韓国映画「パラサイト」を観て“私も…” 風俗嬢が語った苦悩

ミクニシオリ フリーライター
更新日:2020-03-26 06:00
投稿日:2020-03-26 06:00
 米アカデミー賞4冠に輝いた韓国映画「パラサイト 半地下の家族」は、半地下に住む家族が金持ちに“パラサイト”していくストーリーです。映画を観た人たちがさまざまな感想をSNSにアップする中、「私もどうしようもないパラサイトだ」とSNSにつぶやいていた風俗嬢が気になって、話を聞いてきました。

風俗店の店長宅に住む一人の“パラサイト”風俗嬢

 その風俗嬢は由香里さん(仮名・28歳)。彼女が今パラサイトしているのも、ある一人のお金持ち男性なのだといいます。

「風俗を始めたのは3年ほど前です。勤めていた会社があまりにブラックすぎて、自律神経失調症になって電車にも乗れなくなり、仕事を辞めたことがきっかけでした。実家は九州ですが、親はネグレクト。実家にはもう帰りたくなくて、職のない私が東京で生きていくには、これしかなかったんです。

 デリヘル嬢になって数年たったころ、いつの間にか勤め先の風俗店の店長のことが好きになっていました。店長は、デリヘルの稼ぎだけでは足りなかった私を、自分の家に住まわせてくれました。3LDKのマンションに一人暮らしで独身の店長。40代の店長と同じ屋根の下で暮らすうちに、いつの間にか関係はできていましたし、そのころには自分を救ってくれた店長のことが好きになっていました」

 生活難を救ってくれた店長の3LDKに住み始めた由香里さん。いつの間にか居候として定住し始めて2年、こうしてお金持ちにパラサイトしてしまったのだといいます。

ここから出たら生きていけないという苦悩

 ただ、由香里さんのパラサイトは、実質もう破綻しかけているのだと言います。映画を観た彼女は「自分もいつかどうしようもなくなる時が来るし、その時はすぐそこに迫っていると思う」と話します。

「店ではサバを読んで22歳として出勤しています。だから、お客さんは“まだまだこれからだね”って言ってくれるけど、実際はもう三十路。お茶を引く時間も多いですし、店長が一生懸命取ってきてくれた仕事をこなしても、一人で生活できるほどは到底稼げません。

 歳を取れば取るほど、どんどん仕事はなくなるでしょう。そうなる前にこの仕事から足を洗わなきゃいけない。でも、この仕事を辞めるなら店長とは一緒にいられないし、私は家を出ることになるのでしょう。店長は結婚願望もなく、私とは関係があるだけで、交際する気がないといいます。

 ずっと一緒にはいられないし、それは私が売れないから。そう思うと辛くて、映画を見た時にも“ああ、私もとんでもないパラサイトなんだ”と実感してしまいました。

 破綻はすぐそこに迫っているのに、私はどうすることもできません。追い出されるのが先か、仕事が全く取れなくなるのが先か……。この仕事を辞めたら、どうやって生きて行けばいいのか。さっぱり分からないけど、一秒でも長くやるしかないんです」

 そう力なく笑った由香里さん。整形も視野に入れながら、少しでも長く仕事ができるように頑張りたいと言います。

終わりに

 由香里さんは、一度パラサイトしてしまうと、どうやって以前の生活に戻ればいいのか分からなくなる、とも話していました。楽な生活を覚えてしまうと戻れない。破綻と困窮が目の前に迫っていても、その時を待つしかないのだと。

 何かにパラサイトした生活は楽ですが、自分に選択肢がなくなってしまうというデメリットもあります。いつの間にか、パラサイトする相手がいないと生きていけない、つまり、生活の権限を人に握らせてしまうことになるのです。

 こういった生活は、私たちの身近なところでも本当に起きていることなのです。彼女は3年後、一体どんな生活をしているのでしょうか。

ミクニシオリ
記事一覧
フリーライター
フリーランスの取材ライター・コラムニスト。ファッション誌や週刊誌、WEBSITEメディアなどで幅広く活動。女性向けのインタビュー取材や、等身大なコラム執筆を積極的に行う。いくつになってもキュンとしたい、恋愛ドラマと恋バナ大好き人間。
XInstagram

ライフスタイル 新着一覧


「見慣れる」ってこわい 散らかった部屋を眺めて考えたこと
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
日用品は見た目も大事よね♡ 好みの香りで良質な睡眠時間を
 コクハクリーダーズ1期生の「あんず」と申します。今回、ワクワクしながら新商品を使う機会に恵まれました。  日常生活で...
2023-12-16 17:32 ライフスタイル
コスパ最強!シクラメン超長生き育成術、この冬は美しい姿をキープさせる
 暖冬にも程がある2023年師走ですね。  カントリー風情たっぷりの立地にある猫店長「さぶ」率いる我が愛すべきお花...
温泉旅行を計画中! でも浴衣の下は何が正解? オトナ女性の3つの選択肢
 彼氏や女友達と楽しむ温泉旅行。最近では旅館に添えつけの浴衣が用意されているところも多いですよね。  でも浴衣姿で...
ふわっと何かが降り立った? 神々の宿る土地の光は優しい
 夜道を歩いていたら、ふわっと何かが降り立った気がした。  振り返ると黄色い稲穂が揺れていた。でも全然怖くはなかっ...
尾道の町並みより絶景也! 恥ずかしがり屋のクロ“たまたま”
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
悪臭漂う子どもの地獄汚部屋にもう限界!私がブチ切れた“ゴミ袋事件”の夜
 ステップファミリー6年目になる占い師ライターtumugiです。私は10代でデキ婚→子ども2人連れて離婚→シングルマザー...
ぼっちの年越し最高!大人の女性だからこそ許される“心の洗濯”プラン5選
 お正月といえば、恋人と過ごしたり、実家に帰省したり、賑やかに過ごす人が多いですよね。でも実は今、ぼっちでも一人のお正月...
『姑息(こそく)』本来の意味は“ずるい”ではなく、一時しのぎ
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
ほっこり読み切り漫画/第63回「フクフクモフモフ規格外ナノダ」
【連載第63回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、突然「コクハク」に登場! 「しっぽ...
子、姪、甥への「お年玉適正価格」問題 親戚と決めた我が家のルールは…
 子供たちのお正月の楽しみといえば、なんといっても「お年玉」ですよね。でも、大人にとっては「親戚の子へのお年玉の額をどう...
【45歳からの歯科矯正】まじか。矯正8カ月で主治医から衝撃の提案が…
【これまでのお話し】 45歳で歯科矯正を始めようと思ったワケ(#1)/45歳女、5年越しにワイヤー矯正を決断!(#...
鮮やかな朱色にハッとする 見つけたのは秋が忘れていった物
 ずいぶんと歩いたけれど、ひときわ映える朱色にハッとして顔を上げた。 「秋の忘れ物」もきっと鳥に見つかって、最後は...
共働き夫婦はいつ洗濯物を干すのが正解? 一長一短な6つの選択肢
 現代では、多くの夫婦が共働きですよね。そこで問題となるのが「洗濯物をいつ干すか」という点です。特に朝からのフルタイム出...
「自信がない人」必見! 必要なのは“勇気”なのかもしれない
 突然ですが、みなさんは自信と勇気の違いって説明できますか? 私はよく自信がなくて悩むのですが、本当は「勇気のなさ」こそ...
節約は正義!家庭で過ごすクリスマスアイデア【飾りつけ編・レシピ編】
 一年の最後の大イベントといえば、やっぱりクリスマスですよね。特に子供のいる家庭では、部屋の飾りつけやパーティー料理など...
2023-12-07 06:00 ライフスタイル