30分ほど待合室で待っていてください!」

 診察をストップし、先生が電話をかけてくださるというのです。

(あとから分かったことなのですが、がん宣告した先生はこの病院の幹部的な方で、なにがなんでも本院で治療を受けさせようとしていたんですね。ところが、この日の先生は病院の方針にじつはちょっとだけ異論があったのではないかなと思います。転院したのちに、私の執刀医にデータを自ら届けに行ってくださったり、手術前の私に電話をくださったり、じつはいい先生でした)

 私はといえば――。まわりの患者さんを不安にさせるから待合室では絶対に泣かないと決めていて、これまでもずっと泣かなかったのですが、この日は恐怖、不安、怒りなどすべての感情を抑え切れず、声を上げて泣いてしまいました。

コクリコ
記事一覧
編集者
実用書の編集者(社畜)。アラフォー未婚のがんサバイバー2年生(進級しました!)。2018年、子宮頸がんにて広汎子宮全摘出術を受ける。現在ホルモン補充療法をしながら経過観察中。SNSをパトロールするのが趣味。“Twitter探偵”とも呼ばれる。でも幸せになりたい。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


夫のスマホ依存が止まらない! あるある過ぎてマジ泣ける…改善方法は?
 ガラケーがスマホになりSNS社会になった現代、多くの妻を悩ませているのが夫のスマホ依存。スマホを離さず、仕事以外の時間...
「もしや旦那無職?」って聞いてくるか!? 自称サバサバ女のデリカシーゼロなLINE3選
 竹を割ったような性格の人を「サバサバしている」と表現することがありますが、なかには「自称サバサバ女」と名乗り、自分の短...
令和ロマンのネタ“最強の苗字”説は本当?全国のワタナベさん達の苦悩…テストで字画削減のために『渡辺』等
『M-1グランプリ』(ABC・テレビ朝日系)で前人未到の2連覇という快挙を成し遂げた令和ロマン。ファーストラウンドでは昨...
性格が悪い人の見抜き方4連発。眉間のシワは加齢のせいだけじゃない
 性格の悪い人との付き合いで、悩み、苦労する人はたくさんいます。「もし出会った時にこんな性格だとわかっていたら…」と後悔...
これは友情?それともBL? たわわ男子の“たまたま”にイケナイ妄想が止まらない
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
飲み会キャンセル界隈でまわるカモ。LINEで乗り切る!? 飲み会の面白い断り方3選
 会社の同僚や友人を飲み会に誘った時、仕事の予定や金欠、体調不良を理由に断る人は多いですよね。ただ、なかにはセンスを感じ...
正月の門松に「松」は絶対必要? 住職の言葉にヒントが…歳神様を招く際に本当に欠かせないもの
 元旦から大きな災害に見舞われた2024年、当たり前の日常や生活に大きな変化が起きてしまった方々が、少しでも心穏やかな年...
Happy Merry Christmas! すいません、2024年最後のポンコツ商店会は思いっきり愚痴!!
 本コラムは、地元の“幽霊商店会”から「相談がある」と言われ、再始動の先導役を担う会長職を拝命することになったバツイチ女...
更年期あるあるの「めまいよ、止まれ」自宅で単身コーヒーカップ状態、耳鼻科医は“夜のある習性”を指摘した
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まっ...
「もっと頑張れるはず!」は“凶器”だよ…心がまいっている時に届くと嫌なLINE3選
 心がまいっている時は、ちょっとした言葉にも敏感になるものです。相手に悪気がないとわかっていても、たった一言で追い詰めら...
女性のセルフプレジャーはなぜ浸透しない? パートナーとの性交渉とは別物だと考える理由
 セックスレスやセルフプレジャー、夫婦の在り方をテーマにブログやコラムを執筆している豆木メイです。 「セルフプレジャ...
結局「嘘も方便」なのよ…サンタクロースの正体を知った子どもの末路
 クリスマスイブですね。みなさんは、サンタクロースを何歳まで信じていましたか?  筆者は保育園の年中さんでサンタクロ...
すべてが完璧! 至高“たまたま”のベストアングルは譲れない
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
【ルポ】顔出し告白!ギャラ飲みで稼いだお金は「テニミュ」の推し活にぶっ込む26歳キラキラ女子
 経営者や著名人、人気のインフルエンサーも利用する「ギャラ飲み」なるサービスって知っていますか? 東京都内のみならず、全...
40代、あちこち不調が…老いを痛感した9つの瞬間、頭の感覚と体が連動しない
 40代になって、一気に体の不調が増えた人は多いはず。見た目が若くても、やはり加齢による体の変化はごまかせません。今回は...
冬の色の街で
 生ビールの文字が呼んでいる。  まだ早いかな?  もういいか。