モブキャラ自認の23歳が「パパ活」に落ちるまで。50万円のヴァンクリに「興味ない」は言い訳?

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2024-12-14 06:00
投稿日:2024-12-14 06:00

喜びもつかの間、最悪なことが…

 友梨佳は芸能人や政財界にも多くの顧客を持つ美容業界でも一目置かれる存在である。まだ30代前半であるが腕一つでこのサロンを人気店に押し上げた。

 晴乃は美容専門学校時代、1日講師をしにやってきた彼女の教えとその美貌にどっぷりと魅せられ、その場で弟子入りを志願した。それくらいのカリスマだ。

 鼻歌を歌いながら晴乃はベランダに出る。夜風が心地いい。母親に明日のテストの報告をしようと、スマホを見つめる。嬉しさで、手は震えていた。

 すると突然、どこからかサイレンの音が聞こえてきた。ビクッと肩を揺らす。

「――あ!!」

 そのはずみでスマホは右手をすり抜けて、暗闇へ消えていった。

 少し遅れて、鈍い音がした。

 階下へ取りに行くと、幸い機能は生きていたが、画面にはクモの巣のような亀裂が走っていた。なんとかすれば使えるが、なんとかしないと使えない状態になっているAndroid。3番目の兄から上京時にお古を譲り受けたものだった。

 そのショックもあり、翌日のテストは散々だった。

もう召使いから抜け出せないの?

 友梨佳曰く、「技術は身についているが、ところどころが雑」ときつく苦言を呈された。自覚がある分、その指摘は胸の奥深くまで突きささった。

 当然、晴乃は引き続き受付対応に専念という結論を下される。

「予約の倉持まひなでーす」

 こういう時に限って、朝一はあのお客様だった。相変わらず華美な装いで、ピカピカのネイルがまぶしい。また違ったアクセサリーを身に着けている。

 この世の全てを手に入れているような自信満々な笑顔を向ける彼女。切り替えようと、晴乃は全ての感情を押し殺して微笑んだ。

「お待ちしておりました――」

 だが、言葉が詰まる。まひなの姿はいつも好奇心で舐めるように眺めているのに、今日だけは目をそらしたくなった。

 ――しょせん、召使いはいつまでたっても召使いのまま…。

 視界が涙で歪む。

 彼女が初めての自分の顔をじっと見てくれたような気がした。


#2へつづく:「ギャラ飲み」にハマった女子が港区で受けた洗礼。富裕層のニヤつく視線のワケは】

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


世帯年収1500万円でも越えられない壁。耐え難い屈辱を喰らった女の選択
 御茶ノ水駅が最寄りの持ち家で2歳年上の夫・孝憲と4歳の娘・香那と3人家族で余裕ある生活を送る彼女は、ママ友と共に充実し...
たまにはこんな日もあるよね? 終電を見送ってしまった夜
 久しぶりの仲間との時間が楽しくて、「あと1杯だけ」「あと10分だけ」を続けていたら終電を見送ってしまった。  だ...
「自責と他責」バランス上手な大人が口癖にしている神ワード
 ここ数年、自責思考・他責思考みたいな話題をよく見かけませんか? 私はもう見るたびに「うるせぇ~!」となっている反面、し...
出張ホスト、ママ活、女風…女性の金目当てに上京する男性が増えている!
 近頃は地方移住が話題となっていますが、その逆に「地方では稼げないから上京する」男性も出てきています。  出張ホストや...
ご飯をありがとにゃ! お母さんが大好きな“たまたま”君たち
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
荒れる2024年幕開け 花屋が祈りを込めた「復興と希望」の花束
 2024年が明けました。今年は元旦から思いもよらないことが起こって、まさに辰年。大きな変化の年が始まったようでございま...
2024年こそシンデレラボディ!フェロモンジャッジで分かるケア&香り術
 素敵な女性はいい香りがする――。  そう感じるのは、肌から放たれるフェロモンの効果。フェロモンが高まると色気だけ...
動物は「あったかい場所」を見つける才能があるみたい
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
暇すぎ死にそう…大きな声じゃ言えないけど仕事中にばれない暇つぶし5選
 同じ仕事でも、忙しいと時間は早く過ぎ、暇すぎると永遠に時計が止まったように見えるもの…。とはいえ、仕事の拘束時間なので...
見上げた青空が眼に染みて…1日に1回くらいは空を眺めてみる
 青空が眼に染みると思ったら、しばらく空を見上げていなかった自分に気が付いた。  うつむいて歩くのがクセになってい...
私「復縁希望?」女友達「あと2年で吹っ切る」失恋かまってちゃんLINE
 失恋をして心が傷つくと、少しでも誰かに気持ちを聞いてもらいたくなるもの。  でも、あまりにしつこかったり、常識が...
キャンプより安近短なべランピング!楽しむコツ&それでも失敗したエピ
 空前のキャンプブームが到来していますが、やはりイチからキャンプギアを集めてテントを張って…となると、ハードルが高いと感...
これって誘拐ですよね!? 遊んでいたら詰められた恐ろしいご近所トラブル
 ステップファミリー6年目になる占い師ライターtumugiです。私は10代でデキ婚→子ども2人連れて離婚→シングルマザー...
「俺のソーセージも試食して」じゃねえ! 40女の成人の日の思い出
 1月8日は成人の日。晴れ着やスーツに身を包んだ新成人たちの姿は、眩しいものです。  成年年齢が18歳に引き下げられま...
神秘的! 宝石のようなオッドアイの純白“たまたま”に幸福祈願
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
「緑の黒髪」があるなら、白髪の“褒め言葉”は?
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...