愛娘・園子の早すぎる死、滑稽噺「寿限無」に込められた思い

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2023-08-04 16:05
投稿日:2023-08-04 16:05

NHK朝ドラ「らんまん」~第18週「ヒメスミレ」#90

 空が青く、ヒメスミレが咲く季節に天国へと旅立った園子。悲しみに暮れる万太郎(神木隆之介)と寿恵子(浜辺美波)のもとに、母・マツ(牧瀬里穂)が駆けつけた。

 一方、峰屋では、分家三人衆の豊治(菅原大吉)、伸治(坂口涼太郎)、紀平(清水伸)がやってきて、綾(佐久間由衣)と竹雄(志尊淳)にねぎらいの言葉をかけた。

 食欲のない寿恵子のため、マツが筍ごはんを作った。お腹の子のためにも栄養をつけなくては、努めていつものようにふるまう長屋の人たち。

 そこに万太郎の姿はなく、喧噪のなか、ひとり部屋に籠り、ヒメスミレの絵を描きつづけた。園ちゃんの花――2人は万太郎の描いたヒメスミレの絵を焚き上げて、天国の園子の幸せを祈った。

【本日のツボ】

「ねえ師匠、『寿限無』して」(長屋の倉木の子ども、健作の台詞)

 ※※以下、ネタバレあります※※

 長屋の住人のひとり、噺家の牛久亭久兵衛(住田隆)。これまでさしたる活躍はありませんでしたが、ここにきて噺家である意味がようやくわかりました。

 今週はじめ、大学出禁を言い渡された万太郎が長屋に戻ってくると、師匠が子どもたち相手に「寿限無」のさわりを喋っていました。

 そして、本日、またもや倉木の子ども・健作が『寿限無』をおねだり。ご存知、『寿限無』は生まれた子どもがすくすくと健康に育って欲しいと、子どもの幸せを願って、縁起のいいものを全部繋げて名前にする、という子を思う親心の可笑しみを描いた滑稽噺です。

 わずか2歳で亡くなった園子を思う親心が痛いほど伝わってきました。どんなに悲しくても日常は続く。長屋の人たちに救われました。

【おまけのツボ】

分家三人衆 菅原大吉

 今週は辛い展開が続きましたが、峰屋を守り続けた綾と竹雄に最後にはねぎらいの言葉をかけた分家三人衆の優しさに触れてほっとしました。

 伸治の「竹雄のくせに~」、いつかまた笑顔で聞ける日は来るでしょうか。

 ところで、豊治を演じる菅原大吉は、現在、「シッコウ!」では最年長の執行官間々田稔役を、「この素晴らしき世界」では芸能事務所の桐山専務を演じています。

妻はピンクの電話のみやちゃん

 いまや、ドラマに欠かせない名脇役ですね。妻はピンクの電話のみやちゃんこと竹内都子。今年9月には、2人芝居「夫婦印プロデュース『満月~平成親馬鹿物語(改訂版)』」をやります。

 結婚当初は“格差婚”などと報じられてもいましたが、みやちゃんの見る目が確かだったことが証明されました。舞台も楽しみです。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。読売新聞「アンテナ」、放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


“お騒がせ”青井実アナが心機一転、なにわ男子の道枝駿佑と似てるって⁉
 世の中の人がNHKに持つイメージといいますと、「真面目」「お堅い」「地味」といったところでしょうか。  そんな中...
逃げ恥の百合ちゃん役が“頭のいい女は頭の悪いふりをするしかない”発言
 穂高(小林薫)に出くわしたことで女子部への出願が母・はる(石田ゆり子)にばれてしまった寅子(伊藤沙莉)。  娘に...
桧山珠美 2024-04-05 15:30 エンタメ
「虎に翼」語りは尾野真千子 NHKアナと俳優のナレーションの違いは?
 寅子(伊藤沙莉)がお見合いに苦戦する中、親友の花江(森田望智)は寅子の兄・直道(上川周作)との結婚準備を順調に進めてい...
桧山珠美 2024-04-05 15:14 エンタメ
「虎に翼」シン・朝ドラの予感!わずか1話、たった15分で心つかんだ描写
 昭和6年・東京。女学校に通う猪爪寅子(伊藤沙莉)は父・直言(岡部たかし)、母・はる(石田ゆり子)から次々とお見合いを勧...
桧山珠美 2024-04-01 22:28 エンタメ
僥倖!世界に挑む赤西仁ほど「サムライマック」のCM向きな俳優はいない
 マクドナルドのCMにイケメンあり!  そんな声をちらほら耳にするようになりました。たとえば4月2日から全国放送さ...
平野らTOBEがドーム公演大成功の一方、暗雲立ち込める旧ジャニの逆転は
 3月14日から17日にかけて、滝沢秀明氏創設のTOBE所属アーティストによる東京ドーム公演「to HEROes ~TO...
こじらぶ 2024-03-30 06:00 エンタメ
ブギウギ最終回、水を差すようでスンマセン! 残念すぎる4つの演出と描写
 スズ子(趣里)のさよならコンサートが始まる。客席には懐かしい多くの面々がかけつけている。茨田りつ子(菊地凛子)、愛子(...
桧山珠美 2024-03-30 11:41 エンタメ
スズ子引退会見、“天敵の文屋”鮫島の「シャッポを脱ぐ」演出を読む
 歌手・福来スズ子(趣里)の引退会見の当日。スズ子は結局、羽鳥善一(草彅剛)とは話ができないまま会見に臨むことになってし...
桧山珠美 2024-03-27 14:30 エンタメ
超鈍感力! 羽鳥の絶縁宣言を屁とも思わないスズ子とタケシは似た者同士
 歌手引退――。スズ子(趣里)はその決断を、愛子(このか)や大野(木野花)に伝えた。  羽鳥善一(草彅剛)に絶縁す...
桧山珠美 2024-03-26 15:40 エンタメ
「GTOリバイバル」注目の新人イケメンは?松嶋菜々子は本当に出るのか
 反町隆史主演「GTO」が26年ぶりに帰ってきます。反町演じる元ヤン教師・鬼塚英吉がさまざまな問題を解決する学園モノで、...
ドヤ顔のアユミとヘイヘイブギー歌唱シーン温存の理由がわかる回だった
 昭和31年、大みそか。第7回オールスター男女歌合戦当日。スズ子(趣里)は、楽しみに会場へと向かう。スズ子が楽屋で支度を...
桧山珠美 2024-03-22 14:30 エンタメ
最終回秒読み…スズ子はブレずにお人よし、NHKと沼袋勉の手腕いかに!?
 愛子(このか)は、翌日の体育の時間に足の早い転校生と競争することになっていた。しかし、勝てる見込みがなく、愛子は学校を...
桧山珠美 2024-03-21 16:07 エンタメ
和田勉が転生したら中村倫也に!? 強烈インパクトで霞んだ礼子娘の初登場
 東京ブギウギのヒットから9年、ブギブームも下火になってきつつある中、スズ子(趣里)や羽鳥善一(草彅剛)のブギは古いとい...
桧山珠美 2024-03-18 14:30 エンタメ
「光る君へ」主人公バージン喪失!大石静氏が描く平安エロ&バイオレンス
 NHK大河ドラマ「光る君へ」は、平安中期の貴族社会を舞台に、吉高由里子演じる主人公のまひろ(紫式部)の生涯を描くもので...
沢尻エリカ不死鳥の如く女優復帰!大衆は真似できぬ人生転落リアルショー
 2月25日、沢尻エリカの女優復帰作となった主演舞台『欲望という名の電車』が千秋楽を迎えました。  「『残念プロフ...
堺屋大地 2024-03-16 06:00 エンタメ
NHK大阪が誘拐未遂事件をぶち込んだのなぁぜなぁぜ? かつ丼コント?
 誘拐犯が捕まってから、愛子(このか)は3日間も学校を休んでいた。スズ子(趣里)は、学校に行くようにと言うが、愛子は友達...
桧山珠美 2024-03-15 14:30 エンタメ