更新日:2020-08-11 14:51
投稿日:2020-07-28 06:00
郊外に念願の一軒家を手に入れた1組の「パワー夫婦」。会社への通勤には少々不便な地だが、最近ではテレワークがメインになり「少し無理をしてでも、家を買っておいて本当に良かった」と感じているそうだ。
マンションよりも広々とした玄関、近隣住民との適度な距離感。そしてなにより「ここは私たちのお城」という独特の満足感。
そんな夢にまで見たはずの“城”では、ときに、人生につきものの奇妙な事件も起こりうるーー。これは実在する物件を舞台にした、とある男女のストーリー。
マンションよりも広々とした玄関、近隣住民との適度な距離感。そしてなにより「ここは私たちのお城」という独特の満足感。
そんな夢にまで見たはずの“城”では、ときに、人生につきものの奇妙な事件も起こりうるーー。これは実在する物件を舞台にした、とある男女のストーリー。
夫は自分を裏切っているのかもしれない…
まずは、落ち着いて考えないとーーー。
夕方から、急に風が強まってきた天気も気になりながら、咲子の頭からは、差出人が怪しげな夫宛の白い封筒のことが離れない。
換気のために窓を開けたため、強風によってカーテンが絶え間なくゆらゆらと揺れ、リビングの中まで風が吹き荒れている。
(浮気が発覚するときって、いきなりだって聞くし……。そういえば、高校の同級生だった藍ちゃんも、ご主人の浮気がわかったのは不倫相手からの手紙だったって言っていたわ……)
部屋の換気を終えたら、夕食の準備に取り掛かるべき時間になっているが、咲子はどうしても動く気になれない。
リビングの窓からぼーっと眺めている庭園の先には、栗林が見えている。そのどっしりとした風格のある風景は、動揺からどうにかなってしまいそうな咲子の心を必死で落ち着かせてくれているかのようだ。
(あぁ、この土地を見にきたときは、夫がこの栗林を無性に気に入って…。それで、ここに家を建てたんだっけ……。あの頃はよかったなぁ。浮気の心配なんてまったくしていなかったし、怪しい行動も何ひとつなかったしーー)
頭を切り替えようと思うほど、うまくいかない咲子。ついさっき、床にバサッと落ちた封筒と、窓から広がる栗林を交互に見つめながら、夫が自分を裏切っているのかもしれない不安に押し潰されそうになっていた。
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Koji Takano
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