呪文で周囲と分断し過去を否定させる…優紀さんのケース#4

神田つばき 女と性 専門ライター
更新日:2020-04-08 06:00
投稿日:2020-04-08 06:00
 ほとんどのモラハラ男は、彼女や妻にモラルを押し付けていることを自覚していません。
「これは恋愛相手にモラルが欠如しているから、自分は相手を助けているだけ」――。
 同情や憐れみなどの感情が欠如しているサイコパスと違い、彼らは自分の愛情を信じて疑わないのです。モラハラ男は彼女の友人や親、職場などを敵視します。彼女に影響を与えるのは自分だけであってほしい、と強く願うからです。

いつでも一緒にいてくれる彼氏が傷ついた心を癒してくれた

 バイト先で知り合ったワンゲル部の3年生、B男と優紀さんは急速に親しくなりました。学食でもバイト先でも下宿でも、いつでも一緒にいてくれる彼氏の存在が優紀さんの心を明るくしました。B男は、内気な優紀さんをグイグイ引っ張ってくれるリーダータイプ。優紀さんは、カメラマンのA氏との出来事で傷ついたことも、いつの間にか忘れていったのです。
 
 A氏とのことで疎遠になっていたクラスメート(Cさんとします)も、「彼氏できたんだね。よかったじゃん」と学食で声をかけてきました。以前と変わらない親しい口調がうれしくて、コイバナで盛り上がりました。しかし、優紀さんが「彼はワンゲル部で…」と言ったとたん、「えっ、マジで……」とCさんの顔色が変わったのです。

 そのときB男が「一緒に帰ろう」とやって来て、会話はそこで中断しました。2人きりになるとB男は「今の誰?」とCさんのことをたずねました。クラスでいちばん親しい子で、ピアノバーでバイトしてて……と話すと、「ああいうタイプには気をつけろよ。利用されるぞ」と表情が険しくなり、驚いた優紀さんは口をつぐみました。

友人との切り離し、痛い過去の白状の強要

 B男はコンビニのほかにもバイトをしていて、「家庭教師のようなこと」と言っていましたが、下宿生にしてはお金に余裕があるようでした。その日、もうひとつのバイトから優紀さんの下宿に来たB男は、買ってきた自分の食事を黙って食べはじめました。

 いつもは優紀さんの好きなものも買ってきてくれるのに、今日はそれもなくピリピリしていて、優紀さんは黙ってB男の前に座りました。やがて、B男が切り出したのはCさんのことだったのです。

「失礼な女だよな。普通、自分の友だちの彼氏ならきちんと挨拶するだろ。どんな女だよ、あれ」

 はじめて見るB男の不機嫌な顔に優紀さんは言葉を失いました。

「ピアノバーなんて聞こえはいいけどキャバクラだろ? 俺のことも舐めるような目で見てたしな」

「そんなことないと思うよ…」

「前から気になってたけど、優紀は上から目線の友だちや親に影響されやすいよな。自分を確立しろよ! もしかして、優紀もそういうバイトしてたんじゃないの?」

「まさか…私はやってないよ!?」

隠していたことを彼氏から指摘されて

 口論のようになった優紀さんは動揺し、B男に聞かれるままに撮影のバイトのことを話さざるを得なくなりました。

「へえ、そいつが撮ったグラビア見たことあるな」

 B男はスマホでA氏の名前を検索し、作品を見はじめました。優紀さんの作品は掲載されていませんでしたが、もっとセクシーな表現や局部だけを隠したヌードもあり、B男の顔色がみるみる変わっていきました。

「優紀、お前、このカメラマンとやっただろ?」

神田つばき
記事一覧
女と性 専門ライター
離婚と子宮ガンをきっかけに“目がさめて”女性に生まれたことの愉しみを取り戻すべく、緊縛写真のモデルとライターに。私小説「ゲスママ」、イベント「東京女子エロ画祭」「親であること、毒になること」などを企画。最近は女犯罪者や緊縛表現者に関するZINEの制作・販売を開始。Xnoteblog

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


中年女の前髪問題、もう「600円カット」で良くない? “アンガ田中似”美容師の実力はいかほどか
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まっ...
“そういうこと”を求められて――芸能界で夢を追う娘からのSOS。頬はこけ、目にはクマ…送り出した母の後悔
 世間を揺るがす芸能界のさまざまな噂。ニュースとして報じられ、真実が明らかになることも増えました。現在は清浄化が行われて...
花粉症の敵“ブタクサ”と間違えないで!「黄色い悪者」が秘めた意外なパワー。実は身体や美容の味方?
 神奈川の片田舎にございます、猫店長「さぶ」率いる我がお花屋。この季節になると店のぐるりはアノ「黄色いテロリスト」に包囲...
七五三の“裏側”は苦労だらけ!親たちの泣き笑いエピソード。せっかくの着付けが一瞬で台無しに…
 子どもの健やかな成長を祝う「七五三」。日本ではとてもメジャーな行事ですが、実は準備から当日まで、各家庭には様々な苦労が...
私は“お義母さん”と結婚したんじゃない! 姑はまるで上司…「実家マウント」に妻がとった対抗策
 幸せなはずの新婚生活に影を落とす、姑との問題。令和の時代でも根強く残る嫁姑トラブルに直面したケースをご紹介します。
「おめでた?」それセクハラ! 上司からの面倒くさいLINEを晒します。ダジャレ連発はキツイって…
 どんな職場にも気の合わない人はいますよね。たいていはスルーしたり、距離をおいたりすればいいと思うのですが、相手が上司だ...
セルフレジ、正直めんどうじゃない? “地味にストレス”な瞬間8つ。機械の注意がうるさ~い!
 コンビニやスーパーを中心に、急速な勢いで普及しているセルフレジ。様々なメリットがある一方で、セルフレジについてもやもや...
猫の“鼻チュー”させてよ~! ずっこけ“にゃんたま”の恋は実るかな?
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
こっそり教えます! 実は私が“詐称”してること7つ「経験人数2人は大ウソ」「インスタ料理は母親作」
 あなたは、なんの偽りもなく生きていますか? 自分をよく見せたくて、あるいは相手に話を合わせたくて嘘をついてしまうことは...
【漢字探し】「孆(エイ)」の中にまぎれた一文字は?(難易度★★★☆☆)
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「校閲婦人と学ぶ!意外と知らない女ことば」では、女性...
「飲み物買ってきて」私は“付き人”ですか?? ママ友からのびっくりLINE3選。図々しさに絶句…
 ママ友がいないことをネガティブに捉える人もいますが、いたらいたで違う悩みや厄介事が増えるかもしれません。今回は、図々し...
「代官山のトレースだね」地元同級生からの“皮肉”が刺さる…“私は違う”と信じた女が虚飾に気付く瞬間
 都内から鈍行電車で2時間ほどの港町の故郷に朱里はUターンし、古民家を改装したギャラリーカフェをオープンする。しかし、知...
「Google☆1つ」の屈辱。感度の高いカフェは“地元民”に理解されないの? Uターン女が頼った最終手段
 都内から鈍行電車で2時間ほどの港町の故郷に朱里はUターンし、古民家を改装したギャラリーカフェをオープンする。元イラスト...
「クソださ…」田舎を自分の力で変えてやる――理想の“カフェ”を開いた女の野望と誤算。おじさんのたまり場にしないで!
 根上朱里が生まれ育ったのは、東京から鈍行列車で2時間ほど揺られた終点にある港町だ。  近年は都内から気軽に行ける...
ドキッ。無意識にやってるかも…“警戒される人”8つの特徴。その笑顔、怖がられてるよ!
 人に距離を置かれる、人と深い関係になれないなど、人間関係で悩みを抱えているそこのあなた。もしかしたらあなた自身の言動が...
ヤバッ!「また友達いなくなるよ」一言で音信不通。LINEで“送らなきゃよかった”禁断ワード3選
 大切な人とケンカになったときは、ちょっと距離を置いて冷静になるべきかも。感情的になったまま会話を続けると、相手を傷つけ...