認知症の介護って辛い? 介護士が教えるリアルな現実とは

東城ゆず ライター・エディター
更新日:2019-07-09 14:26
投稿日:2019-07-03 06:00

認知症でもその人らしい人生を送るのは可能

 連日、高齢者ドライバーの悲惨な事故が後を絶ちません。高齢者の身体能力低下に起因する事故もあれば、認知症が原因となっているケースもあります。

 こう聞いてしまうと、認知症はとても怖い病であるというイメージを多くの人が抱いてしまいます。しかし介護士の筆者は、それはとても残念なことだと思っています。

 認知症は付き合い方のコツさえつかめば、最期までその人らしい人生を送ることも可能です。多くの人がこのことを理解していないため、介護者や認知症の人が生きづらい世の中になる、という負のループに陥っています。

 認知症と診断された時、つい抱いてしまうネガティブなイメージの多くは、「一人歩きをしすぎているイメージ」です。認知症のリアルを知っておくことは、超高齢化社会を生きる私たちに必要なことだと思います。

認知症の介護問題で間違って解釈されていること

 認知症と聞くと、ついネガティブな想像ばかりが膨らみます。世間がイメージする認知症で、間違って解釈されていると思われるポイントを、問題別に解説しましょう。

治らない病気ではあるが困った病ではない

 もし自分の親が認知症と言われたら、どんな気持ちになりますか? 人によっては大きく落ち込みますよね。介護の現実を目の当たりにして、「仕事、どうしよう」「私、まだ子育て中だよ……」と不安になるかもしれません。

 断言できるのは、認知症は治らない病であること。ただ、「病の進行を遅らせることはできる」のです。もの忘れが激しくて生活ができないレベルになるには、相当の時間がかかります。

 進行していく病ですが、その人が寿命を全うするまで投薬を継続することによって、年相応の物忘れ程度に病状を食い止めることができる可能性もあります。

 薬は服薬しなければなりませんが、認知症での困りごとを減らすことができれば、なんら普通の人と変わりません。認知症の診断がついたからといって、そこからめまぐるしいスピードで家族のことが認識できなくなったり、寝たきりになるわけではないのです。

すべての人が寝たきりになるわけではない

 多くのメディアは、認知症になった時の最悪な状況を伝えがちです。しかし、認知症と診断されていても、近所に買い物に行く人も最期までトイレに自力で行く人もいます。こればかりは個々人で違ってきます。

 だからこそ、認知症のステレオタイプのイメージに当てはめてしまうことは、一番やってはいけないことです。

「認知症なんだから……」と家族が必要以上に過保護になることで、本人に現実を知らせてしまい、結果、ふさぎ込みがちな性格にしてしまうこともあります。

 すべての人が「大変だ」と言われているような介護状況になるわけではないのです。場合によっては、認知症ではなく脳梗塞で麻痺が残り、寝たきりになることだってあり得ます。

 “認知症”というワードを意識しすぎるのは良くないことでしょう。

認知症の介護が辛い時の2つの心得とは

 認知症の介護が辛いと感じた時には、現状を振り返ってみましょう。認知症の介護が辛い時に、見直すべき2つのポイントを紹介します。

協力者や意見は多いほうがいい

 大前提ですが、協力者や意見をくれる人は多いほうがいいでしょう。多くのご家族が、介護士の筆者に「いつもありがとうございます」「大変なのに」と言ってくださいます。しかし、私たち介護士は交代で、家族よりも多い人数で介護をしています。

 場合によっては、認知症の人同士で仲良くなりコミュニティーを作っている場合もあります。認知症に関わる人は、できるだけ多いに越したことはありません。家族の協力が得られない時は、行政や介護サービスを利用するなどして、多くの協力を仰ぎましょう。

 話を聞いてくれたり、共感してくれる人がいるだけで、介護者も気分が軽くなることもあります。また、認知症を患っている本人にも友達や知人が増えることは単純にいいことですし、認知症にいい刺激をもたらしてくれるでしょう。

与薬することは悪ではない

 薬というと悪いイメージが今でも根強く残っていますよね。たしかに、副作用については考える必要もあるでしょう。しかし、与薬することは悪でありません。必要以上の投与は判断力や身体能力の低下を招きますが、医師と相談した上での投薬に罪悪感を感じる必要はないのです。

 介護にあたる人の身体的、精神的な不安を考慮の上で、投薬をするのが医師の仕事でもあります。

「夜寝てくれない」「暴言を吐くようになった」など、無視できないことに関しては、病気なのですからきちんと医師に伝えましょう。病で自分らしさが保てない上に、自分の行動で家族から嫌われたり疎ましく思われてしまうことの方が、認知症の本人にとっては辛いことです。

 笑顔を保てる関係性を模索し続ける前向きな気持ちが大事になります。

認知症の介護は上手に付き合えば楽しい

 筆者は今でも、認知症の人と交わした会話やどこかに出かけた経験が、楽しい思い出として残っています。親や知人が「認知症」と診断されたその日から、どこか本人を特別視してしまう人も多いでしょう。

 現代では多くの人が認知症、またはその予備軍とされています。認知症の人と身構えずに付き合うことは、これからの日本の課題になってきます。

 どうしても、インパクトの強いエピソードや“不治の病”といった事実にとらわれがちですが、認知症の人と共存する社会は、私たち健常者にとっても生きやすい社会になることを意味すると筆者は思うのです。

東城ゆず
記事一覧
ライター・エディター
1994年生まれ。11歳の頃からブログを運営。ライターやエディターとして、女性誌メディアや地元新聞のコラム枠まで幅広く活躍中。恋愛やママ友問題、介護士であった経験からリアルな介護問題まで幅広い知見がある。年子兄弟を連れ離婚の経験があり、現在は再婚に至る。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


「そっちに行っちゃダメ!」をなくす廊下のない保育園の魅力
 保育園の現場では、「廊下に出ちゃダメよ!」とスタッフが子どもに声をかけているところをよく見ます。しかし、すんなり戻って...
急ぎ足の隙間から…チラリズム“にゃんたま”は魅力たっぷり
 「にゃんたま」に、ひたすらロックオン! 猫フェチカメラマンの芳澤です。  正々堂々、見せつけてくれるにゃんたまω...
おひとりさま老後には備えが大切 今から意識すべき2つのこと
 近ごろのニュースを見ていると、年金の支給も思わしくないようです。超高齢化社会に向かっているというのに、日本の未来が不安...
あれもこれも試した! がん治療に役立つ「情報収集」虎の巻
 私は42歳で子宮頸部腺がんステージ1Bを宣告された未婚女性、がんサバイバー1年生です。がん告知はひとりで受けました。誰...
汚れた毛並みは男の勲章 超貴重なワイルド三毛“にゃんたま”
 よ~く見てください。  恋のバトル真っ最中。にゃんたま君が最も忙しい季節に、少しカラダが汚れた三毛猫(柄が薄いタ...
部屋干しでもすぐ乾く!生乾きの臭いをさせない洗濯方法
 雨の多い梅雨時期には洗濯物が溜まりがち。重い腰を上げて部屋干しをしたのに、洗濯物から生乾きの臭いがしてうんざりしてしま...
花の蕾が秘めるエネルギー 恋愛運UPには暖色系を北に飾って
 これから日本も夏本番。  ここ数年、夏が来るたび思うのですが、ワタクシが中学生の頃になんだか必死に覚えた「ケッペ...
彼の家で“私の存在”を知らしめる神グッズは「洗剤」だった
 大好きな彼の自宅に、私物を置いて、他の女性へ“けん制”をしたいですか? モテる彼と付き合っている女性ほど、そんな心理に...
心が通じたかな? 肉球も一緒に披露してくれた“にゃんたま”
 にゃんたまωを見せてください!  いいよ~! オッケーにゃ~ん!  …と、なかなかすぐにいきませんが、どん...
京都のホストクラブにジャニ系よりエグザイル系が多い不思議
 ホストクラブといえば、髪を綺麗にセットした綺麗なお兄さんが女の人とお酒を飲んでくれる場所。最近はいろいろなタイプのホス...
女性の夏冷え対策はクーラーから!今年こそ冷えない体作りを
 猛暑が続く近年、熱中症対策としてクーラーをかけるのはもはや当たり前ですよね。でも、屋内ではどこもかしこもクーラーが効い...
さよなら子宮! 妊娠云々ではなく死ぬか生きるかを選択する
 私は42歳で子宮頸部腺がんステージ1Bを宣告された未婚女性、がんサバイバー1年生です。がん告知はひとりで受けました。誰...
星野源さんもNO! タレントの画像をSNSで無断使用する心理
 歌手で俳優の星野源さんが、ラジオ番組で、SNSのアイコンに自分の画像を使われることにはっきりNOを示しました。有名人で...
いずれはボス? 歴代五指ぷりぷり“にゃんたま”のイケ面公開
 世界一多くにゃんたまを撮影している私ですが、以前ご紹介した歴代5本指に入る魅力のにゃんたまの気になるイケ面を公開! ...
痛くないの? 床に頭を打ちつける子どもの主な理由と対処法
 保育園コンサルタントの小阪有花です。チャイルドカウンセラーのお仕事もさせてもらっている私のもとには、お子さんに関するさ...
紫陽花は憂うつな気分を吸い取る…嫁が義母に贈った意味は?
 梅雨は紫陽花の季節。小さな花をたくさん集めて丸く咲く紫陽花(あじさい)は、雨に濡れると美しく輝き、憂うつなはずの重い気...