卵子提供者とアラサー女子“あるある”を題材とした「Eggs」

内埜さくら 恋愛コラムニスト
更新日:2021-04-06 06:00
投稿日:2021-04-06 06:00
 女性は結婚して子どもを産むのが一番の幸せ。いま公の場で発言したら女性蔑視発言と大バッシングされそうなテーマと、日本ではまだ馴染みが薄い「エッグドナー」について掘り下げている映画「Eggs 選ばれたい私たち」(配給:ブライトホース・フィルム)が公開中です。

エッグドナー(卵子提供者)に興味を示すアラサー女子2人

 エッグドナーとは、子どもがいない夫婦に卵子を提供する、卵子提供者。不妊治療の方法の1つで、代理出産とは異なり、卵子提供を受けた女性自身が妊娠・出産することを目的としています。妊娠できない女性自身が出産するため、戸籍には「実子」として登録されるそう。

 第三者の女性として出産する代理出産ではなく、作中でエッグドナーを選択したのは、寺坂光恵さん演じる近藤純子と、川合空さん演じる矢野葵。純子は、将来結婚する気も子どもを産むつもりもない、もうすぐ30歳を迎える独身主義者。葵は25歳のレズビアン。同棲していた彼女と別れて、家を失ったばかり。従姉妹の2人は偶然、エッグドナー登録説明会で再会します。エッグドナーに登録したことを、純子の母親には内緒にする代わりに居候させてほしいという、葵の申し出を純子は断れずに、2人は純子の住むマンションで共同生活をスタートさせます。

見逃せない共感ポイントの数々

 独身主義者とレズビアン。境遇に感情移入しづらい人がいるかもしれませんが、作品では監督と脚本を務めた川崎僚さんの手腕が光っていて、同性であれば「あるかも!?」や「わかる!」と思えるシーンが盛りだくさん。

 たとえばレズビアン、葵の場合。葵は純子の家に転がり込んでからも、元カノからの電話が鳴りやみません。表情から察するに葵は、元カノへの思いを断ち切ろうとしていると同時に、復縁を迫られることを避けようとしています。

 ところがいざ、再会してみると。元カノは家に置き忘れた葵の荷物を返したかっただけ。新たなパートナーもいたのです。元パートナーから連絡が来ると、「もしかして、まだ私のことが好き?」と思ってしまう感情は、「あるかも!?」ではないでしょうか。

結婚、孫の話を親がしなくなった…

 あと3カ月で30歳になる純子は、独身主義者であることを親には秘密にしています。ある日、4人でのプチ同窓会に参加したときのこと。結婚願望はあり、婚活中の独身の江里佳に打ち明けるのです。

「親に、『結婚は?』『彼氏は?』『孫の顔はいつ見せてくれるの?』とすら言われなくなった」と。

 厚生労働省の調査によると、令和元年(2019年)の平均初婚年齢は、男性が31.2歳。女性は29.6歳。女性は30歳前に結婚しているという結果ですが、これはあくまでも平均値。もうすぐ30歳を迎える女性や、30歳を迎えるときに独身だった女性は「わかる!」と感じていただけると思います。

「遺伝子上の母になりたい」

「エッグドナー」に話を戻しますと。純子と葵は、「結婚や出産をしなくても遺伝子上の母になりたい」と願い、登録します。作中では登録できるのは20~30歳でしたが、筆者が調べてみたところ、「提供する女性の年齢は28歳まで」「両親との血液型が一致」「容姿が重要視される」「IQテストも提供を受ける側の選択する要素」など、厳しい選択基準がずらりと並んでいました。卵子提供を希望する純子と葵のみならず、卵子提供を望むカップルも、学びの第一ステップとなる作品かもしれません。

 純子と葵のどちらが「エッグドナー」に選ばれるかは、劇場で見届けてください。

出演:寺坂光恵/川合空/三坂知絵子/新津ちせ/湯舟すぴか/みやべほの/見里瑞穂/斉藤結女/荒木めぐみ/鈴木達也/生江美香穂/高木悠衣/森累珠/加藤桃子/すズきさだお/松井香保里/監督&脚本:川崎僚

内埜さくら
記事一覧
恋愛コラムニスト
これまでのインタビュー人数は3500人以上。無料の恋愛相談は年間200人以上の男女が利用、リピーターも多い(現在休止中。準備中のため近日中にブログにて開始を告知予定)。恋愛コメンテーターとして「ZIP!」(日本テレビ系)、「スッキリ」(同)、「バラいろダンディ」(MX-TV)、「5時に夢中!」(同)などのテレビやラジオ、雑誌に多数出演。

URL: https://ameblo.jp/sakura-ment

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


「あんぱん」ヤムさん(阿部サダヲ)の変わらぬ風貌が謎だ。釜じいの“一言”が今回のハイライト
 釜次(吉田鋼太郎)の葬儀が営まれる中、草吉(阿部サダヲ)が姿を現す。またあんぱんが食べたいと言うのぶ(今田美桜)たちに...
桧山珠美 2025-07-19 11:15 エンタメ
「あんぱん」紅白未出場、浅田美代子の歌唱をここで聞けるとは。吉田鋼太郎の笑顔もグッとくる
 三姉妹揃っての朝田家ご帰還。朝ということは、蘭子(河合優実)は昨夜、のぶの家にお泊りしたのでしょうか。ならば、久々の三...
桧山珠美 2025-07-17 17:39 エンタメ
選挙 行ってみなきゃ言えなくね? 人気男性グループが“ラップ”で投票を呼びかけ「最高!」「こんなアイドルいる?」と反響
 7月20日に行われる第27回参議院議員通常選挙(以下、参議院選挙)を控え、11人組ボーイズグループ・INIの池崎理人さ...
「あんぱん」薪鉄子が持つ“小道具”の細かさに気づいた? すれ違いコントは見なかったことにします
 鉄子(戸田恵子)からの電話に出た東海林(津田健次郎)は、ひとり考え込んでいた。鉄子がそんなに怒っていたのかと、慌てて謝...
桧山珠美 2025-07-16 17:31 エンタメ
もはや『M-1』は芸人だけのものじゃない? 万博、地方創生…吉本が目指す“次のフェーズ”
 6月25日、漫才日本一決定戦『M-1グランプリ2025』(テレビ朝日系)の開催会見が東京・渋谷よしもと漫才劇場で開かれ...
令和ロマン・高比良くるまが“騒動”で得た「天下を獲る」ために必要な武器
 オンラインカジノ問題をめぐって活動を休止していた令和ロマンの高比良くるまさんが4月28日、約2か月ぶりに復帰しました。...
田原俊彦よ、「※ただしイケメンに限る」はもう通用しない。世のオジサンは彼の“勘違い”から学ぶべし
 6月15日放送の『爆笑問題の日曜サンデー』(TBSラジオ)にて、ゲスト出演した田原俊彦が、女性アナウンサーにセクハラを...
堺屋大地 2025-07-14 11:50 エンタメ
【募集】夏ドラマ何見る? 期待してる&ガッカリを教えて!『ひとりでしにたい』『ちはやふる』『しあわせな結婚』etc
 コクハクでは2025年名夏ドラマを対象としたアンケートを実施します。7月よりスタートする夏ドラマ、「期待している」「面...
「あんぱん」嵩らの“腹痛”は史実とちょっと違う? 懐かしい2人の登場には狂喜乱舞! 生きていてよかった…
 東京に到着したのぶ(今田美桜)たちは、さっそく聞き込みを始めるが「ガード下の女王」はなかなか見つからない。みんなで屋台...
桧山珠美 2025-07-11 18:33 エンタメ
「あんぱん」メイコ、夢はお嫁さんでいいのか? 健太郎(高橋文哉)ともう1人の“三角関係”を妄想する
 東京出張の前日。みんなで取材する代議士の資料を確認していたのぶ(今田美桜)は、岩清水(倉悠貴)が話す「ガード下の女王」...
桧山珠美 2025-07-10 18:34 エンタメ
timelesz、新体制が“古参ファン”に受け入れられる日は来るのか? 旧ジャニ「シャッフルメドレー」不参加の賛否
 7月5日、櫻井翔(43)が総合司会を務める音楽特番「THE MUSIC DAY 2025」(日本テレビ系)が放送され、...
こじらぶ 2025-07-10 11:50 エンタメ
石田ひかり53歳、今を生きる女性に伝えたい“楽しく生きていく”ためのメッセージ|映画『ルノワール』
 1986年のデビューから、映画『ふたり』『はるか、ノスタルジイ』や、連続ドラマ『悪女』、連続テレビ小説『ひらり』、『あ...
望月ふみ 2025-07-10 11:50 エンタメ
『あんぱん』ツダケンの“にゃあ”が秀逸だにゃあ!「月刊くじら」には色々とツッコミどころもあるが
『月刊くじら』創刊号は2日で2000部を売り切り、好調な滑り出しを見せる。嵩(北村匠海)は『月刊くじら』編集部に異動に。...
桧山珠美 2025-07-09 17:00 エンタメ
【10万いいね】鈴木えみ、20年前→現在の比較写真が“美しすぎる”と絶賛「変わらなすぎ!」「今の方が可愛い説まである」
 ファッションモデルから俳優業まで、幅広い分野で活躍する鈴木えみさん(39)。2025年7月7日に自身のInstagra...
春ドラマの評判を調査!本命『最後から二番目の恋』は2位。1位は意外な快進撃。日常系が人気、刺激疲れか?
 2025年の春ドラマが、次々とフィナーレ。今期はSNSでバズった顔ぶれも多く、ドラマファンからしても楽しいシーズンだっ...
「あんぱん」嵩は受かるのか…って次週予告編でネタバレか? アンパンマン声優の姿もチラリ
 のぶ(今田美桜)の家で暮らすことになったメイコ(原菜乃華)は、夢に向かって一歩を踏み出す。そしてのぶも、月刊誌の刊行に...
桧山珠美 2025-07-05 08:00 エンタメ