「お笑い三冠!」担当マネジャーSMA平井精一さんが語る 優勝の舞台裏とマネジメントの秘訣

更新日:2024-07-01 17:03
投稿日:2024-07-01 17:00

【その日その瞬間】

 バイきんぐ、ハリウッドザコシショウ、錦鯉らを育てた名物マネジャーとして知られるソニー・ミュージックアーティスツ(SMA)の平井精一さん。著書「『芸人の墓場』と言われた事務所から『お笑い三冠王者』を生んだ弱者の戦略」も話題になったが、あらためて三冠の瞬間とマネジメントの秘訣を語ってくれた。

■社内で自分の居場所をつくるヨコシマな考え(笑)

 ──音楽事務所でお笑い班を立ち上げた経緯を教えてください。

 渡辺プロダクション(現ワタナベエンターテインメント)からSMAに入社し、宣伝部の仕事は楽しかったのですが、やはりマネジャーをやりたかった。「何か立ち上げないと自分は悲惨なことになる」と、社内で自分の居場所をつくるというヨコシマな考えもありました(笑)。

 当時「エンタの神様」や「M-1グランプリ」が高視聴率で、芸人ブームの時でしたし。東京の事務所は所属芸人が少人数でしたので、逆に2004年の年末に芸人になりたい人を大々的に募集。養成所はつくらず、来た人を全員所属として抱えました。

 翌05年にライブを立ち上げ、同10月には「エンタの神様」でコウメ太夫が売れてました。うちは他の事務所をクビになった芸人でも来る者は拒まず。吉本さんがうまくいっているのは人数だと思うんです。「人は財産」という考えで集めました。

 ──「爆笑レッドカーペット」など芸人ブームの中、響やAMEMIYAがブレーク。12年にバイきんぐが「キングオブコント」で優勝しました。

 うれしかったですね! マネジャーとしてそんな感覚を味わったことはなかったです。

マネジャーは大舞台では芸人を平常心で舞台に送り出す態度が重要

 ──その後、ハリウッドザコシショウ、アキラ100%と2年続けて「R-1ぐらんぷり」優勝。

 ザコシショウは事務所を転々としてうちに来ました。以前はコンビでやっていたから優勝時にはかなり変わったんです。裸になる必要はないモノマネですけど、「腹が出てきて面白いフォルムになってきたから」と本人が言ってきたのがきっかけです。

 当日、最初のネタでウケて、ある芸人が楽屋で「ザコシショウに風が吹いてる、優勝ある」と言ってくれた。それを聞いた私は緊張させないように「決勝まで来たら勝っても負けてもメシ食えるようにはなるから、緊張しないでやってこい」とだけ言ったんです。マネジャーは大舞台では芸人を緊張させず、平常心で舞台に送り出す態度が重要かなと思いました。

 アキラは来た時はコンビでコントをやっていてネタのひとつに、裸でウエーターをやる喫茶店ネタがあり、それで突然、裸芸のヒントを得たみたいです。

 ──優勝時のネタは裸に蝶ネクタイをして喫茶店のお盆で隠した。

錦鯉のM-1は数年後を見据えて若手芸人と見守った

 あのネタは最後の賭けだったと思います。お盆ネタは賛否しかないと思いましたので、1本目のネタがウケて最後の勝負に残れば「アキラって面白い」という空気ができると思ってました。

 だから本番前には「1本目に勝ち上がったら優勝が見えてくるから、1本目のケツのネタを2本目の頭につなげて笑いにできるように」と指示しました。1本目の続きのように入った方がアキラの場合はいいと。

 他の事務所でダメだった芸人が賞レースで勝つのはマネジャー冥利に尽きると思うことができる瞬間ですね。

 芸人のマネジメントは仕事のブッキングだけじゃなく、一緒にネタの形をつくっていくことです。時間をかけて育てるからこそやりがいがあると思います。マネジメントが濃い感じで。

 ──21年にM-1グランプリで錦鯉が史上最年長優勝を果たしました。

 05年にうちに来て1回目の事務所ライブから出ているから苦節16年。決勝当日は事務所ライブとかち合い、僕はライブに立ち会ってM-1は若いマネジャーに任せました。若手芸人たちから「行かないんですか」と聞かれたので、「おまえらもいつかM-1に出てくれると期待してるから俺はライブを選んだよ」と答えました。

 うちの芸人がM-1で優勝できるなんて一生に1度と思ったので本当は行きたかった(笑)。でも、若手がうちの事務所でもっと頑張ろうと思ってもらうためにライブを選んだ。つまり数年後を考えて。ライブ後に劇場でみんなしてパソコンで見て、優勝の瞬間は大盛り上がり。後々になって吉本さん以外の事務所で初めて3つの大会で優勝したと知りました。

 ──これからやりたいことはありますか。

 お笑いで頑張りたい人を育てたい。今まで200回以上のライブをやりました。誰にでも場を与えて育てる。それがやりがいです。やる気があればチャンスは来る。芸人もマネジャーも続けることが最大のチャンスにつながると思います。

(聞き手=松野大介)

▽平井精一(ひらい・せいいち) 1998年にSMAに入社。2004年からお笑い部門を設立し数々の芸人のブレークに尽力。「『芸人の墓場』と言われた事務所から『お笑い三冠王者』を生んだ弱者の戦略」(日本能率協会マネジメントセンター)発売中。

エンタメ 新着一覧


橋本環奈は“ストレス限界”寸前? 理由不明の「2度ドタキャン」報道でNHK朝ドラ関係者ピリピリ
 女優の橋本環奈(25)が5月、英ロンドンで上演された主演舞台「千と千尋の神隠し」を2度も“ドタキャン休演”したと伝えら...
2024-06-07 17:03 エンタメ
松本人志「同意なし性行為」強要を完全否定…さらに「休業補償」まで請求の超強気な背景
 ダウンタウン松本人志(60)が、「週刊文春」発行元の文藝春秋と同誌編集長に5億5000万円の損害賠償などを求めた裁判で...
2024-06-07 17:03 エンタメ
“お受験パパ”二宮和也と多部未華子が二宮家で交わした話題とは? 共に第1子がそろそろ満4歳
「おたべちゃんが遊びに来て。遊びに来たときに『え、何このテレビ?』って。『え、これテレビだよね?』って言われて…」。 ...
2024-06-13 13:28 エンタメ
歌手miwaは結局、誰に似ているのか? 挙がる名前は川口春奈、長澤まさみ、宮脇咲良…
 最近、歌手のmiwa(33)の容姿についてのネットニュースが多数配信されるようになったことにお気づきだろうか。6月4日...
2024-06-07 17:03 エンタメ
花岡死す「栄養失調で死亡」見出しの衝撃…“甘党男子”桂場は和洋イケる口
 穂高(小林薫)は法の道へ導いて不幸にしたと寅子(伊藤沙莉)に謝罪し、新しい仕事を紹介すると言い出す。しかし寅子はむしろ...
桧山珠美 2024-06-07 15:30 エンタメ
日テレ「セクシー田中さん」報告書内“正当化”で大荒れ…制作側に求められる原作改変ラインとは?
 昨年10月期放送の連続ドラマ「セクシー田中さん」をめぐり、原作者の芦原妃名子氏が急逝した問題について、ドラマを制作・放...
2024-06-06 17:03 エンタメ
佳子さま2990円ニット着用に愛子さまはGU愛用…女性皇族“プチプラ旋風”で好感度に差
 秋篠宮家次女の佳子さまは3日、皇居の宮中三殿の一つ、賢所を参拝し、4日には皇居で天皇皇后両陛下にギリシャ訪問を報告され...
2024-06-06 17:03 エンタメ
公園ランチの約束は叶うのか? 花岡の“しょんぼり言動”が不穏すぎる
 ホーナー(ブレイク・クロフォード)から子供たちにとチョコレートをもらった寅子(伊藤沙莉)は、公園で花岡(岩田剛典)に再...
桧山珠美 2024-06-06 17:00 エンタメ
いよいよ裁判官編。NHK制作陣の遊び心、8時14分過ぎに見たり
 昭和22年3月。新しい日本の憲法に希望を見出した寅子(伊藤沙莉)が向かったのは法曹会館。そこには空襲で被害を受けた司法...
桧山珠美 2024-06-03 16:05 エンタメ
「虎に翼」お宝物件!三山凌輝はピアスにアクセジャラジャラの“チャラ”男
 先週のNHK朝ドラ「虎に翼」第9週「男は度胸、女は愛嬌?」は、ヒロイン・寅子(伊藤沙莉)にとって、悲しみの連続でした。...
刮目!伊藤沙莉“静”の演技、「佐田優三 仲野太賀」表示も期待は泡沫に…
 これまでの後悔と秘密をすべて打ち明けて、直言(岡部たかし)は安らかに亡くなった。  寅子(伊藤沙莉)は何事もなか...
桧山珠美 2024-05-30 19:10 エンタメ
古谷徹は“あの役”降板?声優不倫騒動の後始末、カギは「キャラの私物化」
 レジェンド声優・古谷徹(70)の不倫報道が世間を騒がせている。 『文春オンライン』よって報じられた37歳年下女性...
優三も草葉の陰で苦笑い? 前代未聞な別れの“懺悔”は直言らしい名場面に
 直言(岡部たかし)は栄養失調と肺炎でもう長くはないと診断される。直言が大事なことを隠していたと知った寅子(伊藤沙莉)の...
桧山珠美 2024-05-30 18:50 エンタメ
「見るんじゃない」と直言。ダチョウ倶楽部の“押すなよ、押すなよ”を彷彿
 直言(岡部たかし)の体調が優れない。寅子(伊藤沙莉)と直明(三山凌輝)はマッチ製造の仕事を紹介してもらい、はる(石田ゆ...
桧山珠美 2024-05-28 15:30 エンタメ
視聴率苦戦だから失敗に物申す!山下智久と錦戸亮、5年ぶり民放作の意義
 山下智久(39)が主演を務める「ブルーモーメント」(フジテレビ系)、錦戸亮(39)がキーマンとして出演する「Re:リベ...
こじらぶ 2024-05-25 06:00 エンタメ
「おいしいものは一緒に」出征前の河原デート。はて?初回を思い出すと…
 寅子(伊藤沙莉)は訪ねてきた後輩の小泉(福室莉音)から、女子部が閉鎖されることになったと知らされる。  今年は高...
桧山珠美 2024-05-24 15:30 エンタメ