共学なんてバカじゃないの! 暴走するお受験妻が「娘の反抗」でようやく気付けたこと

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2025-02-08 06:00
投稿日:2025-02-08 06:00

3月、娘の受験結果は…

 3月。

 めでたく第一志望に合格した美愛は、入学式はまだ先にもかかわらず、毎日のように制服に袖を通し、一日を過ごしている。

 はじけるような、美しい笑顔。

 長いまつ毛の先まで嬉しそうな美愛の様子に、こちらもなんだか顔がほころぶ。

 やはり自分は母親なのだ。

 これでよかった、のだ。

 結局は、彼女の選んだ幸せを祝福できることにホッとした。不完全燃焼を肯定するための自己暗示ではなく、素直に感じる。

 毒に染まる前で踏みとどまれた自分を褒める。

どこかで聞いたような進路だけど…

「ママ、ありがとう」

 姿見の前で誇らしげに制服姿の自分を見る美愛に、針を持つ手がとまった。

 相変わらず、刺繍は続けている。志望校を決める際の一悶着があってから、傷ついた自分の心のほころびを縫うように、沼に嵌っていった。

「ママが『受験しよう』って誘ってくれなきゃ、今の嬉しい私はないから」

「そうかしら? 私が言わなくても、あなたは結局受験していたかもよ」

「してないよ。クラスの仲いい友達はみんな近くの中学行ったもの」

 血は争えない。周囲に流されやすい資質があることは違いないのだ。

 聞けば、数ある難関校の中で合格した第一志望を選んだのは、アナウンサーになりたいからだという。中学・高校からそのままあの大学に行って、ミスコンに出るのだそうだ。

 どこかで聞いたような王道ルートをトレースしているよう。…だとしても、目の前にある多くの選択肢の中から、美愛自身が能動的に選んだひとつだ。

私も能動的に始めよう

「受験も終わったし、私もなにか仕事とか始めようかな」

 呟くと、美愛は即答した。

「いいじゃん! 刺繍屋さんで働きなよ」

 刺繍屋さん。子どもの発想だが、よく考えてみれば、それもアリだと感じる。趣味を生かして、ハンドメイドのネットショップなどできるかもしれない。

「そうねぇ…」

 お茶を取りに立ち上がると、彼女の笑顔が自分の顔のすぐそばにあった。

 いつの間にか娘の身長も自分に迫ってきている。追い越されるのも時間の問題だ。

Fin

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


大人は「さようなら」とハッキリ言わないけど…
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
春の行楽、御朱印集めはスタンプラリーと何が違う? 作法やタブーとは
 山形県東部にある山寺(山形市)で自らの行いについて考える出来事がありました。我よ、御朱印集めがスタンプラリーと化してい...
この勇姿もあとわずか…去勢手術予定“たまたま”を記念撮影!
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
「クリスマスローズ」で究極のほっぽらかし園芸!怠け者でも花いっぱい♡
 猫店長「さぶ」率いる我が花屋のある神奈川は地球温暖化の影響もあり、ここ近年の特徴は卒業式に桜咲くでしたが、今年は入学式...
人は「趣味が合わない相手」と恋に落ちることがある
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
結婚、出産、身分の違い…仲良かった友達に会いたくないのはダメな感情?
 学生時代を毎日一緒に過ごした親友。でも、年齢を重ねるに連れて「あんなに仲が良かった友達なのに、今ではもう会いたくない」...
かわいい“たまたま”が大集合!夕暮れの集会の議題はなあに?
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
立ち止まっていても時間が進むのなら…
 立ち止まっていても時間が進むのなら、いっそのこと急がなくても良いのかも。  人は人、自分は自分。
「委ねる」は読めるかも? 「委しい、委せる」はなんて読むのかな
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
仕事帰り、ぶつかりおじさんのちかん被害に遭遇!?  私はどう対処すれば…
 先日、電車の中で「ぶつかりおじさん」に遭遇し、周囲に分からないような形で身体を触られました。あの時、自分はどんな対応を...
選ばなかった人生を歩む「もう1人の自分」と話してみたい
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
魅惑の“たまたま”の横から…モデル!? に立候補した茶トラ君
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
“刺身のツマ”じゃございません! 存在感爆上がりの「かすみ草」最新事情
 猫店長「さぶ」率いる我が愛すべきお花屋は、神奈川の片田舎にあります。  大企業の研究所が多数点在しているせいか、他民...
同僚A「昨夜、課長と歩いてました?」同僚B「私も見ました」って…。職場グループLINE公開処刑!!
 グループLINEは、仕事上でもとても便利な連絡ツールですが、時に意地の悪い人がいるのも現実…。  職場での公開処...
ギャラ飲み収入だけで年400万円の貯金達成!元キャバ嬢が浪費しないワケ
 経営者や著名人、人気のインフルエンサーも利用する「ギャラ飲み」なるサービスって知っていますか? 東京都内のみならず、全...
【求む2期生!】頑張るシンママの収入UPをサポート☆応募して豪華プレゼントGET!
 日刊ゲンダイが運営する女性webメディア「コクハク」では、メディア制作に協力してくださる「コクハクリーダーズ第2期生」...