バリキャリ→量産型主婦への変貌に愕然「仕事も結婚も…なんて無理だよ」心配ぶった“呪い”はもうウンザリ

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2025-04-12 06:00
投稿日:2025-04-12 06:00

「私も、そんな風に思っていた時期、あったよ」

 年子育児が大変なことは承知している。純粋な反応に違いないが、ブランクを一度で済ませるために、麗菜は〝あえて”そうしているのに。

 保活において、この地では2子同時申請が加点やランク的にかなり有利であると聞いている。そうした上での戦略的な判断であるがゆえ、憐れまれる筋合いはなかった。

 麗菜は相手を心配するふりで反抗した。

「晶子さんの方がむしろ大変じゃないですか? 一番上の子は10歳くらいですよね。それに、その赤ちゃん……」

「そうそう。高齢出産だし、金銭的にも体力的にも大変よ」

 言い過ぎたかと過ったが、満面の笑み。晶子が鈍感でよかったと胸をなでおろした。

「いまお仕事はされているんですか?」

 麗菜は、答えが分かり切っている質問を投げてみた。赤ちゃんを抱いているのだから、していないに決まっている。回答は、想定通り「いいえ」だった。

「私はこの子が生まれたら、すぐに復帰の予定なんです。しばらく時短になると思いますが、できる限り早めにフルで復帰しようと思います」

 麗菜が分かり切った質問をしたのは、彼女に対する無念を当てつけたかったのかもしれない。案の定、晶子の目の色がよどむ。

「私も、そんな風に思っていた時期、あったよ」

先輩ママの言葉は「言い訳」にしか聞こえない

 遠い目の晶子は、胸の上で眠る我が子をさすりながら、さらにつぶやいた。

「上の子が生まれたばかりの頃は、私もそのつもりだったな。でも、保育園に入れなくてね。結果的にはよかったと思う。第二子不妊だったし、コロナもあったから」

「大変でしたね」

 バトルに勝利した如き爽快感を同情の言葉で装いながら、麗菜は心の中で彼女を軽蔑した。

 ――晶子さん。それは所詮、言い訳ですよ。

 保育園はこの辺りであれば、選ばなければ供給も十分のはず。不妊治療だって、恐らく年齢的に時間がかかったのだから、もう少し早くから始めていればよかっただろう。晶子が結婚したのは20代の時だったと聞く。

 コロナ禍も、むしろ結果的に在宅勤務が促進されたこともあり、働くママが受ける影響として悪いことばかりではない。なにより、何もせず愚痴ばかりの晶子にうんざりした。ため息も出ないくらいに。

 晶子は愚痴るように、さらに続けた。

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


住宅街の中で東京の息吹を感じた 2023.8.18(金)
 住宅街で湧き水と出会うなんて。東京には知らない場所がまだまだある。 「東京の名湧水57選」のひとつにも選出されて...
駅が“ダンジョン”やないかーい!上京して仰天した地方とのギャップ8選
 住み慣れると忘れてしまいがちですが、多くの人は上京後に田舎とTokyoのギャップに仰天しています。上京後数年経った人も...
暑さのせい? 身も心も全開な“たまたま”の声が聞こえてくる
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
話題の「完全栄養食」ってぶっちゃけどう? メリット&デメリットを解説
 近年、健康志向の人やダイエット中の人に話題となっている「完全栄養食」をご存知ですか? 現代人は忙しく時間がない人が多い...
亡くなったペットのお別れに注文増、大切な家族の供え花に必要な情報は?
 故人へのお供え花を作らせていただく花屋の感覚として、暑さ寒さが続く日や季節の大きな変わり目はお悔やみ花を作る機会が多い...
帰省中に岡山・蒜山高原でワーケーション 2023.8.15(火)
 この夏休みは、千葉から夫の実家のある岡山県に帰省しました。帰省中、パソコンを開きたかったのですが、夫の実家は人の出入り...
人じゃないモノたちで賑やかな街 2023.8.14(月)
 街に人が戻ってきた。大阪はこうでなくっちゃね。  でも、ココは誰もいなくても賑やかな街だ。  ちょっと見上...
「ジェンダーリビール」って知ってる? 大失敗した話&次はおにぎりで♡
 最近、世界の妊婦の間で流行っているのが「ジェンダーリビール」です。日本ではまだまだ聞き慣れない言葉ですよね。今回は「ジ...
「押すなよ、絶対押すなよ」ビーチボーイズ“たまたま”を激写
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
嫁の手作り料理をバカにし過ぎ!息子寵愛義母から来たムスコンLINE3選
「ムスコン」とは、息子から子離れできない親に対して使われる言葉だとか。特にムスコンの被害を受けやすいのが、お嫁さん。義母...
2023-08-13 06:00 ライフスタイル
親戚との会話に困ったら?「5つの話題」と相槌と“離れ技”で乗り切る戦法
 お正月やお盆の時期などに、頭を悩ませるのが親戚付き合いです。年に数回しか会わない親戚とは、何を話したらいいかわからず、...
動物&飼い主のほっこり癒し漫画/第55回「宅配トリモノチョウ」
 ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、突然「コクハク」に登場! 生きものたち、その生きものたちをこよな...
たまごっちってうんち垂れ流ししないの!?「平成レトロ」なおもちゃの今
 最近ちまたで注目を集めている「平成レトロ」。平成レトロとは「平成を懐かしく想う文化的風潮」のこと。1989(平成元)年...
2023-08-12 06:00 ライフスタイル
もう義母になめられない! 帰省時に役立つ「良好関係キープ術」4つ
 結婚すると気になるのが、義母との関係。仲良くいられるかどうかで、結婚生活が大きく変わってしまいますよね。特に多いのが、...
嫌われ街道まっしぐら! 後輩・部下にやってはいけない4つのこと
「なんだか部下との関係が良くない気がする」「後輩に避けられているのはなんで?」と悩んでいる方必見! 今回は、職場の後輩や...
オトナになっても残る呪縛!「長女をやめたい」と感じた瞬間&苦労あるある
 姉妹(きょうだい)で何番目に生まれたかどうかは、その後の生き方に大きな影響を及ぼしますよね。それぞれの立場でメリット・...