卒業発表後の「黒い羊」発売記念全国握手会
のちの回でも詳述するが、長濱は7月まで欅坂46のイベントに参加、正式な卒業日は彼女の卒業イベント「ありがとうをめいっぱい伝える日」が行われた7月30日になる。
結果論だが、平手は長濱の正式な卒業日からわずか半年足らずでグループを後にしたことになる。くしくも欅坂46のツートップといわれた平手、長濱2人とも、同じ8thシングル「黒い羊」を最後にグループを後にした形となった。
卒業発表のわずか2日後、3月9日には「黒い羊」発売記念全国握手会が千葉(幕張メッセ)、同月16日には愛知(ポートメッセなごや)、21日には大阪(インテックス大阪)で予定されていた。
“全国握手会”というイベントタイトルだが、握手会の前には同シングル収録曲を披露するミニライブが存在する。
17年6月に握手会で襲撃を受けて以降、平手は握手に立てなくなっただけでなく、握手会会場で行われるミニライブにも出席ができなくなっていた。
17年10月発売の5thシングル「風に吹かれても」、18年3月発売の6thシングル「ガラスを割れ」では3会場をどちらも全欠席。
さらに時間を経て、18年8月発売の7thシングル「アンビバレント」ではかろうじて、最初の愛知会場のみ、1年3カ月ぶりにミニライブに参加したが、握手会会場というトラウマと、前述した仙腸関節不安定症および遠位橈尺関節痛の症状が出始めたころが重なったのだろうか。残念ながらパフォーマンスは筆者が見てきた限りで最も低調なものに終わった。
終始うつむきがちで覇気がなく、身体全体に力が行き届かない様子で、苦悶の表情も見て取れた。結局その後の千葉、大阪会場は欠席となった。
長濱の大事な握手会
しかし平手はこの長濱卒業発表後の19年3月に行われた「黒い羊」の全国握手会ミニライブには、3会場全てに参加した。握手会襲撃事件以来、最初で最後のことだった。
「黒い羊」の強く重すぎるメッセージを体現することは、平手にとって「命を削る曲」という魔曲「不協和音」と同じか、あるいはそれ以上に心身を激しく消耗するものだった。振付けもぶつかり合ったり、突き飛ばされたりと激しいものだった。
ケガの状況もとても完治とはいえないものだっただろう。このミニライブ後の画像は公開されていないが、わずか2、3週間後のライブ後には“大事をとって”といいつつも、車椅子を使用する平手の姿がいくつも確認された。
それでも、このイベントは、長濱が多くのファンとさよならを交わす大事な握手会だった。
襲撃事件後2年弱の間、握手会前のファンとの接触が無いミニライブでも3会場完遂を出来ていなかった平手が「黒い羊」のみ全てやり切ることができたのは、楽曲を届けたいという思いはもちろん強くあっただろう。
しかし長濱との最後の握手会、自分以上に過酷な時間を過ごすことになる彼女のために付き添ってあげた、そんな意味もあったように思える。
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