そんなえりのボスのもとにはウワサを聞きつけ、今日も悩みを抱えた女性が、ふらりと立ち寄ったようですよ。
1. 性交の際に出血が!
さとみさん(30歳女性/仮名)の方からご質問をいただきました。
「先日、彼との性交時、出血していました。痛みがなかったのであとから気付いたのですが、シーツにも結構な量の血が付いていて、驚いてしまいました。
彼に相談しても『生理じゃないの?』と聞いてくるだけで、真剣に相談に乗ってくれません。痛みや出血は続いていませんが、婦人科を受診したほうがいいんでしょうか?」
えりのボスは深刻な表情で話を聞いています。
「こんなことで大げさ…という気もしますが、なにか大きな病気の前触れかもしれないと思うととても不安です」
ひと呼吸いたえりのボスは、さとみさんの目を見ながら語りかけ始めました。
「性交時の出血、それは不安ね。いつもと違うことが起こったら、不安に思うのは当然よ。さとみさんが深刻に悩んでいるというのに、彼氏はどういうつもりなのかしらね…」
えりのボスの言葉を遮るように、さとみさんは問いかけます。
「やっぱり重大な病気なんでしょうか」
表情がさらに落ち込んでいくさとみさん。これは放っておけません!
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2. 出血の原因はひとつじゃない
えりのボスは、まず出血の原因について解説を始めました。
「月経以外での出血を『不正出血』というの。性交時の出血も不正出血のひとつよ。月経と月経の中間位に起こる『排卵期出血』は、子宮内膜の一部が剥がれて起こる現象よ。これは一般的にはあまり心配ないの。
そして、『子宮膣部びらん』。子宮の入口の子宮膣部が赤く変化しているもので、細菌や刺激に弱く、炎症や出血が起こりやすいの。ただし、これは病気というより生理的変化ね。
そのほかには、『膣炎』『子宮筋腫』『頸管ポリープ』『卵巣機能不全』など、病気由来のものがあるわ。『子宮頸がん』もそのうちのひとつね」
「子宮頸がん…」
さとみさんは心配そうにつぶやきます。
「もちろん、出血だけで子宮頸がんとは断定できないわ。でも、子宮頸がんは進行に応じて不正出血が増えておりものに変化が起こるから、何か異常があったら病院に行くことが肝心よ」
えりのボスは続けます。
「不正出血のそのほかの原因には、性交渉時の外傷による出血が挙げられるわ。痛みが続いている場合は注意が必要よ。
さらに詳しく不正出血のチェック方法について解説していきましょう」
3. 不正出血へのチェック方法と対応方法
不正出血のチェックリストです。以下のリストを見て、ご自身がいくつ当てはまるかをチェックしてみましょう。
□生理痛で会社を休んでしまったことがある
□痛みが少しずつ増している
□市販の鎮痛剤を常備している
□鎮痛剤の効き目が悪い
□鎮痛剤を飲む回数が増えた
ひとつでも当てはまるなら、まずは婦人科を受診してみましょう。検査後、とくに異常がみられず、ホルモンのバランスやストレスの影響である場合、セルフケアを行うことで不正出血の症状を軽減できることがあります。
不正出血のセルフケアの例を4つご紹介します。
3-1. 睡眠時間を確保する
睡眠不足は女性ホルモンの分泌低下につながり、不正出血や生理不順の原因になります。しっかり質の高い睡眠をとることで、女性ホルモンのバランスを安定させましょう。
とくに、冷えは眠りの浅さの原因になるので、就寝前にきちんとからだを温めることが大事です。
就寝2時間位前までにストレッチなどの軽めの運動を行い、38~40度のぬるま湯に浸かるなど、からだをリラックスさせ、しっかり睡眠をとりましょう。
3-2. 食事でからだを温める
冷え性は不正出血の悪化につながるので、食事でからだを温めることで、不正出血をケアしましょう。
おすすめは冬が旬の野菜です。にんじん、ごぼう、ほうれん草を意識的に摂取しましょう。お茶は、紅茶、ほうじ茶、中国茶など、発酵させたものや、しょうが汁も定番です。紅茶とすりおろしたしょうがは合うのでおすすめですよ。
3-3. ツボを押してみる
不正出血の緩和にはツボ押しもおすすめです。おすすめのツボを2つ、ご紹介します。
・隠白(いんぱく)
足の親指の爪の根元の内側にあります。婦人科系疾患などに適応し、不正出血や過多月経を抑えるツボです。
・三陰交(さんいんこう)
足の内くるぶしから指4本上の部分にあります。冷えやむくみを改善し、子宮の血行をよくするツボです。
ツボを押すときは、手の親指を使い、適度な強さでゆっくりと押しましょう。あまり強く押しすぎないように気を付けてください。
3-4. 漢方薬
不正出血の緩和には、漢方薬もおすすめです。漢方薬は、植物や鉱物といった自然由来の生薬で構成され、一般的に西洋薬よりも副作用リスクが低いといわれています。
漢方薬で心とからだ全体のバランスを整えることで、体質そのものを変えていき、不正出血になりにくいからだを目指すこともできます。
不正出血などの婦人科系トラブルに対処するには、「血行をよくして、子宮や卵巣の機能を回復する」「冷えや疲労によるホルモンバランスの乱れを整える」「自律神経を整えてストレスを抑える」などの働きがある生薬を含む漢方薬を選び、根本改善をめざします。
<不正出血が気になる人におすすめの漢方薬>
・加味帰脾湯(かみきひとう):乱れた自律神経のバランスを整え、胃腸の機能を高めて、不足した栄養を補います。
・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):下半身の冷えや血流の滞りを改善し、女性ホルモンの変動による婦人科疾患にアプローチします。
スマホで気軽に専門家に相談できるオンライン個別相談も話題です。スマホで完結できるので、対面では話しづらいことも気軽に相談が可能。お手頃価格で不調を改善したい方は、医薬品の漢方をチェックしてみましょう。
4. 不正出血が気になる場合は、受診後にセルフケアを
「不正出血の原因はさまざま。何も異常がない場合も多いけど、明らかに異変を感じたらまずは婦人科を受診するのがおすすめよ」
えりのボスの言葉を聞いて、さとみさんが続けます。
「そして、セルフケアですね。日常生活の乱れが不正出血につながることがあるなんて、知りませんでした。今日はありがとうございました」
さとみさんは、えりのボスに悩みを聞いてもらい、少し安心したようです。
「また気になることがあったら、いつでもサロンへいらっしゃい」
優しい表情でサロンを去っていくさとみさんを、えりのボスは笑顔で送り出しました。
★サロン「コクハク」のオーナー えりの
顔と口調は若いものの、年齢不詳。タヌキか妖怪の噂も囁かれる謎めいた主人だが、ココロやカラダ、健康に関する知識はズバ抜けており、何気にハイスペック。ムスメ時代に苦労してるため、自分より“後輩”の女にはしあわせになって欲しいと願っている。愛称は、えりのボス。
(文・コクハク編集部/漫画・腹肉ツヤ子)
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<この記事の監修者>
あんしん漢方薬剤師 中田 早苗(なかだ・さなえ)
デトックス体質改善・腸活・膣ケアサポート薬剤師・認定運動支援薬剤師。病院薬剤師を経て漢方薬局にて従事。症状を根本改善するための漢方の啓発やアドバイスを行う。健康・美容情報を発信するMedical Health -メディヘルス-youtubeチャンネルでは、お薬最適化薬剤師として「無駄な服薬はお財布と体の敵!」をモットーに薬の最適な選び方を解説する動画を公開中。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」でも薬剤師としてサポートを行う。
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