有能でも「ママ」の肩書きに埋もれる現実。“報われない世代”が後輩ママにウザがられても助言するわけ

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2025-04-12 06:00
投稿日:2025-04-12 06:00

【東戸塚の女・山森麗菜30歳 #3】

 タワーマンションが立ち並ぶ街・東戸塚に暮らす麗菜。現在は育休中であるが、復帰後もバリバリ働く予定だ。年収2000万超えのパワーカップル。先々を見据えたライフプラン通りに、要領よく生きていることを自負しているが……。【前回はこちら】【初回はこちら

 ◇  ◇  ◇

『麗菜さん、うちのマンションにパーティールームがあるの。もしよければ、ご近所のママさんたちもいるからみんなでランチしない?』

 麗菜の元に、謎のLINEアカウントからメッセージが届いた。

 少し既読放置した末に改めてみると、小学生くらいの男の子が乳児と写っているアイコンが目に入った。akiko(荒川・吉川)というアカウント名で、晶子からのメッセージであることを推測し、慌てて返信した。

 会社員時代にやりとりしたものから、発掘してきたのだろうか。

『ぜひ、参加したいです』

地域コミュニティへの参加も戦略だ

 本心は、あまり気乗りがしなかった。ただ、近所のママさんがくるというのは魅力的な誘い文句だった。

『了解です。当日は楽しみにしています』

 復帰したら、地域の縁をほとんど繋ぐことはできないだろう。育休中に、できる限りのご近所のコミュニティを作っておく。これも、今後生きやすくするための戦略のひとつだ。

 そして当日。

 麗菜が、晶子が暮らすマンションのパーティールームを子どもと共に訪れると、同じような年代の、乳児連れのママさんが6組ほどいた。

 テーブルの上には、オーガニックのクッキーとローズヒップティー。子ども用に天然のオレンジジュースとアップルジュースも用意してある。

「お昼には軽食を頼んであるから、その時間までは楽しくお喋りしましょう」

 キッズエリアも併設されているパーティールーム。子どもはお昼寝させたり、おもちゃで遊ぶのを見守りながらおしゃべりができるようだ。飾り付けもされた、見栄えのいい雰囲気だ。

 だが、内輪のゆるい集まりをイメージしていた麗菜はそのサロン的な光景に軽く仰天した。

晶子の「仕事」ってなに?

「麗菜さんは、晶子さんとはどちらでお知り合いに?」

 部屋の隅で恐縮していると、おっとりとした雰囲気のママさんに話しかけられた。彼女は、ナナミと名乗った。

「晶子さんとは昔、一緒の会社で働いていたことがあったんです」

「へぇ、いいなあ。晶子さんが上司なんて」

「そうですね。営業力も能力も、会社の中でずば抜けていました」

「でしょうねえ。彼女なら」

 ママ同士の付き合いだけでも、デキる女だったことはわかるらしい。麗菜は余計今の状況に甘んじる晶子を恨めしくおもった。ナナミは続ける。

「晶子さんは有能ですものね。仕事を手伝いたいという方も多いんですよ」

「仕事?」

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


変態案件!? サボテン界の不思議ちゃん「リプサリス」は人気もうなぎ上り
「ワタシ、変態なんで」が、口癖の花屋の男友達K。このコラムでもたびたび登場する彼の性格はよく知っているつもりですが、それ...
休暇や帰省時にも使える!「お土産何がいい?」への最適解LINE3選
 旅行に行っている友達から「お土産何がいい?」と聞かれたら、なんと答えていますか? 「◯◯がほしい!」と要求するの...
今「韓国女子旅」でしたい5つのこと~美・食・楽、そして初体験…30代・40代女性の「好き」がたくさん!
 2023年、女子旅で最も人気の旅行先と言えばやっぱり韓国! 日本中どこからでも飛行機で3時間程度で行ける気軽さに加え、...
[PR] 2023-08-21 18:27 ライフスタイル
かわいいけど今日はもう限界かも…子育てに行き詰ったママに捧ぐ対処法
 必死に子育てに取り組んでいると周りが見えなくなってしまい、限界を感じることがあります。仕事や家事に加えて育児となると、...
ナンプラーもバルサミコ酢も余るよね…“クセ強”調味料を使い切る対処法
 いろいろな調味料がある中でも、あまり使う回数が少ない調味料は余ることがありますよね。結局使いきれずに、賞味期限が切れて...
オニギリ柄のにゃんたま君の“たまたま”は汚れのない純真純白
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
山郷で梅雨を感じる 2023.7.3(月)
 遠くの山や空の色に溶けそうな青。  アジサイのもともとの色はピンクで、土が酸性かアルカリ性かによって変化するんだ...
結婚式にジーパン着用!? 「育ちが悪い」と“秒”認定されちゃうLINE3選
 育ちが悪いと、大人になった時にどうしても会話や行動に出てしまうものです。育った中で染み付いたものなので、なかなか悪い言...
毎日しなければならないことに生かされている 2023.7.2(日)
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
違う違うそうじゃない~!彼も同僚もママ友も…何かがズレてるLINE3選
 あなたが「もういいや」と返信する気を失うのはどんなLINEですか? 話が通じない相手や、価値観が異なる相手とのLINE...
癒しの漫画/第52回「一難去って…」
 ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、突然「コクハク」に登場! 生きものたち、その生きものたちをこよな...
何が大変? できるなら避けたい! 子どものPTA活動で苦労する5つのこと
 子供がいると仕事や家事で忙しいうえに、学校でのアレコレに参加しなくちゃいけなくて……。特にPTA役員に選ばれると苦労し...
ロッカン、ロッカン痛ぇ…!
「ロッカン! ロッカン!」という歌に合わせて、シャカリキに踊っている。その「ロッカン」とは「第六感」のことだ。  ...
一息ついて水音に耳を澄まそう 2023.6.30(金)
 あしたから7月に突入。衣替えが終わったと思ったら、今年も酷暑の予感だって。  季節に追いかけられて、頭がぐるぐる...
「図々しい人=自分の損に過敏な人」を撃退する唯一の方法
 もうここでぶっちゃけますが、図々しい人って良識がない人が多くないですか? 良識がないから図々しいのか、図々しいから良識...
新生活の疲れが出る時期です…自分に甘々!とっておきの疲労解消法6選
 新年度が始まり、3カ月が経ちます(1年単位でいえば半分を折り返しました……)。転職や異動などで今までとは違う生活になり...