肩車で張り合った夜…引け目を感じても「パパ」にはなれない

孔井嘉乃 作詞作曲家・ライター
更新日:2021-10-05 15:31
投稿日:2021-10-05 06:00

「二人きりになるんだな」と思った夜

 すると、後ろから「肩車代わりましょうか?」と、男性の声。振り向くと、30代後半くらいのカップルがいました。横にいた彼女が「この人、体力あるし、甥っ子ちゃんをよく持ち上げてるから、大丈夫ですよ!」と。

 正直、限界だった首と腰。たぶん、心も。いつもなら「重いから大丈夫です!」なんて遠慮してしまうところですが、素直にお願いしました。

「見えるかな?」と聞く背の高いがっちりした男性に、「たかーい!」と、はしゃぐ息子。終わるまでの数分間、ずっと片方の肩に乗せてもらいました。

 その間、「シングルマザーだと思ったのかな(もうすぐそうなるけど……)」「息子は嬉しいだろうな」「せっかくのデートだろうに申し訳ないな」「きっとこの男性は子煩悩なパパになるんだろうな」なんて、いろいろと考えてしまい、キャンドルナイトなんてうわの空でした。

 お礼を伝えて別れた後、小さな手をつないで車に向かいながら、心がぼんやりとしました。夏の終わりの軽井沢の空気は少し冷たくしんとしていて、ついセンチメンタルにもなるものです。

 そんな気持ちを息子に悟られないように、いっぱい話しかけたり、歌を歌ったりしながら。でも、なんというのか、ただ「二人きりになるんだな」って思った夜でした。

“引け目”を感じてもパパの代わりにはなれない

 シングルマザーになると、「パパにもママにもならなきゃいけない」って、気張ってしまいがちです。それは、パパへの“引け目”であったり、我が子への申し訳なさであったり、仕事と育児を頑張る自分への誇りのようなものでもあるかもしれません。

 でも、どうしたって背はぐんと伸びませんし、ボールも上手に投げられません。もちろん、低い声だって出ません。

 パパはパパ。どうやっても、代わりにはなれないのです。

「かわいいママ」でいるだけでいいのかもしれない

 失敗ばかりで、息子に忘れ物もしょっちゅうさせるし、忙しい時にはイライラもするし、趣味のポケモンGOをダラダラやりながら寝落ちしたりもする私ですが、息子はしょっちゅう「かわいいママ」って言います。

「へーーー」と、そのたび驚いてしまいますが、息子にとってはそれだけでいいのかもしれない、とまで思える最近。

 紆余曲折ありましたが、いつの間にか私は、自分が作り上げた「パパ」と戦うことをやめていました。

 今、あの軽井沢と同じような場面があったら、「ママも背が低くて見えないなー」と言うでしょう。むしろ、今なら息子は肩車を辞退してくれるだろうとも思います。

 子供はよくわかっています。そして、「ママ」に「パパ」になってほしいだなんて、思っていません。つまりは「ママ」というだけで、きっと足りているんです。

 とはいえ、悩んだことは無駄にはなりませんでした。

 パパへの“引け目”の落としどころを早めに見つけられたら、ママにしかできないことをたくさん感じてがんばれますから。

 なんといっても「ママ」は世界でひとりだけですし! だから、自信を持って進みます。

(文;孔井嘉乃/作詞作曲家 イラスト:こばやしまー/漫画家)

孔井嘉乃
記事一覧
作詞作曲家・ライター
3歳からピアノを始め、現在は作詞作曲家&シンガーソングライターとして活動中。2014年からウェブライターとしての活動を開始。得意ジャンルは美容、恋愛、ライフスタイル。コスメコンシェルジュ、日本化粧品検定1級、ベビーマッサージ資格、乳児心理+児童心理資格取得。
2016年、ママユニット「mamakanon」を結成。活動5年目にして、YouTube再生回数1,200万回達成。2020年、フレンチシンガーバイオリニストソングライターとのDuo「ellipsis」を結成。両者の絶対音感を活かしてカバー演奏などを行う。
1児のママ。特技は早起き。ウィスキーが好き。

◇孔井嘉乃公式サイトmamakanon公式 YouTubeチャンネルellipsis公式 YouTubeチャンネル

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


「フェロモン診断」調香師が選ぶ GW旅行の疲れを癒すおすすめの香り
 もうすぐゴールデンウィーク、今年は旅行や帰省の予定を立てている人も多いのでは?  飛行機や電車での移動、長時間の...
新学期早々ピンチ! 子供の「学校に行きたくない」の最適解は?
 子供が「学校行きたくない」と言い出したら、親としてはとても不安になりますよね。理由は、いじめや人間関係、勉強の遅れや体...
黄・紫・桜♪
 春の三原色を見つました。
陽だまりでゴロゴロ♡ お日様パワーを吸収する“たまたま”君
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
ほっこり癒し漫画/第71回「はふはふぴたっ」
【連載第71回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場! 「しっぽのお...
美人局の語源に「筒」と「陰茎」
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
結婚式前夜、娘の門出を祝う「親として最後の教え」の内容に涙腺崩壊!
 入学や卒業、就職による1人暮らしなど、門出は1つの節目。嬉しい反面、どこか寂しさや不安を感じる瞬間でもありますよね。 ...
占い好きな成功者と占い好きな非成功者の違い…占いライターで一攫千金も
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(63)。多忙な現役時代を経て、56歳...
豊洲の人生勝ち組妻でも幸せじゃない?彼女が裕福と引き換えに諦めた事
 独身時代は都心に暮らしていたが、結婚を機に武蔵境に暮らし始めた千佳。しかし、郊外のこの地を愛せない。そんな時、中学の同...
「夫の駐在時にね…」なぜあのコが?田舎の同級生“玉の輿婚”に心ざわつく
 独身時代は都心に暮らし、華やかな生活をしていた千佳。しかし、結婚を機に都内から離れ、武蔵境に住み始めた。しかし、妥協し...
メガバン妻が悟ったリーマンの限界値 吉祥寺より2駅下った中古マンション
 武蔵野の自然を携えそびえる瀟洒な白亜の建物は、まるでこの場所がヨーロッパの一都市であるかのような錯覚を与えてくれる。 ...
帰ったらお風呂に…夫「沸いてるよ!子供が入ってる」危機管理能力ゼロや
 子育て中のママにとって、子供の命と健康を守るのは一番大切な使命。だからこそ、危機管理能力は嫌でも高くなります。 ...
号泣しながら「愛の讃歌」を熱唱 なぜ人はスナックでダサい姿を晒すのか
 私はこれまで多くの夜の世界を見てきましたが、スナックは本当に不思議な場所です。  完全無欠のモテ人間ほど、なぜか...
大人は「さようなら」とハッキリ言わないけど…
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
春の行楽、御朱印集めはスタンプラリーと何が違う? 作法やタブーとは
 山形県東部にある山寺(山形市)で自らの行いについて考える出来事がありました。我よ、御朱印集めがスタンプラリーと化してい...
この勇姿もあとわずか…去勢手術予定“たまたま”を記念撮影!
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...