大谷翔平を激怒させたフジテレビと日本テレビ…もっと問題なのは、情けない関係修復の仕方だ

更新日:2024-06-30 17:03
投稿日:2024-06-30 17:00

【週刊誌からみた「ニッポンの後退」】

 1994年9月24日、私は英国のアスコット競馬場にいた。

 武豊が騎乗するスキーパラダイスを見るためだった。同馬は前走でフランスのGⅠムーランドロンシャン賞を勝って人気になっていた。雨が降り続き日本の芝より長いターフのため、直線だけで追い込むことは難しいと思われた。だが、スキーパラダイスは少し出遅れたこともあったが終始後方のまま惨敗した。翌日の英スポーツ紙は1面で武の騎乗を厳しく批判していた。

 翻って先週の「宝塚記念」、断然1番人気のドウデュースの武の騎乗を批判するスポーツ紙はなかったのではないか。それで30年前のことを思い出していたのだ。

 ドウデュースについて、武はレース前「馬の出来は最高」と言い、レース後は「負けたのは重馬場のせいではない」と言っている。だとしたら、あの乗り方は解せない。60年競馬を見てきた私は、相手が競馬界のレジェンドであってもひるんではならないと考える。

 私は、この国にはスポーツジャーナリズムはないと思っている。競馬界、プロ野球界、相撲界を見ても、取材対象にベッタリ張り付き、タメ口を利けるようになるのがいい記者だと勘違いしているからだ。相手との距離の取り方を教えられていないのだ。

 大谷翔平の12億円新居報道を巡る騒動も同じである。たしかに、フジテレビや日本テレビのワイドショーなどの報道の仕方に問題があったのは間違いない。自宅を公にされることで、試合中は一人でいる妻に危害が及ぶかもしれない、パパラッチまがいのファンたちが大挙してマンションの前に押し寄せ、「ここがオータニサンの家よ」と大騒ぎするかもしれないという心配は理解できる。

 だが、大谷側が激怒して2社の取材パスを凍結し、自分の映像を使用不可にしたというのは、私には理解できない。

 週刊現代(6月29日.7月6日号)によると、大谷を扱うことで視聴率が3ポイント上がり、大谷を起用している社のCMも入る。巨大コンテンツと化した大谷翔平を巡る「マネーゲーム」は激しさを増しているそうだ。今や日本人最大のスーパースターとの関係修復は、テレビ局の浮沈がかかっているというのである。

 だから土下座してでも大谷との関係を修復せよと、上から厳命されているようだが、これではジャーナリズムが入り込む余地など全くない。取材対象に媚びへつらうだけが記者の仕事なのか。

 大谷がプライバシーを守りたいという気持ちはわかる。だが、12億円の豪邸や26億円ともいわれるハワイの別荘がどのようなものなのかを知りたいと思うのは、人間の“本能”である。読者、視聴者の欲求にこたえるのはメディアの重要な役割でもあるはずだ。

 プライバシーを守りたいのなら、大谷夫妻はドジャース球場に付設している「宿泊施設」にでも寝泊まりしたらどうだろう。警備を厳重にしてもらえばプライバシーは保てるだろうし、「さすが大谷、野球一筋」と称賛されること間違いない。

 今回の件で、報道する側は大谷に謝るところは謝る。しかし、報道する側の権利も主張するべきではないか。私には、テレビ局は大谷にではなく「視聴率」にひれ伏しているとしか思えない。 (文中敬称略)

(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)

エンタメ 新着一覧


宮沢氷魚の文面にデキ婚とは言わせない圧…イケメン続々“獲られる”幕開け
「まさかやー」と思わず声をあげてしまいました。そうです。宮沢氷魚(29)と黒島結菜(26)の事実婚発表です。 「か...
元モー娘。加護亜依様の“セクシー女優匂わせ”が冗談に聞こえないワケ
 モーニング娘。黄金期の人気メンバーだったものの、現在はお騒がせタレント化してしまっている加護亜依。昨年も週刊誌やネット...
堺屋大地 2024-01-20 11:16 エンタメ
シン・スズ子誕生!タナケンに「面白いね」と言わしめたヒロインの魅力
 喜劇「舞台よ! 踊れ!」の幕が上がる。タナケン(生瀬勝久)に稽古ですべてを受け止めると言われたとおり、スズ子(趣里)は...
桧山珠美 2024-01-19 14:45 エンタメ
タナケン(生瀬勝久)の決め言葉、「どうだろうね」に込められた真意
 スズ子(趣里)は、不安を抱えたまま喜劇王・タナケン(生瀬勝久)との舞台稽古を続けていた。  なんとかしようと、ス...
桧山珠美 2024-01-22 15:16 エンタメ
ブギウギ新章、タナケン役生瀬勝久の“顔芸”と「3枚の張り紙」が見もの
 小夜(富田望生)が付き人をやめると言って姿を消してから3カ月、愛助(水上恒司)は大学を卒業し、村山興業で働き始める。 ...
桧山珠美 2024-01-17 15:49 エンタメ
5年ぶり「おっさんずラブ」にコレジャナイ感?それでもいいと思うところ
 あの「おっさんずラブ」が5年ぶりに帰ってきました。2018年4月期にスタートした同作は、ピュア過ぎるおっさんたちの恋愛...
小夜(富田望生)の食い意地は国境を越えた!愛か、餌付けされただけか
 復学した愛助(水上恒司)は、スズ子の公演に触発され、いっそう勉学に励んでいた。  そして、公演が再開して以来、ス...
桧山珠美 2024-01-12 16:05 エンタメ
任侠ドラマ出演の高岡蒼佑様…小栗旬&芸能界批判に“かわいいチワワ”か!
 アウトローな役柄などで人気を博していた元俳優の高岡蒼佑。役者引退宣言をしていたものの、今年2月にリリースされる任侠ドラ...
堺屋大地 2024-01-11 06:00 エンタメ
朝ドラ名物の闇市、小夜の食い意地はタダモノじゃねえ!
 戦争が終わって3カ月、世の中の混乱は続き、スズ子(趣里)たちは未だ公演ができずにいた。  愛助(水上恒司)の病状...
桧山珠美 2024-01-09 14:50 エンタメ
歯に衣着せぬ小夜のキャラを生かしたブギウギ流「玉音放送」シーン
 終戦の日。スズ子(趣里)たちは巡業先の富山で玉音放送を聞く。りつ子(菊地凛子)は慰問先の鹿児島で敗戦を知る。  ...
桧山珠美 2024-01-08 15:50 エンタメ
原作は4コマ漫画! 名作“ぎぼむす”のイケメントリオを味わい尽くそう
 新年あけましておめでとうございます。  例年であれば、大晦日は「ジャニーズカウントダウンライブ」で年越しするので...
特攻隊の前で「別れのブルース」、過去の“淡谷のり子物語”と異なる描き方
 1945年、日本の戦況はますます悪くなっていた。富山に慰問に来ているスズ子(趣里)は、女中の静枝(曽我廼家いろは)の話...
桧山珠美 2024-01-05 14:00 エンタメ
制作費の都合?「夜来香ラプソディ」音楽会シーンなしは残念すぎる
 上海の羽鳥善一(草彅剛)は、音楽会の準備を進めていた。羽鳥は、黎錦光(浩歌)が作曲した「夜来香」にブギを取り入れた音楽...
桧山珠美 2024-01-04 17:50 エンタメ
【2023年人気記事】マッチ様は逃げ上手と無責任のプロだった
【「残念プロフェッショナル」の流儀】  2023年も「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大き...
堺屋大地 2024-01-02 11:44 エンタメ
辻希美&杉浦太陽はニベアのCM…仲良しラブラブ芸能人夫婦はお金を生む
 元モーニング娘。のなかで1番の勝ち組は、やっぱり辻ちゃん(辻希美)でしょう。  先日も元モー娘。の中澤裕子、保田...