「あの人が…なんで?」地味ママの“富豪人脈”に呆然。勝ち組を演じていた女の勘違い

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2025-09-13 11:45
投稿日:2025-09-13 11:45

綾乃の元に本物の「セレブ」から連絡が

『ごめんなさい、実はわたくし、お受験をしたのも熱心なお義母さまの指示で、さほど詳しくないんです。聞きたいことをお話しできるかどうか……』

 架空の義母を作り出し、熟考の末にメッセージを送った。すると、『お気を使わせてごめんなさい』と折れの返信がすぐに来た。

 拍子抜けするとともに、彼女がお受験に対してやはりそこまで熱はなかったのだと納得した。きっと、グループに入るため、話のきっかけに食いつきそうなワードを出しただけで、引っ込みがつかなくなっていたのだ。

 そんな時、スマホの振動と共に懐かしいアイコンがポップアップしてきた。

『おひさしぶり! お元気ですか? 藤堂です。

 夏のあいだ、しばらく子供たちと帰国する予定です。

 横浜にしばらく滞在するので、その間、お茶でもできたらうれしいです。』

 藤堂さん――起業家でもあり、現在はドバイに家族で暮らしている正真正銘のセレブリティだ。

 綾乃は千代田区のママ友グループにいた際、お受験の知識がないゆえに恥をかいたことがある。腫物扱いの自分をやんわりと指摘し、たしなめてくれたのが彼女である。

 当時は自分を否定されたような気分になったが、藤堂さんに悪気はなく、その指摘があったからこそ現在の悠々自適な暮らしができている。マンションがあんなに高く売れるとは思わなかった。

 逃げるように武蔵小杉に引っ越した際も、彼女にだけは手紙でお礼と引越し先を告げた。そのくらい、綾乃は感謝している。

レベルを上げるために必要な相手だ

『ご連絡、とても嬉しいです。ぜひ会いたいです。
 仕事をやめ、今は専業主婦なので、時間は合わせられます』

 藤堂さんは、The Kahala Hotel & Resortに1カ月近くいるという。ハワイの名門ホテルの名を冠した横浜屈指のラグジュアリーホテル…一度だけ、誕生日のお祝いのアフタヌーンティーに、子どもを実家に預け夫と訪れたことがある。

『よければ、我が家にきませんか? 藤堂さんの家に比べれば狭いですけれど』

 綾乃は訪問したい想いもあったが、行ったら行ったで、再び天井を見させられて落ち着かないだろうと思った。誘われる前に自らのテリトリーに誘った。

『綾乃さんのおうち? 行きたいわ』

 藤堂さんは喜んで受け入れてくれて、とんとん拍子に日時も決まった。綾乃はさっそく、マンション高層階にあるゲストルームの予約を入れる。

 彼女にだけは何でも話せる関係だが、やはりどこか背伸びをしてしまう。

 一方で藤堂さんは綾乃にとって、自らの気持ちのレベルを上げるために必要な相手なのだ。一緒にいると自分も同じステージにいるように思えるから。

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


“にゃんたま”は神様の化身?幸せを呼ぶまあるい鈴カステラ
 あけましておめでとうございます。今年も「にゃんたま詣」でスタート!  神社で動物に出逢うのは、神様の歓迎サインと...
ご祝儀は新札しかNG? 土日の入手方法やアイロンでの作り方
 友人の結婚式が近づいて、美容院の予約やドレス、靴の手配まで完璧なのに「ご祝儀の新札がない!!」と焦った経験はありません...
来年は猫年じゃない? 干支に入れず恨み節の“にゃんたま君”
 昔、神様は元旦に動物たちにあいさつに来るよう言いました。12番まで先着順に、年の動物になれるという大イベントでした。 ...
本当に自分のために? 素直に聞くべきアドバイスの見極め方
 昔から「素直さは大切」だと言われます。大人になっても素直さを忘れずに、周囲のアドバイスを聞き入れられる人のことは尊敬し...
脱いだ作家を守るために…作品を山に埋めた編集者の話 #3
 投資していた友人の失脚により、K社長はブラックな債権者から追われる身となりました。  社長は行方をくらまします。...
縁を切るべき友達の5つの特徴&上手に縁を切る方法とは?
 どんなにコミュニケーション能力が高い人でも、「苦手だな」「付き合いにくいな」と感じる人は、誰にだっているもの。仕事の付...
後ろ足で器用にポリポリ…一緒に“にゃんたま”も揺れちゃうの
 きょうは、首元がカユ~イにゃんたま君です。  首を掻くのに、うしろ脚を使うなんて…ニャイす!  一本だけ爪...
脱いだ作家を守るために…作品を山に埋めた編集者の話 #2
 自分の作品がヘアヌードブームに引っかかることも、世間はこんなにエロが好きで、女性のヌード=男性の下半身への奉仕物、と見...
脱いだ作家を守るために…作品を山に埋めた編集者の話 #1
 女が脱ぐ仕事をするのには、いまも昔も危険や煩わしいことが付きまといます。  私自身、音楽をやっていた頃に自分の作...
お葬式に黒いタイツはダメ?寒い日の防寒対策&喪服のマナー
 真冬にお葬式に参列することになった時、黒のストッキングでは足元が寒いことってありますよね。でも、暖かい格好で行こうと思...
配信者にとっては厄介!「察してもらいたい欲」がすぎるひと
 ライブ配信は、まさに魑魅魍魎(ちみもうりょう)がうごめく世界。今日も今日とて、多くのライバーやリスナーは、配信をめぐっ...
この匂いはあの子かにゃ?チェックに余念のない“にゃんたま”
 猫の嗅覚は、人間の嗅覚の数万倍から数十万倍鋭い、といわれています。  猫の鼻先は常に湿っていて、空気中に流れてい...
今年の実付きは最高!「千両」と共に迎える幸せなお正月
「今年の千両、実付きがいいよ!」  花市場でいつもお世話になっているセリ人のお兄様が電話の向こうで叫んでおります。...
旅行できない今こそ…年末年始におすすめグルメサービス2選
 政府の観光支援策「Go To トラベル」の全国一斉停止が決まり、年末年始の予定を変更した人も少なくないはずです。こんな...
静かな時間の終わりなき毛繕いに感じる“にゃんたま”の美学
 男には自分の世界があるらしいと知ったのは、小学校低学年の頃。  テレビでルパン三世のアニメのテーマ曲が流れていて...
人と仲良くなる6つのコツ&友達作りが上手な人の共通点♪
 社会人になってから、「人付き合いに苦労している」という人は多いはず。学生の頃には、無難にこなしていたはずの人付き合いが...