これは…おちょこがとまらない!
秋の夜長、ぬる燗をチビチビやるなぞオツですが。アテは、何がいいものでしょうか。
「これなんてどうです? 酒の1升も飲めますよ」
差し出された小鉢の中には、黄金色の粒々が。これは?
「南蛮エビのなめろうです。生のエビの身と頭の味噌を、酒、醤油、卵黄と合わせてまぜ、細かく叩きました」
なるほど。アジのなめろうは有名ですが、エビのそれはお初です。一口つまんで舌の上で転がすと……ものすごいコク! コクの塊です。ああ、確かにこれなら1升いけそう。
「隠し味にご飯を使っているんです。エビのコクはエグ味と表裏一体。米の甘さでバランスをとっているんです」
なんと、ご飯を調味料に使うとは。北国の伝統食、飯鮨のエビ版を作れないかと考えたそう。南蛮エビ、いわゆる甘エビは新潟の特産。さすが地元食材を生かす名手です。味の決め手は、エビの頭の味噌。新鮮なものが手に入らなければプロセスチーズを溶かして、酒でのばしたものでもOK。ウニでも一味変わるそうです。
しかし、とんでもない酒泥棒。作るなら酒はたっぷり用意すべし。
【材料】
・甘エビ 10本
・ご飯(ピンポン球くらいの量)
〈A〉
・卵黄 L玉半分
・酒 大さじ1
・濃い口醤油 大さじ2
・塩 適量
【レシピ】
(1)甘エビの頭を外して味噌を取り出し、包丁で叩く(脳天の赤黒い袋は臭みの原因になるので捨てる)。身は皮をむき、軽く塩をふり全体をペーパーで包み水分を抜く。
(2)鍋に<A>を入れ木ベラでよくまぜてから、火にかける。木ベラですくって落ちないくらいの硬さになるまで練る。
(3)冷ました②とエビの身、ご飯をまな板の上に乗せてひたすら叩く。塩で味付けして完成。
本日のダンツマ達人…小林宏輔さん
▽小林宏輔(こばやし・こうすけ)
1979年、新潟県新発田市生まれ。東京の魚問屋が営む鮨店「魚真」で板前修業を積み、2010年に帰郷。17年のリニューアルを機に「登喜和鮨」3代目を襲名。
▽登喜和鮨
新潟県北部に位置する新発田市に昭和29年創業。飯豊連峰の山の幸と日本海の海の幸、それぞれの素材を引き出すことにこだわる。近ごろは県外からも多数来客。地酒も数多く揃える。新潟県新発田市中央町3―7―8。
(日刊ゲンダイ2019年11月28日付記事を再編集)
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