更新日:2023-10-20 16:17
投稿日:2023-10-13 06:00
どこにいると言われて、苦しい言い訳を
――続けてください。
「私はバスルームから離れた窓辺に歩を進めると、通話ボタンを押しました。
――もしもし、英明さん。
――弓香、今どこにいるの?
開口一番、英明さんは私の居場所を聞いてきました。
――六本木よ。
――あれ? 今日は友達と銀座にいるはずじゃ……。
――え……ええ、友達が六本木に移動したいと言ったから、場所を変えたの。
私は苦し紛れに言いました。もし、彼が『六本木のどこ?』と聞かないことを願って……。
――楽しんで。夜また電話するよ。
その言葉で、通話が切れました。ひとまず良かった……と安堵していると、敬一が洗面所から出てきたんです。
婚約者に詫びながら、裏切りのキス
――電話、大丈夫だった?
――え、ええ……。
スマホをサイドテーブルに置いた時、敬一は後ろから私を抱きしめてきたんです。
――弓香……誰にも渡したくないよ。
彼は熱っぽく告げ、私の耳に熱い息を吹きかけてきたんです。
――敬一……困るわ、私、婚約してるのに……。
その言葉とは裏腹に、私は彼のほうに向きなおりました。
敬一の顔が迫ってきます。目をつぶると、柔らかな唇が押しつけられました。
(ああ……敬一とキスしてる……。英明さんがいるのに)
心の中で英明さんに詫びながらも、心も体も敬一を求めていました。英明さんに開発された体が、男を求めている……。
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