トラウマ、復讐…人生3度の挫折。後妻業に染まった女はどこで間違えたのか【後妻業の女・筧千佐子#3】

神田つばき 女と性 専門ライター
更新日:2024-11-23 06:00
投稿日:2024-11-23 06:00

数々の人の愛情を犠牲にして

 死刑を待つ身として、筧千佐子は78歳の今も服役中だ(高齢男性4人に対する殺人と強盗殺人未遂罪で死刑判決が確定。今年3月、再審請求棄却)。

 彼女の子ども2人はそれぞれ大学を卒業し、まっとうな人生を送っている。千佐子に「子どもを連れて帰っておいで」とすすめた母親は、その後自死したらしい。

 メディアに対して過剰なほどしゃべる千佐子が、そのことについてくわしく語っていないのは、愛してくれた母の死だけは自分に都合のよいように語れない、深い後悔があるからではないか。

 最後の犠牲者、筧勇夫さんの検視をした医師が、たまたま勇夫さんのかかりつけ医で、事件当日に元気な勇夫さんを診察していた。不審に思って司法解剖を求め、青酸化合物による毒死とわかり、過去の毒殺も一気に明るみに出た。

 千佐子の人生をどこまで巻き戻したら、こんな凶行に手を染めずにすんだのか、ずっと考えているが答えは出ない。

 どうか死刑執行になる前に、被害者一人一人を思い起こし、人の生命と愛情を復讐のいけにえにしてしまった人生を心から悔悛してほしい、と願うしかない。

【了】

【参考文献・映像】

・「筧千佐子 60回の告白 ルポ・連続青酸不審死事件」(安倍龍太郎/2018年/朝日新聞出版)
・「全告白 後妻業の女: 「近畿連続青酸死事件」筧千佐子が語ったこと」(小野一光/2018年/小学館)
・「脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体」(中野信子/2014年/幻冬舎新書)
・「サイコパス」(中野信子/2016年/文春新書)
・「ザ!世界仰天ニュース 連続殺人犯・筧千佐子…夫・交際相手を次々毒殺!カメラ前で嘘並べる」(日本テレビ/2023年8月29日放送)
・「後妻業の女」(大竹しのぶ主演・鶴橋康夫監督/2016年/東宝)
・「関西連続青酸殺人事件 筧千佐子死刑囚が泣きながら語った出生の秘密」(日刊ゲンダイDIGITAL/2022年3月13日配信)
・「「後妻業」で高齢男性を次々と籠絡、心の隙間に忍び込む毒婦の手口」(ダイヤモンドオンライン/2018年7月27日配信)
・「筧千佐子被告、死刑確定 被害者に「幸せ」といわしめた骨抜きテクと秀才少女時代」(週刊女性PRIME/2021年7月7日配信)

神田つばき
記事一覧
女と性 専門ライター
離婚と子宮ガンをきっかけに“目がさめて”女性に生まれたことの愉しみを取り戻すべく、緊縛写真のモデルとライターに。私小説「ゲスママ」、イベント「東京女子エロ画祭」「親であること、毒になること」などを企画。最近は女犯罪者や緊縛表現者に関するZINEの制作・販売を開始。Xnoteblog

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


まさに鈴カステラ!愛と野望がつまった茶トラ“にゃんたま”
 きょうは茶トラ3兄弟の憩いの場所にお邪魔しました。  気持ちよさそうにくつろぐ姿にほっこり♪  注目すべき...
“卵巣年齢”が分かる「AMH検査」は独身こそ試す価値がある!
 日本は不妊治療の件数は世界一なのに、体外受精で赤ちゃんが産まれる確率は最下位。そんな状況を変えるために、ミレニアル世代...
いつ、何を、どうする?「寝・食・動」リカバリー方法を解説
 NYのセレブたちがこぞって実践している「ヘルスリテラシー」という考え方があります。自らが現地で本概念を学び、最強のパフ...
オトナ女子の休日アイデア4選! 楽しく遊んで気分転換を♪
 大人になるにつれて仕事が忙しくなりますよね。仕事が忙しいと休日に昼前まで寝てしまったり、倦怠感を理由に起きてからもダラ...
恋愛運アップに期待! お歳暮だけじゃないシクラメンの底力
 巷はそろそろ年末に向かって慌ただしくなって参りました。  年末はお花屋さんにとってはまさに早朝から深夜まで忙しく...
結婚しても“垢抜け主婦”でいられるアラフォー女性の特徴3つ
「結婚すると、地味になるよね」――。そんな風に言う人はたくさんいます。男性に限らず、結婚せずに働き続ける女性もそう言うか...
ヘルスリテラシーの“1日1万歩”は達成以上に「習慣」が大事
 NYのセレブたちがこぞって実践している「ヘルスリテラシー」という考え方があります。自らが現地で本概念を学び、最強のパフ...
微動だにしないけど大丈夫? 心臓に悪い…熟睡“にゃんたま”
 にゃんたマニアのみなさまこんにちは。  きょうは神社の境内で行き倒れのにゃんたまωにロックオン!  微動だ...
老後のための貯金にこだわらなくて良い理由!今を優先してOK
 老後のために、貯金をしようと思っている人は多いでしょう。しかし、老後の貯金にばかり拘って、今を見失うのは本末転倒ではな...
合併症の合併症!? 40℃の高熱で希少がん病棟へ“強制送還”
 私は42歳で子宮頸部腺がんステージ1Bを宣告された未婚女性、がんサバイバー2年生です(進級しました!)。がん告知はひと...
無理不要!「超ワンパターンな朝食」で仕事への活力と健康を
 NYのセレブたちがこぞって実践している「ヘルスリテラシー」という考え方があります。自らが現地で本概念を学び、最強のパフ...
雨上がりの南の島で…念入りパトロール中の“にゃんたま”君
 雨がやんで、パトロール中のにゃんたまω君に出逢いました。  濡れた毛並み、この時期ちょっと寒そうに見えますが、こ...
セックスレスを解消したい…抱いてほしい女性がとるべき行動
 皆さんは「レス」の定義をご存知でしょうか?「(特別な事情がない時)カップルの合意した性交あるいはセクシュアル・コンタク...
デキる女は睡眠上手!逆効果にならない「寝だめ」をマスター
 NYのセレブたちがこぞって実践している「ヘルスリテラシー」という考え方があります。自らが現地で本概念を学び、最強のパフ...
うつ病の初期症状を見逃さない! 予防のための4つのポイント
「社会人になったんだから」と多くの人たちがメンタルの不調を訴える、現代のストレス社会。たしかに仕事では自分のストレスにな...
家にこもるなんて損! お金をかけずに休日を楽しむ方法4選
「つい家から出ずにアマゾンプライムビデオを見て土日を過ごしちゃった」「だって外に出るとつい散財しちゃうから」――。そんな...