更新日:2023-09-30 06:00
投稿日:2023-09-30 06:00

遠征先で「ご宿泊」することに…

 ところで先日、ストリップの遠征先で、ひょんなことからラブホテルに宿泊することになった。私が体当たり系のエッセイストなら誰に配慮することもないだろうが、腐ってもストリッパーは人気商売ゆえ、詳細は省かせていただく。

 そうすることによって、周囲に「浮いた話がなくもないのか?」と思わせる効果もある。全くないより、ありそうなくらいがそそられる、それが人間の心理というものじゃないか。

 そのホテルはスイーツではなく、イルカがテーマであった。入り口の上には実物大ほどのイルカが何頭か宙を泳いでいる。しかし館内にイルカらしさはなく、お任せで入った部屋には、浴室とは別に、白い浴槽がベランダに置かれていた。露天風呂と呼べなくもない。

疑似ナイトプール体験

 ボタンを押すと泡が出て、ランダムに切り替わるライトが湯船の中を照らす。これは昨今流行の、いわゆるナイトプールみたいではないか。

 ビキニ姿でフロートに乗って、決して頭から潜ってクロールしたりはせず、ドリンク片手に映える写真を撮ってキャッキャするやつだ。密かに憧れていたが、なんとここでコンパクトに体験できるとは。

 夜空は切り取られたように狭くても、こちとら貸し切りだ。コンビニで買ってきた檸檬堂もある。起き抜けのモーニングプールも可能だ。

エンタメよりジツがいい

 それから私は、いくつかのラブホテルに行ったが、カラオケができたり、マッサージチェアが使えたり、フェイスパックが用意されていたり、ビールやハイボールが飲み放題だったり、まぁ楽しいことこの上ない。そのうち、テーマに特化したエンタメラブホテルより、実質的なサービスを重視するようになった。

 だいたい、貝殻型のベッドで抱き合って絵になるカップルなんているか? ただでさえラブホテルですることは、冷静に見れば滑稽なのである。ベッドが回転するとか、回転木馬に乗るとか、これ以上おもしろくしてどうする。

スイーツホテルではもう満たされない?

 というわけで、私をスイーツホテルに連れて行こうと密かに画策していた人には申し訳ないが、今後は、ほんの少しだけ非日常感を味わえて、実質的なサービスが充実したラブホテルを探しておいていただきたい。

 いいラブホテルの条件は、冷蔵庫に持ち込んだ酒やつまみを冷やすスペースがあること、電子レンジが室内にあること、プレイステーション2があって「太鼓の達人」ができること、できれば近くにセブンイレブンがあること、間違ってもコスプレ衣装はレンタルしないで欲しい。

 体操服もスク水も、メイド服もバニーガールも、仕事柄、毎日嫌になるほど着ているのでね。

新井見枝香
記事一覧
元書店員・エッセイスト・踊り子
1980年、東京都生まれ。書店員として文芸書の魅力を伝えるイベントを積極的に行い、芥川賞・直木賞と同日に発表される、一人選考の「新井賞」は読書家たちの注目の的に。著書に「本屋の新井」、「この世界は思ってたほどうまくいかないみたいだ」、「胃が合うふたり」(千早茜と共著)ほか。23年1月発売の新著「きれいな言葉より素直な叫び」は性の屈託が詰まった一冊。

XInstagram

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


ミエミエの嘘でも許す! 思わず爆笑した遅刻の言い訳LINE3選
 約束してた時間に相手が来ないと、イライラしたり心配したりするものですよね。そんなときに相手から送られてきたLINEに、...
突然の強風に踊り始めるスカジャン 2023.3.17(金)
 突然の強風に踊り始めるスカジャンに、古の「どぶ板通り」を思い出す。  日本土産なのに妙にエキゾチックな柄にそそら...
なんかイラッとする!うっすら「上から来る人」の特徴と対応
 偉そうな態度や上から目線のしゃべり方って、特別な場合以外は100%を損しますよね。なので、私も気をつけています。  ...
もういいや!距離感を間違えたママ友と“うわべ”だけ上手に付き合う法
 子供ができると、ママ友との付き合いが増えますよね。子育てで行き詰ってしまったときに視野を広げてくれたりメンタルをサポー...
「俺んとこ、来ないか」“たまたま”君のお誘いについて行くと
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
転職活動を見抜く上司の一言…ラスボス感が半端ないLINE3選
 ゲームで一番最後に出てくる大物「ラスボス」。でも、ラスボスは二次元の世界だけでなく現実世界にも存在しているようです。 ...
どんな人も最初からスターなわけじゃない 2023.3.15(水)
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
春の強運アイテム「フリージア」“極太長”を見かけたら即買い
 3月もあっという間に中盤。猫店長「さぶ」率いる我が花屋のある、ここ関東も暖かい日が連日続き、さぶ店長の日課である“近隣...
濡れた手のまま使えるハンドクリームが便利 2023.3.14(火)
 乾燥で肌がかさつきやすい季節、ハンドクリームで手の保湿ケアをしている人も多いでしょう。特に日常的に家事をしている人は水...
「国際女性デー」日経広告の炎上と今こそ女性に伝えたいこと
 3月8日は国際女性デー。女性の地位向上や差別の撤廃を目指し、ジェンダーの平等を求めて行動する日です。近年は女性活躍推進...
話題の「ファミチキ炊き込みご飯」競合チキンと比較、最もおいしいのは?
 おうち時間が増え、自炊に挑戦する人が増えてきた昨今。とはいえ、毎日献立を考えるのって結構大変ですよね。「サクッと簡単に...
2023-03-14 06:00 ライフスタイル
氷ついた大地が緩み始めた 春はすぐそこ 2023.3.13(月)
 冬の間は枯れ木のように見えた木が、小さなピンクのつぼみを付けた。  日の光で温められた地面からは、何かの気配を感...
これぞ漢!ワイルド“たまたま”の野性味あふれる表情をパチリ
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
「ネイル予約したから子ども預かって?」ずうずうしいお願いLINE3選
 人と親しくなるにつれて、自分の素が出たり相手に気を使わなくなったりしますよね。でも「親しき仲にも礼儀あり」は、意識的に...
学生の頃に戻りたい日もあるけれど… 2023.3.12(日)
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
平和主義者のようでいて虫をなぶり殺しに…!~猫マメ知識#2
 可愛くて、賢くて、気高くて、どこを見ても魅力的でしかない。そんな完璧などうぶつ・猫にも、残念な点がある。猫のここが残念...