河島英五さんは、優しく包み込むような温かい雰囲気でその場の空気を変えてしまうような存在感のある方
【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#264
河島英五さん
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「酒と泪と男と女」「時代おくれ」などのヒット曲で知られる河島英五さん(享年48)。白いジージャンとジーンズ姿は182センチという実際の身長以上に「大きい人」というイメージが今でも残っています。
愛嬌をふりまくというタイプではありませんでしたが、その歌い方同様に、飾り気のない、朴訥としていながら、優しく包み込むようななんとも言えない温かい雰囲気でその場の空気を変えてしまうような存在感のある方でした。
テレビのゲストで出演された際、数あるヒット曲のお話をされ「そら、売れたらうれしいけど、これをヒットさしてやろうと思って作ったこともないし、作っていただいた曲も自分が歌いたいようにやってきただけなんで、それを喜んでくださる方がたくさんいてくれてはって、カラオケで自分の持ち歌にして歌ってくれてはるいう人が多いらしいんで“俺とおんなじ気持ちでいてくれたはんねや”と思うとうれしいですね」とちょっとはにかむように照れくさそうに話されていたのが印象的でした。
これからのことを伺っても「年を重ねていったら、その時その時で思うことも変わってくるやろうし。その時の素直な気持ちを歌にして好きなように歌っていけたらそれが一番ええんちゃいます?」と、あくまで自然体で流れのまま身を任せているという感じでしょうか。
阪神・淡路大震災の被災者へ向けた「復興の詩」というチャリティーコンサートも主催されていましたが「僕ができることは歌うことだけやから、ひとりでも多くの方に聴いてもらう。それしかないからね。まだまだ困ってはる方もぎょうさんいたはるし、自分が歌うことでちょっとでも助けになるんやったら続けられるうちは続けていきたい」と遠慮がちに言っておられました。「予想以上に大きい」と感じたのは、こういう心根のやさしさからもきていたようです。
番組収録後、MCのトミーズ雅くんが「河島さんどっか悪いんちゃうかな? なんか違うねん」と真剣な顔をして言っていました。それまで雅くんが、こういうことを言っているのを聞いたことがなかったし、私もスタッフも、がっちりした体格は健康そのものだとまったく気になりませんでしたが、数カ月後に急逝の報を受け、あの時の雅くんの言葉が蘇りました。河島さんご自身は体調不良を感じておられたのか、知っておられたのか、今となっては知る由もありませんが、私には気づかないなにかを感じとっていたようです。
48歳という若さでしたから、これからまだまだ数多くの心に響く曲を作られ、歌われていただろうなと思うと残念でなりませんが、数々の名曲とともに「河島英五」という名前も後世に引き継がれていくことでしょう。
(本多正識/漫才作家)
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