平手と長濱が抱擁するVTRシーンも流れた
平手は他の一期・二期24名と同様、宙を浮く長濱を盛り立てる一員だった。なんとも可愛らしすぎる振付けを微笑みながらする平手をからかうように後ろにいた齋藤冬優花(22)が笑っているのに対し、平手は「笑うなもう!」といった感じに齋藤の顔を手で押しながら、彼女自身も笑っていた。
そして、時折、宙をふわふわ歩いている(ふりをしている)長濱の方へ顔を向け、笑顔で見つめていた。バックダンサーズとして長濱より一足先にはける際には、他のメンバー複数名からもからかわれるようにわちゃわちゃされていた。
そんな平手含め、メンバー全員が、長濱のために一体となって可愛らしく微笑ましい空間を創り出した。この瞬間こそ長濱の卒業ライブ的要素を含んだアニラ大阪のひとつのハイライトであった。
3年間を振り返るVTRでも、16年のデビューカウントダウンライブで平手と長濱が抱擁するシーンも流れ会場が沸き、本編シメに会場をヒートアップさせる曲でおなじみの7thシングル「アンビバレント」では、2人の関係を象徴とするような平手が長濱を支えに空中で側転する大技も綺麗に決まった。会場からは「おぉー!」という歓声が上がった。
同じく5thシングル「風に吹かれても」では、サビで2人が向かい合いハイタッチする振付けがある。以前より長濱はこの振りで平手と見つめ合えるのが嬉しいといい、平手がどんなにコンディション不良でうつむきがちでも常に笑顔で両手を合わせに行っていた。
しかし、自身の卒業が決まり、当時最後になるかもしれなかったこのライブでは、長濱は平手を見て泣いてしまわないようにか、初めて平手を見ないようにハイタッチをしていた。
白石麻衣への敬意を込めた「シンクロニシティ」
アンコールでは一番のサプライズとして、乃木坂46の20thシングル「シンクロニシティ」を披露。平手は秋元氏からデモ曲を聴かせてもらっていた段階からこの曲を気に入っていた。結果的には乃木坂46の楽曲になったが、このアニラ大阪の機会に「すごく好きな曲だから、届けたい」とカバーした(「ROCKIN'ON JAPAN」19年6月号より抜粋)。
この曲は、世界中のひとりで泣いているかもしれない人と、共鳴し、分かりあいたいと愛で包み込むようなメッセージで溢れている。
平手は楽曲とセンターを務める乃木坂46・白石麻衣(27)への最大限の敬意を払いながら、髪を両耳にかけ、より女性的に見せ、魂を込めて歌っていた。このときは平手が慈愛に満ちた女神に見えるほどだった。
平手がアニラ大阪にこの曲を持ってきたのは、単純に楽曲へのリスペクトからだったかもしれない。だが、
「一人では負けそうな 突然やってくる悲しみさえ 一緒に泣く 誰かがいて 乗り越えられるんだ」
という歌詞が、当時最も当てはまったのは、数週前に卒業発表をし、最後の全国握手会でたくさんの涙を流した長濱ではないだろうか。
千秋楽、アンコール前のMCで話を振られた長濱はついに涙を堪えきれなくなり、泣きながら挨拶をした。アンコール曲は泣いたままでのパフォーマンス。
長濱の涙を最も見てきたのは、初期から支え合い、たびたび相談に乗ってきた平手ではなかっただろうか。
一方の平手も、この前年より患った腰部のケガの影響が出たのか、ライブ後のメンバーとの集合写真ではひとり車椅子に乗っていた。それほどの痛みを抱えながら高校生活最後の年に入っていた。“欅坂46平手友梨奈”の終わりが少しずつ近づいていたころだった。
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