コロナ禍、人生を憂い悲観する人々への伝言
異なる現場で異なる共演者、監督から演じることを学んだ平手が、森山の歌に合わせ少女と紡いだ物語では、平手友梨奈が平手友梨奈であることを忘れさせ一人の大人の女性として力強く生きること、その希望を説得力ある表情で表していた。
女性アイドル界の異端児としてギラギラと焼け付くような、見る者の心を焦がすいまにも消えてしまいそうな儚さや脆さ、不安定さを帯びた少女から、大人の女性へと昇華した彼女は、絶望の中にも光を探し求め、それをきちんと手にする芯の強さを感じさせた。
今年7月に公開されたMrs. GREEN APPLEの「WanteD! WanteD!」(Side Story ver.)MVに出演した際、平手はインタビューで「今は世界中が大変な状況になっていて。~中略~今しかない大切な時間を奪われてしまった人が沢山いると思うんです。そんな人達が少しでも上を向けるような、背中を押せるような、これからの生活を楽しむ気持ちになれるような作品になったらいいなって」と話していた(「ViVi」2020年9月号)。「ROCKIN'ON JAPAN」(2020年10月号)での最新のインタビューでも同様の主旨のことを語っている。
森山はこの楽曲のコラボレーションについて、平手が「やりたいというふうに強く言っていただいた」と「ノンストップ」(フジテレビ系)で明かした。今回も平手はまさしく、コロナ禍や言葉の暴力で人生を憂い悲観する人々に向け、勇気づける“作品”を提示した。
NHK朝ドラで母親役を演じた清原果耶を彷彿
また、幼い少女相手に平手が見せた母親のような表情を見て、彼女と同じ高校卒業組の女優陣の中で一歩抜けた存在としてあげられる清原果耶(18)が思い出された。
清原は19年NHK朝の連続テレビ小説(以下、朝ドラ)「なつぞら」で実年齢17歳にして、30代で幼児を連れる母親役を見事に演じていたことが大きく評価されていた。だが、平手にもそれが可能だと強く確信させられた。
若手女優にとって国民的女優への登竜門となっている朝ドラは、主人公の人生を幼少期から老年期まで描くものが多い。ヒロイン役の女優が中学生から老婆になるまで1人で演じることもある。
下手な女優だと30代の母親という設定でも、大学生みたいな子にずいぶんデカい子供がいるなぁ、と思ってしまうが、平手ならそう感じさせないだろう(平手が長期の拘束を伴う朝ドラ出演を望むかは別として)。
憑依型女優・平手友梨奈に無限の可能性
真逆を行くようだが、欅坂46時代からのファンやメンバー、スタッフからは素顔の彼女への愛称として「赤ちゃん」「ばぶ」といったものがあり、彼女のファンは「保護者」とも呼ばれている。あるいは「ROCKIN'ON JAPAN」(同)でのビジュアルショットは、その力強い眼差しで多くの女性ファンを虜にするイケメンぶりもまだまだ健在だ。そこに母性を伴う母親のような女性役にすら憑依できるのだとしたら……。女優として、表現者として、平手友梨奈にはまだまだ限界が見えない。
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