更新日:2019-12-14 06:00
投稿日:2019-12-14 06:00
聞けなかった「母のレシピ」
実は8年前、私の母は末期がんで余命宣告を受けました。当時75歳で、残された時間は、1年未満。あまりに突然のことで、“人生会議”どころか、“人生雑談”する余裕さえありませんでした。宣告された母のショックは察するにあまりあるものがありましたが、娘の私にとっても1年ほどで母を失うというタイムリミットの設定は、とても受け入れがたかったことを覚えています。
母に生きてほしいという思いはあっても、ショックに塞ぎ込んだ母を前に、望む治療法の相談などできませんでした。もしものときが現実になると、ACPを話し合うことなどできないことを思い知らされたのです。もちろん、母に聞いておきたいことはたくさんありました。でも、ほとんどが聞けずじまいです。
私が知りたかったことの一つは、料理上手な母のレシピでした。状況が状況だっただけに、「あの味付け、教えてほしいねん」とは言えません。今でも母の味を思い浮かべながら、私なりに母の味を再現しようとしていますが、どうしても母の味には決まりません。
もし、母の不幸が訪れる前に、「人生会議」のようなポスターを見ていたら、当時の状況は変わっていたかもしれません。末期がんを告知される前の母に、「いろいろと話し合っておいた方がえぇらしいでぇ」と、晩年のことを話し合うキッカケになっていた可能性はあるでしょう。
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