『あんぱん』RADWIMPSの主題歌は本当に「合っていない」のか? 正統派・朝ドラOPの真逆を貫いた意味

コクハク編集部
更新日:2025-04-08 06:00
投稿日:2025-04-08 06:00

「ヒーロー物へのアンチテーゼ」だったアンパンマン

ーー確かに…。そんな「朝ドラと合わない」という意見についてどう思いますか?

 私個人としては、合わないとはあまり思いません。今回は近年の朝ドラの中でも、人々をにぎやかに楽しませ元気づけるマンガ・アニメといったエンタメコンテンツに非常に近い人(やなせたかし夫妻)の物語になるはずなので、優しさや爽やかさより、明るさやエネルギッシュなポップさが曲調に現れるのは1つの物語解釈として全然アリ。

 加えてそもそもアンパンマンは、やなせ先生の戦争従軍体験・生きる意味を問う人生哲学というかなり重い主題が誕生背景で、当初はヒーロー物へのアンチテーゼとして生まれた作品です。優しいが強くはない、自己犠牲のヒーローでした。そのため従来の朝ドラ主題歌の真逆を行く、マイナス感情を誘発する曲調かつマイナー調のアッパーな曲という整合性も取れていると感じます。

 おそらく『あんぱん』と合わないというより、多くの人が持つアンパンマンのイメージと合わないという感情に近いのではないでしょうか。また、物語の重要なモチーフが従来の朝ドラに比べ、大勢の人々に知れ渡っているからこそ起きている齟齬な気も…。


強烈な妻と優しい夫の2面性を表す楽曲

ーー登場人物との親和性についてはいかがでしょうか。

 同時に今回の主人公・浅田のぶは、おそらく通常の朝ドラ女性主人公に比べかなりエネルギッシュかつアグレッシブな女性になるはずです。なぜなら主人公のモデル・小松暢は、地方紙の初女性記者になったいわゆる当時のバリキャリ&亭主関白の色濃い時代で夫・やなせに「(漫画家としての)収入がなければ私が働いて食べさせてやる」と言い放つ肝の太い女性。

 余談ですが、高知県の勝気な女性を示す”はちきん”はそもそも「8つ金玉があるほどの男勝りさ・豪快さ」が語源です。そのためむしろ楽曲に対しては、彼女の強烈な個性たる闊達さと女性の普遍的なしなやかさ、あるいは妻・のぶの活発さと夫・嵩の優しさ。2つの物語の側面をとても上手に落とし込んだな、と感じました。

ーー批判がある一方で、「かっこいい」「最高だった」「RADらしい」というコメントも見かけます。

 似たようなテイストのRADWIMPS従来曲であれば、マイナーコード的な曲調は直近の配信曲「大団円」「KANASHIBARI」のニュアンスも汲んでいるし、近年の映画関連曲「愛にできることはまだあるかい」「すずめ」のような壮大さも曲の聴き所であるサビにはしっかり入っています。

 また一聴しただけでは確かにやや聴き取りにくい、言葉遊びのようなフレーズやオクターブの音域を使う歌のメロディもバンド最初の人気絶頂期となるメジャーデビュー直後、00年代後半からすでに頻出していた曲表現の印象。

 なので、繰り返しになりますが「賜物」は端的に言うと、典型的かつ多角的なRADWIMPSらしさ全開の曲だと思います。

視聴率同様に評価も上がっていくか

 初回放送の視聴率は『おむすび』を下回っていたものの、徐々に上昇。第1週第4回は番組最高の15.5%を記録するなど盛り上がりをみせている『あんぱん』。RADWIMPSの主題歌に対する評価も変化していくか。

(編集MS)

コクハク編集部
記事一覧
コクハクの記事を日々更新するアラサー&アラフォー男女。XInstagram のフォローよろしくお願いします!

エンタメ 新着一覧


坂口健太郎に逆セクハラ騒動。永野芽郁にmiwaとも…BLACKPINK リサだけじゃない“女性に押される”男の特徴
 BLACKPINKのリサ(28)が国境を越えて、大炎上中だ。今年2月にリリースしたソロデビューアルバム『Alter E...
田中麗奈、45歳。心も体も変化するなか、ずっと変わらない“芝居”への気持ち
 多くの人の心をつかんだ「なっちゃん」のCMの初代キャラクターに始まり、映画『がんばっていきまっしょい』『はつ恋』、近年...
望月ふみ 2025-08-24 11:45 エンタメ
『あんぱん』のぶ、山に登って「ボケー!」は“征服欲”の成せる業か? アンパンマンの原型がついに爆誕
 のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)の別居生活が続く中、登美子(松嶋菜々子)から嵩の名前の由来を聞いたのぶは、ひとり山へ向...
桧山珠美 2025-08-28 15:04 エンタメ
ラウール、22歳の色気が破壊級!「愛の、がっこう」は“代表作”になると断言してもいい
 夏ドラマも中盤にさしかかりました。そのなかでも回を重ねるごとに盛り上がっているのが、木曜劇場「愛の、がっこう」(フジテ...
【芸能クイズ】松本人志が福山雅治と「HEY!HEY!HEY!」で作った“オリジナル料理”の名前は?
 テレビやネットでふと耳にした、あのひとこと。記憶の片隅に残る発言の背景には、ちょっとした物語があるのかも?  ネ...
「あんぱん」羽多子らの“あの言葉”にあんぐり…のぶも感動してる場合か。落語家の年齢も気になる
 嵩(北村匠海)は「まんが教室」という番組に出演してほしいという健太郎(高橋文哉)の頼みをしぶしぶ承諾する。そして第1回...
桧山珠美 2025-08-28 15:06 エンタメ
「あんぱん」のぶ、議員のコネ入社なのに“クビ”の謎。急成長したアキラ君と老けないオトナ達に酔いそう…
 嵩(北村匠海)が書いた詞にたくや(大森元貴)がメロディーをつけて生まれた「手のひらを太陽に」は、「みんなのうた」でも紹...
桧山珠美 2025-08-28 15:06 エンタメ
スキャンダル続出の花田優一、美女にモテまくるのは何故? 不誠実男に学ぶ「悪名は無名に勝る」メリット
 元横綱・貴乃花光司と元フジテレビアナ・花田景子を両親に持つ“親の十四光り”の花田優一。  現在、元テレビ東京アナ...
堺屋大地 2025-08-17 11:45 エンタメ
「あんぱん」八木(妻夫木聡)と蘭子(河合優実)、“何か”が始まっちゃう? 嵩は作詞能力をいつ見抜かれたのか
 舞台公演は成功裏に幕を閉じる。数日後、なぜかぼんやりした様子の嵩(北村匠海)。そこに、また一緒に楽しい仕事をしようとた...
桧山珠美 2025-09-04 12:26 エンタメ
カズレーザー、山里亮太…芸人はなぜモテる? 業界人が分析する「メロい」現象が起こりやすい納得の理由
 カズレーザーさんと女優の二階堂ふみさんが結婚した。週刊誌にも撮られなかったどころか、噂すらなかったので世間はびっくり&...
帽子田 2025-08-15 11:45 エンタメ
島崎遥香31歳、40代を迎えても「幸せの更新」方法は変わらない。カテゴライズせず“ぱるる”として生きていく
 昨年、初めての著書『ぱるるのおひとりさま論』(大和書房)を出版するなど、このところ「ひとりが好き」「結婚願望はナシ」と...
望月ふみ 2025-08-14 11:45 エンタメ
ドラマ『しあわせな結婚』の奇妙な違和感。松たか子らの“ちぐはぐさ”は計算どおりなのか?
『光る君へ』『ふたりっ子』『大恋愛』などで知られるベテラン脚本家・大石静さんの完全オリジナル作品として、夏ドラマの中でも...
「あんぱん」六原永輔=永六輔の“言葉”に違和感が…。いせたくや(大森元貴)らの記憶力も凄すぎる
 のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)は互いに隠していたことを打ち明け、新たに前を向く。それから7年の歳月が流れ――、未だ漫...
桧山珠美 2025-08-13 18:06 エンタメ
【芸能クイズ】ヒントは有名コンビ!「佐藤嘉彦・粋子」が本名な芸人は誰でしょう?
 テレビやネットでふと耳にした、あのひとこと。記憶の片隅に残る発言の背景には、ちょっとした物語があるのかも?  ネ...
空前のオカルトブーム! 大人も楽しめる「夏のホラーアニメ」3選。平成の“トラウマ級”作品が令和にリメイク
 近年、小説や映画を中心に巻き起こっているホラーブーム。Web記事から単行本化された小説を原作とし大ヒット映画となった「...
ヒカキンは本当に“聖人”だったのか? 炎上騒動で見えたトップYouTuberの人間くささ
 日本を代表するYouTuber・HIKAKIN(以下、ヒカキン)が、パクリ動画を公開したことで炎上しました。  ...
堺屋大地 2025-08-14 10:37 エンタメ