月吹友香さん<前> 私がR-18文学賞で高齢者の性を描いた真意

コクハク編集部
更新日:2019-10-18 12:35
投稿日:2019-10-16 06:00

贈呈式で語った「この賞しかない」の真意

初めての応募で大賞

――選んだテーマの正しさを再確認したわけですね。R-18文学賞は初応募で大賞を受賞されました。贈呈式で語った「この賞しかない」の真意をお聞かせください。

月吹 受賞については、運が良かったとしか言いようがありません。ただ、R-18文学賞は男性の目線を全く意識せずに書けるぶん、女性にとってとても自由な賞だと思います。

――というと?

月吹 他の文学賞では下読みや審査員に男性がいるので、性別関係なく共感してもらえる人物を描く必要がある。少なくとも私の中にはそういう意識がありました。それを取っ払ってのびのびと自由に書かせてもらえるのがいい。もちろん、R-18文学賞の作品も日の目を見ることになれば、男性の目に触れるかもしれないけれど、とにかく書いている時は大人の女性へ伝えたい一心でした。その自由度はとても大きく、最終選考に残ったという連絡をいただいた時に「本当にこの文学賞は懐が深いな、含意を組んでくださっている」と思いました。感謝しかありません。


  ◇  ◇  ◇


 タイトルの「赤い星々は沈まない」は昨年、家族でペルセウス座流星群を見に行った時にピンときたもの。四方八方に広がる明るい星々の間で地味に赤く光る火星に、じわじわと燻る女性の性との共通点を感じたといいます。

 同作品では老女の性を描く一方で、主人公であるアラフォー看護師の夫婦間のセックスレスについても描いています。日本人夫婦の半数は夜の営みが枯渇している状況……改善策はあるのでしょうか。

 後編に続きます。

(聞き手・文=小川泰加/コクハク編集部)

▼つぶき・ともか 1978年生まれ、東京出身。銀行勤務を経て主婦へ。「赤い星々は沈まない」で第18回「女による女のためのR-18文学賞」大賞受賞。好きなお酒は広島の地酒「雨後の月」とモヒート。

※「女による女のためのR-18文学賞」…新潮社が主催する女性限定の公募新人文学賞。年齢制限はなく、15歳の熟女でも80歳の少女でも応募OK。2002年の第1回から10年間は「女性が書く、性をテーマにした小説」を広く応募していたが、第12回(2012年度)以降は官能描写の濃淡に関わらず、「女性ならではの感性を生かした小説」を募集。現在は第19回(2020年度)の作品応募が始まっている。

コクハク編集部
記事一覧
コクハクの記事を日々更新するアラサー&アラフォー男女。XInstagram のフォローよろしくお願いします!

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


遠いあの子を思い出す…センチメンタルな“たまたま”にホロリ
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
こんな言葉を聴きたくて、僕らは旅に出るのかもしれない
 兵庫県神河町のサイクリングコース「越知川名水街道」にやってきた。  壮大な景色をバックに、あたたかいメッセージに...
P活、頂き女子…「パパ活」のことばも進化し続けている
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
ほっこり癒し漫画/第66回「保護猫探偵ハッシー」
【連載第66回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、突然「コクハク」に登場! 「しっぽ...
ホームパーティーの会費どうする?主催するメリット&お招き時のマナー
 気の合う仲間と自宅でゆっくり食事を楽しめるホームパーティー。コロナもひとまず落ち着き、ブーム復活の兆しです。  ホー...
中学受験のプロが推薦 御三家でも新御三家でもない将来安泰の「中堅校」
 今年の中学受験シーズンも真っ只中。首都圏では、1月10日に埼玉県、1月20日に千葉県、そして2月1日には東京都と神奈川...
アラフォー女性のリアルがここに! 元旦に誓った今年の目標
「一年の計は元旦にあり」とも言われるように、年のはじめに計画を立てることはとてもいいことです。でも、一年の目標に何を掲げ...
話し合い好きは平和主義?むしろ支配欲強め!一歩間違えるとモラハラに…
 話し合いで解決を図る人、みなさんはどんな印象がありますか? たぶん平和的とか、論理的なイメージが強いのではないでしょう...
美STの開運マスク付録ってなに?ドモホルンリンクルは一式試せて嬉しい
 今回ご紹介する雑誌付録は、「美ST」2024年3月 増刊号(松嶋菜々子表紙)の「開運&美肌見え! PITTA MASK...
なんて素敵な夫! ド近眼の妻にICLを提案した「永久保存版トーク」
 昨年の夏頃から計画して、お正月明けに眼内にレンズを挿入して視力を矯正するICLの手術を受けました。  小学生の頃から...
「正」の字に振り回されて…
 はいっ、新しい年が始まりました。みなさん、お正月は楽しく過ごせましたでしょうか。  お正月の「正」の字には、「あ...
YOUはどうしてバンザーイ?  全開“たまたま”にあれこれ妄想
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
季節の中へ向かう道で 黄色のまぶしさに目がくらんだ
 鮮やかな黄色がまぶしくて思わず目を細める。季節の色ってなんでこんなに力強いんだろう。  葉も実も花も落ちて枝だけ...
冬の園芸は難しい?花屋が教える「ご注意あそばせ」な4項目
 お花屋さんは1年中忙しいイメージがあるかもしれませんが、寒さこたえる1、2月は比較的まったりムード。慌ただしかった年末...
「財布落とした」→先週もだよね? サボり言い訳LINEはリスト化必須
 普段、一生懸命仕事をしていても、人間なら時には「サボりたいな」と感じる日もあるはず。  でも困るのが、サボるため...
生まれた性別で誰かが誰かに恋をした きっとそれだけのこと
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...