「時代とFUCKした男」加納典明(2)草間彌生さん主導で乱交パーティーが繰り広げられ、俺は…

更新日:2025-04-17 17:03
投稿日:2025-04-17 17:00

【増田俊也 口述クロニクル】

 写真家・加納典明氏(第2回)

 小説、ノンフィクションの両ジャンルで活躍する作家・増田俊也氏による新連載がスタートしました。各界レジェンドの一代記をディープなロングインタビューによって届ける口述クロニクル。第1弾は写真家の加納典明氏です。

  ◇  ◇  ◇

増田「渡米するときに国内では平凡パンチ以外にも何か依頼はありましたか」

加納「うん。あった。『ニューヨークから帰ってきたら加納さん、うちのギャラリーで個展やってよ』って言う人がいて『うん、いいよ。なんか撮ってくるよ』って。平凡パンチの仕事終わってから向こうでヌードやら街の景色やらスナップショットも随分撮った」

増田「そのときに草間彌生さんと会ったんですね」

加納「そうです。石川次郎が『ちょっと変なのがいるんだよ』って。当時、彼女は男根の大きな模型を無数に作って並べたり……ご存じですよね。あの時代です。ニューヨークでパフォーマーをやってた。他にも僕が撮った中にもアンディ・ウォーホル*のパフォーマーとかも写ってるんだけど、当時はニューヨークの芸術の超爆発の時期で、いろいろいた。草間さんはそういう人たちを集めて、例えばセントラルパークとか、街の中でそういうパフォーマンスしてましたね」
※アンディ・ウォーホル:20世紀のアメリカを代表する画家。版画家。芸術家。1928年、スロバキア移民の両親の元でペンシルベニア州に生まれる。カーネギー工科大学卒業後、ニューヨークへ移った。1961年、キャンベルスープの缶や紙幣をモチーフにして描いて大ブレーク、ポップアートの旗手となって世界の美術界を牽引した。

増田「まさに世界の芸術が変わるその瞬間の時ですね」

加納「うん。で、僕もブルックリンブリッジの上とか、セントラルパークとか、普通だったらパーミット(許可)は絶対おりないようなところでヌードを撮りましたね」

増田「ゲリラ撮影ですね」

加納「そう。撮ってはサッと逃げるというやり方で。例えばウォール街なんかじゃ普通、ヌードは撮れないですよね。昼時に交差点の真ん中で、合図とともにモデルに脱がせた。それでバシャバシャ撮って待たせてあるポルシェのオープンカーに飛び乗って逃げたりね。ブルックリンブリッジやエンパイアステートビル。地下鉄でも撮ったし、セスナ機にモデルと一緒に乗ってニューヨークの夜景と一緒にヌード撮るとか。石川次郎なんか相当に苦労したと思う。それもやっぱり日本の雑誌でやった」

増田「そういうときに草間彌生さんと会って、あの伝説的な写真集『FUCK』に行き着くと」

加納「そうです」

増田「『FUCK』の撮影以外で典明さんと草間さんの関係は?」

加納「いや、もう全然ないです。その時だけですよ。で、その時も、『じゃあ加納さんのためにパフォーマンスしてあげます』って、イーストビレッジの彼女のスタジオに行ったわけですよ」

増田「マンハッタンですね」

加納「そう」

増田「1969年といったら、まさにイーストビレッジに芸術家やヒッピーたちが住み着くようになった頃。カウンターカルチャーの世界の中心地となっていく」

加納「そのとおりです。それで草間さん、何をやるのかなと思ったらいきなり乱交パーティーですよ。いったいなんだこれはと思いつつ、撮るっきゃねえっつうんで、もう撮りまくった」

増田「衝撃的な光景ですね」

加納「そう。乱交パーティーなんて、見たことも、やったこともないわけでしょ。それも男と女、男と男、女と女、男女入り乱れ、白人黒人入り乱れ、あそこに入れたり、ここに入れたり、口でくわえたり。俺はそれを見ながら善悪も何も考える暇もない。とにかくシャッターを切った」

増田「乱交には草間さんも参加してるんですか」

加納「いや、セックス自体には参加してない」

増田「コーディネーション?」

加納「ハンドリングですね」

(第3回につづく=火・木掲載)

▽かのう・てんめい:1942年、愛知県生まれ。19歳で上京し、広告写真家・杵島隆氏に師事する。その後、フリーの写真家として広告を中心に活躍。69年に開催した個展「FUCK」で一躍脚光を浴びる。グラビア撮影では過激ヌードの巨匠として名を馳せる一方、タレント活動やムツゴロウ王国への移住など写真家の枠を超えたパフォーマンスでも話題に。日宣美賞、APA賞、朝日広告賞、毎日広告賞など受賞多数。

▽ますだ・としなり:1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一ノンフィクション賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が好評発売中。

エンタメ 新着一覧


松坂慶子転生、宮﨑あおい降臨! 惜しむらくはOPクレジットの表記バレ
 寿恵子(浜辺美波)は渋谷の店を売ったお金で、東京郊外の大泉村に土地を購入。  万太郎(神木隆之介)の夢と、万太郎...
桧山珠美 2023-09-25 14:42 エンタメ
宮司愛海アナは男を見る目も違う!イケメン選手のいるところ女子アナあり
 フジテレビ・宮司愛海(32)アナの熱愛が発覚しました。  お相手はKing Gnu常田大希のお兄さま。そっち方面...
“辞めジャニ”山Pが民放連続出演の当然…“滝沢TOBE”平野紫耀らに追い風
 ジャニーズ事務所が創業以来の一大事で揺れる中、“辞めジャニ”成功例の筆頭である山下智久(38)が民放TV出演本格復帰の...
こじらぶ 2023-09-23 06:00 エンタメ
寿恵子から万ちゃんへ、揺るがない愛の台詞「涙が出るほど愛おしいです」
 地震からおよそ1カ月。渋谷の景色は一変。多くの人で賑わっていた。  万太郎(神木隆之介)は、ムラサキカタバミの植...
桧山珠美 2023-09-22 15:00 エンタメ
羽生結弦のお相手が判明! “ママと仲良し”男性の妻に必要な素養とは?
 8月4日、電撃結婚を発表したフィギュアスケーター・羽生結弦(28)。世界中が注目していた相手について、今月16日に「週...
さすが!寿恵子の娘・千鶴(本田望結)は最先端をいくモダンガール
 関東大震災で被災した万太郎(神木隆之介)たちは、寿恵子(浜辺美波)の店のある渋谷へ向かった。渋谷一帯は被害が少なく、「...
桧山珠美 2023-09-21 15:50 エンタメ
万太郎と徳永(田中哲司)の名シーン、別れも「万葉集」で心ぴたり
 万太郎(神木隆之介)は徳永(田中哲司)に辞表を提出。植物学教室を去る日、佑一郎(中村蒼)が大学へやってくる。翌年度から...
桧山珠美 2023-09-19 16:57 エンタメ
東出昌大「5時に夢中」で謙虚炸裂! 出演映画では私生活の修業を生かす
 東出昌大(35)の評判が爆上がり中です。  現在、映画「福田村事件」(森達也監督)に出ており、宣伝を兼ね、ぼちぼ...
「そんな若じゃき、ワシは愛したじゃが」竹雄の言葉に蘇る2人の歴史…
 逸馬(宮野真守)が連れてきた資産家の永守(中川大志)は、万太郎(神木隆之介)の図鑑の出版や標本の保存に投資をしたいと申...
桧山珠美 2023-09-16 16:20 エンタメ
田中みな実「三太郎」CMの鬼嫁が好評、元彼ネタ散りばめ行きつく先は?
 フリーアナウンサーで俳優の田中みな実(36)が絶好調だ。12日にはティファニー表参道のオープニングイベントにベージュの...
野暮な演出はナシ!万太郎と早川(宮野真守)感動の再会までテンポよく
 徳永教授(田中哲司)から、国が推し進める神社合祀令を神狩りだと断じ、反対する南方熊楠には深入りするな、と釘を刺された万...
桧山珠美 2023-09-14 14:50 エンタメ
配役に一本の筋…小林一三役・海宝直人は日本のミュージカル界を背負う男
 日本全国の植物を載せた図鑑がまもなく完成しようとしていた。が、浮かない様子の万太郎(神木隆之介)。これまで応援してくれ...
桧山珠美 2023-09-11 16:10 エンタメ
ジャニーズ会見で水がぶ飲みの東山新社長、イノッチは結婚指輪はめる派だった【写真付き】
 先週のトピックはなんといっても、7日に行われた故・ジャニー喜多川氏の性加害問題についてのジャニーズ事務所会見でしょう。...
安藤美姫は私生活の切り売りも辞さない…愛娘との2SHOTの先に“奥の手”
 フィギュアスケートの元世界選手権女王、安藤美姫(35)が6日に自身のInstagramに投稿した10歳の娘・ひまわりち...
万太郎夫婦の2カ月ぶりの夜…寿恵子お手製渋谷マップは一見価値あり!
「歩いて、観察して、万太郎さんならそうする。行こう、渋谷が私の横倉山になるまで」  新たな決意を胸に、再び渋谷へ向...
桧山珠美 2023-09-08 16:06 エンタメ
ただ落涙!去りゆくひとに“花道”、万太郎の手には亡き長女・園子の絵
 大学に辞表を提出した野宮(亀田佳明)、東京を去る前に長屋を訪れ、生まれたばかりの千鶴を含む槙野家の肖像画を描く。 ...
桧山珠美 2023-09-06 14:11 エンタメ