彼は営業マン?産業スパイの監視役?…加奈子さんのケース#2

神田つばき 作家・コラムニスト
更新日:2020-10-21 06:00
投稿日:2020-10-21 06:00

問いつめれば問いつめるほど誇大妄想化していく言い訳

「加奈子、あの男は結婚なんかしていない。住所は独身の公務員専用の寮だった。内縁の妻が同居することなんかできないんだ」

 とっさに意味がわかりませんでした。妻と呼ぶ女性がいたのも、その女性が精神を病んだとか子供を施設にあずけているというのも、そもそも外車のディーラーだというのも、何もかもウソだったと兄は言うのです。

 加奈子さんは驚き、「どういうこと?」と則夫を問いただしました。

 ところが則夫は平気な顔で、

「卒業後しばらく公務員だったので、公務員住宅にいたのは本当」

「大学時代に上級国家公務員資格を取り、外務省の外郭団体に勤務していた」

「仕事で関わった外車の販売会社からヘッドハントされてディーラーになった」

 などとスラスラ答え、嘘はついていないと言うのです。

嘘のほころびから、さらに嘘を重ねて

 加奈子さんが「でも、外務省にいたなんて初めて聞いたよ?」と言うと、

「俺の仕事は産業スパイを監視することだったから、辞めてからも誰にも言えなかったんだ。ほら、ニュースになったあのCEOが逮捕されたのも俺のレポートが決め手になったんだ。あの時はマスコミ攻勢がすごくて大変だった……」

 と、国際指名手配になっている有名な自動車会社の元社長の名を出すのです。

 兄が調査会社から受けた報告では、則夫は地方公務員でした。さすがに加奈子さんもこれはウソだと思いましたが、ペラペラと語り続ける則夫の勢いに圧倒されてことばが出ませんでした。

 外務省時代にどんな政治家と会ったか、あの事件にもこの事件にも関わっていた――と、話はどんどん大きくなっていき、熱に浮かされたようにしゃべる則夫が恐ろしくなってしまったのです。

派手でドラマチックな話を好む虚言癖男

 そう言えば則夫はたびたび、今日は芸能人の誰それの納品だった、政治家の息子が交通事故を起こしたので秘密で代車を手配した、と派手な話をしました。でも、前に聞いたときと少し違っているなということはよくあったのです。忙しい人だから間違えてしまうのかな、と思っていましたが、すべて作り話だったのかも知れません。

 内縁の妻がいること、統合失調症で入院していること、養護施設にあずけられた連れ子のこと……すべて作り話だったとしたら、信じていた自分の心はどうなるのか……。ゾッとした加奈子さんは則夫から距離を置こうと決めました。

 次回に続きます。

神田つばき
記事一覧
作家・コラムニスト
離婚と子宮ガンをきっかけに“目がさめて”、女性に生まれたことの愉しみを探そうと緊縛写真のモデルとライターに。私小説「ゲスママ」、女性の悩みや疑問を解き明かすコラム「性に纏わるあれこれ」
イベント「東京女子エロ画祭」「親であること、毒になること」などの企画も。X

関連キーワード

ラブ 新着一覧


男女の欲が渦巻く「Twitterの裏垢」の世界を“やや斜め”に考察してみた
 私は自分のTwitterアカウント以外に、複数のアカウントを運用しています。  仕事だったり、プライベートだった...
豆木メイ 2023-04-18 06:00 ラブ
「結婚13年で10年不倫」の事実…墓場まで持っていく夫には言えないこと
 夫婦だからといって、なんでも報告し合うわけではありませんよね。中には「夫にだけは言えない」と、秘密を隠し持っている奥様...
恋バナ調査隊 2023-04-18 06:00 ラブ
絶対に許せない! 妊娠中に夫が放った無神経すぎる言葉5選
 女性の人生の中でも“大仕事”なのが、妊娠して子供を産むことです。でも、つわりを乗り越え、10カ月もの間、さまざまな制限...
恋バナ調査隊 2023-04-18 06:00 ラブ
原因は自分にあるかも 男運がない女から抜け出す3つの改善法
 女性の中には、誰かと付き合うたびに毎回ダメ男に引っかかってしまう「男運のない女性」っていますよね。実は、彼女たちには4...
恋バナ調査隊 2023-04-17 06:00 ラブ
深入りする前に知っておこう! ロマンチストな男性の特徴4つ
 あなたは、ロマンチストな男性についてどう思いますか? ロマンチックな言動をする男性が好きなタイプの人もいれば、苦手な人...
恋バナ調査隊 2023-04-17 06:00 ラブ
「ごめん、今起きた」長期の二股はボロが出る!彼氏のクロ確定LINE3選
 いまの彼は、あなた一筋ですか? もしかしたら愛されていると思い込んでいるだけで、彼にはもう1人の彼女がいるかもしれませ...
恋バナ調査隊 2023-04-16 06:00 ラブ
不快?やや苦痛? 切実な問題!彼と体の相性が合わない時の対処法5つ
 男女が付き合う上で、体の相性はとても重要ですよね。体の相性が合わないと「一緒にいて楽しいし、大好きなのに、結婚に踏み切...
恋バナ調査隊 2023-04-16 06:00 ラブ
「追われる女」4つの特徴は案外簡単にクリアできそうですよ
 男性には狩猟本能があるため「あの子はどうしても手に入れたい!」と思うイイ女に出会うと、自分から積極的に追いかけると言わ...
恋バナ調査隊 2023-04-15 06:00 ラブ
世帯収入減なのに“エロ散財”し続ける夫にマジギレ5秒前の女
 男女の関係では、交際相手や配偶者の態度に悩む人も少なくありません。愛し合っている男女間でも、価値観や物事の判断には個人...
並木まき 2023-04-15 06:00 ラブ
「『家庭でエロ』なら夫婦円満でしょ?」おもちゃに散財する夫の屁理屈
「冷酷と激情のあいだvol.138〜女性編〜」では、世帯収入が下がっているにもかかわらず、趣味である“エロ”への散財をや...
並木まき 2023-04-15 06:00 ラブ
「ゴムに穴を開けておいた」重すぎる“闇深”恋愛相談LINE3選
 よく人から恋愛相談をされる人は「信頼してくれている」と感じ、親身になって相談に乗っている人が多いでしょう。でも中には、...
恋バナ調査隊 2023-04-15 06:00 ラブ
アルバイトがきっかけで恋愛関係に♡ 年下男子や留学生とも
 アルバイトが恋愛のきっかけにならないと思っている人は、もったいない! 少し見方を変えると、出会いのきっかけはどこにでも...
恋バナ調査隊 2023-04-14 06:00 ラブ
四六時中ハッハッと呼吸する「筋トレにハマった夫」がうざい
 筋トレに励む男性って、身近に多くなっていますよね。コロナが流行して自宅で過ごす時間が長かった影響か、筋トレにハマる男性...
恋バナ調査隊 2023-04-13 06:00 ラブ
男女逆転?「女装男子」増殖のワケ&彼らの恋愛対象者に納得
 綺麗な女装男子が増えています。スリムな美男子がウィッグを付け、可愛いワンピースで装うと、女性に見えてしまうこともしばし...
内藤みか 2023-04-13 06:00 ラブ
奥手男子にアプローチして付き合いたい!避けたいNG行動は?
 気になる男性が奥手だった場合、どう皆さんはアプローチしていますか? グイグイ来てくれる人だったら、飲みに行ったり出かけ...
若林杏樹 2023-05-01 21:01 ラブ
愛称の“たん”がマシマシに…いつまでもラブラブな両親に共通する秘訣4つ
 年を重ねても仲の良い両親は、見ていて幸せな気持ちになりますよね! 自分もこうなりたいと憧れている人も多いでしょう。いつ...