授賞式会場では…
放送では流れなかったが、草彅が照れてか泣き笑いの表情で少しうつむいていると、二宮がそれに気づき笑いながら草彅の背中に手を添え、祝福していたと複数の観覧者からネット上に報告があがった。二宮含め、会場にいる誰もが納得の最優秀主演男優賞だったのだろう。
今回「ミッドナイトスワン」で夜の世界を生きるトランスジェンダーという難役を圧巻の演技で務め、最優秀作品賞も手繰り寄せた草彅。いまでは役に完全に入り込む憑依型の天才と各方面から認められている存在だが、人気俳優として駆け出しの頃、天才との評価を“撤回”された過去がある。
天才は取り消す、その真意とは
草彅は、90年代に入り人気グループとなったSMAPの一員としてドラマ出演を重ね、他のメンバーから少し遅れて97年に「いいひと。」(フジテレビ系)で役と本人の人柄が相まってブレイクを果たした。そして99年、つかこうへい氏が作・演出を務める代表作「蒲田行進曲」の主演に抜擢される。つか氏は記者会見で一度、草彅を「天才」と称したが、後日に行われた別の記者会見では「前回天才といったけれど、あの言葉は取り消す」と言い出したのだ。
かなり衝撃的な発言で、この会見の模様を取り上げた報道番組を見ながら「剛くん、何か失礼なことをしてしまったのか、やはり実力が足りなかったのか……」と心配していた筆者。ところが、つか氏が続けて力強く放った言葉は、「草彅剛は天才じゃなくて、大天才だ!」であった。しかしこの一回下げて思いっきり上げる遠回しな褒め方は相当なインパクトがあり、当時SMAPにおいて視聴率面で大ヒット作を連発していたのは木村拓哉(48)だったが、“真の実力者”は草彅なのだな、と明確に感じさせられたものだった。
「芝居の大天才」草彅剛の堂々返り咲き
「ミッドナイトスワン」の内田英治監督もかつてはアイドルそのもの、そしてアイドルをはじめスターありきの日本の映画作りを批判していた。だが今作でトランスジェンダーの凪沙になりきった草彅について、「芝居ではなく同化」「作る演技を超えている」と絶賛している(「マイナビニュース」2020年9月27日配信)。
地上波放送のある日本アカデミー賞で最優秀作品賞と最優秀主演男優賞受賞の二冠を達成した草彅。芝居の大天才がその実力でメインストリームに堂々と返り咲いた瞬間だった。
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